『子育てとばして介護かよ』インタビュー第2回

「家族だけで何とかしようとしない」義両親の介護をする際に決めていたこと

「家族だけで何とかしようとしない」義両親の介護をする際に決めていたこと

妊娠・出産・子育てをすっ飛ばして、なりゆきで義両親の介護をサポートすることになった体験をつづった島影真奈美さんによるエッセイ『子育てとばして介護かよ』(KADOKAWA)が9月13日に発売されました。

「介護」という言葉を聞いても「そういえば親が祖父母の介護をしている」「親は元気だ取りあえず今は大丈夫」と思っている20代や30代の読者も多いのではないでしょうか?

ある日、義母からかかってきた電話をきっかけに、認知症になった義両親の「介護のキーパーソン*」を引き受けることになった島影さん。2回目は、介護をする際に決めていたことについて伺いました。

*介護のキーパーソン:介護をしていく上で中心となる人で、医師や介護支援専門員(ケアマネジャー)などと協力する際の窓口となり、介護方針を決めていく上で重要な役割を担う人。

【第1回】「子育てとばして介護」することになった私が思うこと

義両親の介護をする際に決めていたこと

——島影さんが義両親の介護をする際に決めていたことはありますか?

島影真奈美さん(以下、島影):介護保険で利用できる介護サービスや、自治体が提供している高齢者向けの支援サービスなど、使えるものは全部使おうと思っていました。民間の介護サービスをどこまで利用するかは未知数でしたが、いずれにしても、家族だけでどうにかしようというのはまったく思っていなかったです。

また、自分の母親からは、介護の費用はご本人たち、つまり義父母の年金や預貯金で支払える範囲内におさめるよう、アドバイスされていました。「何十年も続く、長期戦になる可能性もなくはないし、一時の感情にまかせて安請け合いをすると、自分たちの生活が破綻するよ」と、繰り返しくぎを刺されました。

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——「介護離職」や「介護疲れ」で家族が共倒れになってしまうニュースを目にするたびに怖くなります。

島影:私の場合は、母親が祖母を遠距離介護し、みとる姿を見ていたので、「こうすれば、共倒れせずにやっていけるかな」という、何となくのイメージはありました。家族だけで抱え込もうとせず、介護費用も本人の年金収入をベースに予算を立てれば、破綻しづらいだろうなという。

ただ、自分がここまでテンパることになるとは思ってもみませんでした。

「介護のキーパーソン」に立候補してしまったとはいえ、食事のお世話や着替え、おむつ交換など直接的な介護を担当するわけではないし、仕事と同じように淡々と手続きをこなせばいいだろうと思っていたのですが、大間違いでしたね。

近くに住まなくても介護はできる

——「介護」と言うと、同居や近居のイメージがありますが、島影さんは義両親とは一緒に住んではいないんですよね? 自宅か90分ほどかけて通ってらっしゃると伺いました。

島影:そうなんです。義父母には娘と息子(私の夫)が一人ずついますが、同居はしておらず、夫婦二人で暮らしていました。認知症だと分かった後も、ヘルパーさんなどの助けを得ながら、それまでと同じように夫婦二人暮らしを続けてきました。

実は介護が始まってすぐの頃、「近くに住んだほうがいいのかな」と迷ったことがあります。当時、夫の実家に行くと、台所のシンクには、飲んだ後のヤクルトの容器や納豆の空のパックがずらっと並んでいました。どうも、収集日に備えてきれいに洗ってはみたものの、収集日になると捨てそびれ、どんどん容器がたまっていく……を繰り返していたようです。

何度か代わりに捨ててみたものの、あっという間に台所にはカラの容器が山積み。それを見ているうち「あのヤクルトと納豆の容器を何とかしないと……。こうなったらもっと近くに住むしかない!?」と思い詰めるようになって。今振り返ると、どうかと思うんですが、私自身がもともと片付けが苦手なこともあって、すっかり追い詰められた気持ちになっちゃったんですね。

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夫に相談すると「近くに住みたいの?」と聞かれ、「住みたいわけないじゃん! でもしょうがないじゃん!!」と半ばキレ気味に答えたら、「住みたくないなら引っ越さないほうがいいんじゃない?」と不思議そうな顔をされたんです。そこで、ハッと我に返りました。

よく考えたら、今は距離があるから、義父母も気を使ってくれて、「今すぐ来て」なんて呼び出されることもないけど、近くに住めば、しょっちゅう呼ばれるリスクは高まる。こちら側も離れているからこそ、多少うんざりするやりとりがあったとしてもクールダウンできるし、次に会ったときに「お義母さん、お加減どうですか?」とご機嫌な対応ができる。でも、あまり近くにいすぎると、毎回ニコニコ対応し続ける自信はないな……と。

——納豆の容器に追い詰められていたのでしょうか?

島影:自分でも、そこ!? と思うんですが、おそらく手続きに追われているうちにパニックを起こしていて、さらに納豆とヤクルトの容器が引き金になって……という感じだったんだと思います。今なら、カラの容器がたまっているのを見ても、几帳面な義母がキレイに洗っているなら問題ナシ! と思いますもん。

ちなみにその後、週2回の訪問介護(ホームヘルプ)が始まったら、あっという間に家は片付き、ゴミ問題も解決。片付けのために一緒に暮らしたり、近くに引っ越したりする必要はまったくありませんでした。

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大変なときはプロに頼る

——誰かに頼るって本当に大事ですよね。

島影:ヘルパーさんも親の性格やペースを見ながらやってくれるので助かっています。義両親自身も「部屋をすっきり片付けたい」「ごみを捨てたい」と思う気持ちはあったんです。でも、自分たちではなかなかうまくいかなくて。かといって、周囲に「捨てなさい」と無理強いされたり、勝手に処分されたりしたら、「ヘルパーさんなんてお断り!」とすぐさま反発しただろうと思います。

——さすがプロですね。ちゃんと義両親のペースに合わせているんですね。

島影:私も、「主人公はあくまでもお義父さんとお義母さん」ということは忘れないようにしています。例えば、夫の実家では引き出しひとつ開けるにしても、「探し物をしたいので、開けてもいいですか?」と確認するし、明らかに必要がなさそうな古いチラシでも「ちょっとこのチラシを整理整頓してもいいですか?」とひと声かけます。

最初は面倒に感じるかもしれませんが、お伺いを立てた方が親も安心するし、信頼してくれます。そのうちに向こうから「どんどん好きなように探してちょうだい」「あなたに任せるわ」と言ってくれるようにもなって、長い目で見たらそっちのほうが断然ラクだなと思います。

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——すごく失礼な言い方ですが「どうせ分からないから」「子どもと一緒なんだから」と思って勝手にやってしまうのはダメなんですね。

島影:幼い頃に、親にされた理不尽な仕打ちって大人になってからも、結構はっきりと覚えていませんか? 例えば、「こんなもの必要ないでしょ」と何か、大切にしていた人形やマンガ、もしかしたらガラクタのようなものでも、勝手に捨てられたりしたら、悔しいし、忘れられないものです。

認知症だからといって、全てを忘れてしまうわけではありません。介護経験のある人や介護現場で働いている人に聞くと、かなり認知症が進んでいる人でも、「ないがしろにされた」ということははっきりと感じ取るという話もよく聞きます。何といっても相手は人生の大先輩ですから、軽んじた態度はすぐバレちゃうと思っておいた方がいいでしょうね。

——「家族だけでどうにかしようとは思っていなかった」「近くに住みたくないなら住まないでいい」というお話がありましたが、つい自分や生活を犠牲にして介護をしたり、助けようとしたりする人も少なくないと思います。そういう方に向けてアドバイスをいただきたいです。

島影:介護はいつまで続くのか、時間の見積もりが非常に難しいものです。数カ月の我慢のつもりが、何十年と続くかもしれません。長期戦になったときに、本当に持ちこたえられるのか? ということを念頭に置く必要があります。

「もう少し頑張ろうと思えば、頑張れるけど」ぐらいを目指すのが、ちょうどいいのかなという気がしています。それぐらい余力を残しておいたほうが、いざというとき踏ん張れるし、穏やかな気持ちで親の人生のラストランに伴走できるのではないかと思うんです。

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(聞き手:Duniakita編集部・堀池沙知子)

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