『思わず考えちゃう』インタビュー第2回

「向いてないこと」から自分の道を決めてもいい。やりたいことがない貴女へ

「向いてないこと」から自分の道を決めてもいい。やりたいことがない貴女へ

絵本『りんごかもしれない』『りゆうがあります』など、子どものみならず大人にもファンが多い絵本作家のヨシタケシンスケさん。3月29日に初のエッセイ集『思わず考えちゃう』(新潮社)を上梓しました。発売されるやいなやたちまち重版がかかり、話題になっています。

ヨシタケさんがいつも持ち歩いているというスケジュール帳に書き留めたメモやスケッチを元に、「実は、こんなことがあったんです」「あんなことを考えていたんです」と自ら解説した一冊。

「富士山を撮るのは盗み撮りにならないの?」という日常のちょっとした疑問から「何かを決めた瞬間が一番楽しい」といった「幸せ」について“思わず考えさせられちゃう”エピソードなどがつづられています。

“思わず考えちゃう”女性に向けて、ヨシタケさんに5回にわたってお話を伺いました。2回目のテーマは「やりたいことがない貴女へ」です。

【第1回】「できないよね」ってちゃんと傷を舐め合いたい “思わず考えちゃう”貴女へ

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「自分に向いていないこと」がハッキリするとホッとする

——前回のお話で「世の中の2、3割くらいの人に共感を得てもらって、2割くらいの人をイラっとさせられれば十分」とおっしゃっていましたが、世の中の空気としても、ヨシタケさんの言葉を欲している気がします。

ヨシタケシンスケさん(以下、ヨシタケ):そういう意味では時代が変わったなって思います。きっと、20年前にこんなことを言っても、誰も見向きもしなかったと思うので。僕自身は昔から同じこと考えてるし、同じことをやっているんだけど、「そうそう」って喜んでくれる人がこれだけたくさんいることがびっくりですね。2、3割しかいないはずなのにって(笑)。

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——前回、年齢を重ねていくにつれて「肩の荷が下りた」とおっしゃってましたけど、それは年齢を重ねたからですか? それとも何かきっかけがあったのですか?

ヨシタケ:年を取ることで、強制的に選択肢が減っていくわけですよね。「今から宇宙飛行士は無理だな」とか、できることとできないことがわかってくる。社会人として時間が経っていくと、おのずと自分がやりやすい居心地の良いところに行き着くわけですよね。向いてないことを何十年もやってられるほど、人間は器用じゃないし、我慢強くもないわけで。30代、40代になってきて、だんだん自分が動きやすいやりやすい仕事に方向付けられるのかなと。

自分はこれが向いてるんだなというのが、やっとわかってきたというか。それがわかってきたときに、自分の生命力の使い方をどこに持っていけばいいのかっていうのもわかってくる。それが僕にとっての「幸せ」に近い感情だったというか……。

若い頃って、やらなきゃいけないことがいっぱいある気がするじゃないですか。何かにチャレンジしなきゃいけないって思っている。

それが強制的に減ってきたときに、「別にやらなくていいんだ」「あそこって心配する必要すらなかったんだな」とわかってホッとする。

そういう意味で、「やらなきゃ!」と勝手に思っていたことが、経験によって一個ずつ消えていくわけですよね。それが「肩の荷が下りた」という表現につながりますね。

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——そういう意味なんですね。でも、それは最初から諦めたり、やらなくていいというわけではないですよね?

ヨシタケ:うん。やっぱり年月が経ってみないとわからないし、20代でわかるわけないんですよね。いろいろやってみて、「あれは向いてなかったわー」っていう。「何であんなことやったんだろう?」って。でも、やったからこそ、あれは絶対にやるまいと。あれをやらなくていいんだったら、別のことはいくらでも我慢できるっていう経験があったからこそ、自分にとっての居場所を見つけられたわけであって。紆余曲折は必要なことなんですけどね。

——紆余曲折や試行錯誤も決して無駄ではないんですね。

ヨシタケ:って思いたいし、だからこそ、自分に向いてないことがハッキリするっていうことがすごくうれしいというか、生きていて羨ましくない人を見たときにすごくうれしい感覚。もてはやされてるけど、全然僕はああはなりたくないっていう感覚に、すごくホッとするというか。別に自分はあれを目指さなくていい。あの人たちがやってる方法は自分には必要ないってことがわかるわけですよね。

——生きていて羨ましくない人(笑)。

ヨシタケ:それが生きやすさにつながるというか。しなくていいことがわかってくる。やっぱり若いうちはそれがわからないし、決められないし、いろいろ知っておかなといけないんじゃないかって思うんだけど。

「英会話を習っておいたほうがいいんじゃないか」とかね。でも英語使わないなっていう。具体的にそういうことだと思うんですよ。「いらないんじゃないの?」っていう。

ということは、それでモヤモヤする時間で、もっと自分を喜ばせることに使えるなというところがわかってくることが、生きやすさだったり、楽しみだったりするわけですよね。

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「やりたくないこと」から自分の夢を決めてもいい

——「自分には向いていない」「これはやりたくない」ということがわかるのも、自分を知る一つの方法なんですね。

ヨシタケ:「僕はこうなりたいんだ」という欲求が一番格好いいとされてるわけじゃないですか。そのために僕は頑張るんだって。そうすると、「こうなりたい」がない人がすごくコンプレックスを抱くわけですよね。肩身が狭いんですよ。夢を語れないことの申し訳なさ。

そのときに、やりたくないことなら勇気を持って言えるっていう。だから、やりたくないことから自分の夢を決めてもいいはずであって。

引き算で自分を決めていくというのは、あまり良くないイメージがあるけれど、現に僕はそうしてきたし、今楽しくやってるというかどうにかなってるわけで。引き算で、負の部分をいかに逆に持っていくか。やりたくないことを引いていって残ったことだけやる生き方が悪いわけじゃないはずなんですよね。

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ヨシタケ:夢を持ってる人の光輝く陰で、ひっそりとしている居心地の良さもあるはずで。自分が感じてた肩身の狭さだったり、申し訳なさだったりは常に意識をしてるし、それをどう自分の中で楽しめるかどうかなんですよね。

「自分ではできやしないけどね」っていうところ込みで、面白がれれば、日々の生活が、仕事がちょっとでも余裕が持てる。面白がれる時間が2分でも3分でも増えればいいじゃないですか。それは何より僕自身が必要なことで、「こうあってほしい」と世の中に期待するイメージでもあるんです。

——それはヨシタケさんが作品を通じて伝えたいことでもあるのでしょうか?

ヨシタケ:「伝える」っていうかね、小さい声で(笑)。ボリュームを抑えてひそひそ声で言っていきたいことですね。

※次回は4月16日(火)公開です。

(聞き手:Duniakita編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)

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