プレジデント社・小倉宏弥さん インタビュー後編

「せっかく理想の会社に入ったのに…」仕事停滞期に効くドキュメント本

「せっかく理想の会社に入ったのに…」仕事停滞期に効くドキュメント本

「夢や希望を持って今の会社に入社したのに、実際に働いてみたら思っていたのと違った」「頑張ったぶん損した気持ちになる」「会社にしがらみがあって悩みを話せない」——。そんな悶々とした働く若手のリアルな思いから生まれたのが、大企業で働く若手社員の有志団体「ONE JAPAN」です。

昨年、その活動の軌跡を追った『仕事はもっと楽しくできる 大企業若手 50社1200人 会社変革ドキュメンタリー』(プレジデント社)が出版されました。ビジネスパーソンが抱えがちな悩みをどのように解決しているのか、ONE JAPANを取材した担当編集者の小倉宏弥さんに聞きました。

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「やってもムダ症候群」から抜け出す方法

——『仕事はもっと楽しくできる』には、企業の大小に関わらず共感できる悩みが多数書かれていますよね。 例えば、会社の歯車になっているんじゃないかと思ったり、上に見えない天井があると感じたり……。

小倉宏弥さん(以下、小倉):そのような悩みは、ONE JAPANでもよく話題に上っていました。組織は、言われた通りに仕事をすると出世しやすく、波風も立ちませんよね。それなら組織のカラーに染まったほうが早いと諦めモードにはいってしまう人が周囲に大勢いると何度も聞きました。

それに、たとえやる気があっても周りのモチベーションが低いと、自分まで引っ張りこまれてしまいそうになりますよね。「どうせ無理」「それやって意味あるの」という言う人が必ずどの組織にもいることから、ONE JAPAN共同発起人の濱松さんは、「やってもムダ症候群」という言い方をよくしていました。

——斬新な企画を出したり、突拍子もないことを言ったりすると、まさに“出る杭は打たれる”恐れがあるので、どうしても臆病になってしまうんです。この状況から抜け出すためのヒントを教えてください。

小倉:「ダブルスタンダードな態勢」で対応するのはいかがでしょう。ONE JAPANの取材で話を聞いて学んだことです。「対抗勢力として戦うのではなく、諦めるのでもなく、自分の意志を守りながら滑らかにすり抜けていく。

ぶつかりそうなら上手くかわし、仲間になれそうなら声をかけてみる。すると自然に同じような人たちが集まり仲間が増えていく。ONE JAPANを構成する各社の有志チームも、はじめに同じ部署の見知ったメンバーを集めた例もあれば、社内のはじめて会う人に声をかけて集めていった例もあります。少し話をすると「この人なら話が通じるな」というのは分かるそうです。まずは上手に味方を作っていくことが大切なのかもしません。

「バリキャリ系」でも「ゆるふわ系」でもない

——女性特有の悩み、というのもありますよね。ONE JAPANには「なでしこ分科会」という女性チームがあるそうですが、どのような女性が所属しているのでしょうか?

小倉:そもそもの立ち上げは、バリキャリ系とゆるふわ系のちょうど真ん中、中間層のための場として始まったと聞きました。「仕事は好きだし一生懸命やるけど、出世がゴールというわけではない」という女性ですね。

そして、その中間層の女性こそ悩みが多い。僕は、仕事だけやるのってある意味ラクなんじゃないかと思うこともあるんです。毎日仕事のことだけを考えていればいいから。でも実際は、プライベートな用事やライフイベントがあって、調整が必要になりますよね。それを会社で相談できればいいのですが、しがらみがあるせいで人に話せず、ストレスがどんどん溜まってしまう。

——社内で言うと角が立ったり、変な噂が広まったりしますからね。……かといって仕事とは全く関係ないところで話すと、気持ちを理解してもらえないことも多くて。

小倉:だからこそ「なでしこ分科会」のような場が必要なのでしょう。この会には、必達の大きな目標も、イノベーションを起こすためのプロジェクトもありません。ただ、ONE JAPANに所属する女性同士で悩みを話せる場があるということが、何物にも代えがたい価値になっているんです。会社でも家でもないサードプレイスで悩みを共有できると、気持ちを整理しやすくなると思いますよ。

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ベンチャーに転職する人を見ると不安に

——最近は転職市場が活発で、20〜30代でベンチャー企業に転職する人も大勢いますよね。ONE JAPANは大企業の社員で構成されているそうですが、ベンチャーに移っていく人はいましたか?

小倉:取材から本になるまでも、転職したメンバーは何人もいました。いずれも、大企業でできることはやりきった、それでやりたいことが見えてきたから次のステージに行くという前向きなものでした。

——でもその一方で、「一つの企業で働き続けていたら周りに遅れをとってしまう」という不安感に襲われてしまう人もいると思うんです。

小倉:今はさまざまなメディアで、「転職してスキルアップする、カジュアルにトライ&エラーを繰り返したほうが市場価値を高められる」というメッセージが発信されていますからね。でも、ベンチャーで働いたり、転職を重ねたりするのが必ずしもいいわけではありません。転職して上手くいく人がいる反面、周囲の状況に翻弄されて自分の軸がブレてしまうケースもあるから。

——もし、転職していない自分は遅れている、大企業にいるために成長できないまま取り残されていると感じたら、どのように気持ちを切り替えればよいでしょうか?

小倉:ONE JAPANの人たちは、何よりも自分らしさを優先していました。どう生きたいか、どうなりたいかを真剣に考え、メンバー同士で話し合っているから、周りがどんな選択をしても揺るがない。

……とはいえ、ときには「やってもムダ症候群」に襲われたり、女性活躍の壁にぶつかったりすることもありますよね。そんなとき、今いる場所が自分の活躍の場だと信じて踏ん張っている同世代もいると知ったら、力が湧いてくるのではないかと思いました。それも、『仕事はもっと楽しくできる』を出版した理由の一つです。

自分を見失いそうになったときこそ、ぜひ一度この本を手にとってみてください。ONE JAPANで課題解決の道を模索して、柔軟に進んでいくメンバーの姿に背中を押されるのは、きっと僕だけではないはずです。

(文:華井由利奈、撮影:大澤妹、取材・編集:Duniakita編集部 安次富陽子)

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