『「違うこと」をしないこと』インタビュー第2回

吉本ばななさんに聞いた、傷との向き合い方「傷があるなと認識するだけ」

吉本ばななさんに聞いた、傷との向き合い方「傷があるなと認識するだけ」

付き合いだからと自分を無理やり納得させてしぶしぶ行く飲み会、流行っているからなんとなく買ってしまった洋服——。

「なんか違うな」と思っても、義理やしがらみ、習慣に縛られて我慢したり、違和感をなかったことにしたりしているうちに、自分が本当に好きなことややりたいことがわからなくなってしまうことは誰にも思い当たることなのではないでしょうか。

「自分に正直に」ってどういうこと? 本来の自分を取り戻すには? このほど『「違うこと」をしないこと』(KADOKAWA)を上梓した、吉本さんに3回にわたってお話を伺いました。

【第1回】吉本ばなな「自分の中の“違和感”を大事にして」

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傷ついたら「傷があるな」と認識するだけ

——同世代の友人と話をしていても、なんだかんだ人間関係の悩みは鉄板の気がします。人間関係で行き詰まった場合はどのように乗り越えればいいのでしょうか? 季節の変化に敏感になってみるとか、自分の内面を見つめるとかが突破口になりますか?

吉本ばななさん(以下、吉本):まあ人間関係の問題は、人間関係でしか解決しないような気がするし、逆のような気もするんですけどね。だから、頭で考えることじゃないような気がします。

「人に嫌がらせされたときはお風呂に入れば大丈夫!」とか、そういうふうには解決しないような気がします。

ただ、例えば、会社から電車で帰ってくる間、ずっと会社の嫌な人のことを考えてたら、それはもうその人と結婚してるのと同じじゃないですか。時間の割き方が。それを、自分で冷静に考えてみて、嫌だなと思えば、別のことを考えようって思うようになると思うんですけど。

やっぱり家に帰って部屋でくつろいでいるときまでその人のことを嫌だなって考えていたらもったいない。私自身は、自分の時間がもったいないからというふうに切り替えるようにはしてきましたね。

——人間は生きていく限り「傷つくこと」からは逃れられないと思うのですが、傷とはどう向き合えばいいのでしょうか?

吉本:傷に関しては、「あるな」というふうに思うだけでいいんだと思います。それ以上、「ケアしなきゃ」「カウンセリング行かなきゃ」ではなくて「傷があるな」と認識する。

「その傷に触れると自分は過剰に防衛するな」とか「過剰に反応するな」という自分を知っているだけで、ある程度は解決していくような気がしますね。「こうなんだな」とただ観察するだけ。

逆に「私は傷ついてなんかいない」と思うことが一番間違っているような気がします。「違うこと」のような気がします。

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仕事ができる人って…

吉本:「傷」と言えば、私が日本で仕事していて一番不思議だなと思うのは「傷つけてしまってごめんなさい」とよく言われるんです。

——どういうことですか? 相手と揉めてという文脈でですか?

吉本:いえ、例えば仕事を断ったりだとか、心がちょっとでもすれ違ったりする場面で「傷つけてすみません」「怒らせてしまってすみません」というメールがよくくるんです。

——仕事を断るのは仕事をしていればあることというか、スケジュールとかの都合で断ることなんてよくありますよね。

吉本:そうなんです、「仕事じゃん!」って思うんですが。仕事ですから「傷つく」とか「怒る」とかないですからって。まして仕事をして意見が食い違って、人格の問題で揉めているっていうのだったらともかく、そういう段階じゃない人に限ってそういうことを言うんですよね。それが日本で仕事をしていて一番多い違和感ですね。

——面白いですね。傷というものに敏感になりすぎているのかもしれないですね。

吉本:日本特有の感覚だなと思います。そういう感じが多分、いろいろな人間関係のドロドロしたものにつながっているのかなと思います。

——吉本さんは「仕事ができる人」ってどんな人だと思いますか?

吉本:やっぱりノイズが少ない人だと思います。なんとなくなんですけど、話が通りやすいというか、トントントンと進むというか。ノイズが多いと、「違うこと」をしていっちゃって、どんどんずれていっちゃう気がします。

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(聞き手:Duniakita編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)

「違うこと」とは、“その人の生き方の中で、今ここでするべきではない”こと——。

吉本ばななさんが、かけがえのない自分の人生を生きるために大切なことをつづっています。白井剛史(プリミ恥部)さんやCHIEさんとの対談、吉本さんへのお悩み相談も収録。定価:1,512円(税込)。

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