『家賃滞納という貧困』インタビュー・前編

“家賃は手取りの3分の1”はもう古い?「家賃滞納」に陥らないために必要なこと

“家賃は手取りの3分の1”はもう古い?「家賃滞納」に陥らないために必要なこと

「家賃滞納」と聞いても「ちゃんと働いているし、家賃も毎月払っているから私には無縁の話」「家賃は手取りの3分の1に抑えられているから私は大丈夫」と思う人は多いのでは?

しかし、家主側の訴訟代理人として、約2200件以上の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた司法書士の太田垣章子(おおたがき・あやこ)さんによると「ちょっとのきっかけでつまずくと一気に家賃滞納の状態になってしまう」と話します。

2月に『家賃滞納という貧困』(ポプラ新書)を上梓した太田垣さんに前後編にわたってお話を伺いました。

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「家賃滞納」や「貧困」は他人事と思っていたけれど…

——Duniakitaの読者は働く女性が中心です。本を読む前は「家賃滞納」や「貧困」というのは社会問題としては認識していても、自分ごとではないというか、どうしても”他人事”のような気がしていました。仕事帰りにルミネで同年代の女性を見ながら「家賃滞納はしてないよな、ちょっと遠い話だよな」って考えていました。

太田垣:そう思ってしまいますよね。でもね、ルミネに寄って帰るような方々もどれだけ貯金があるか? ってことなんですよ。

——どういうことですか?

太田垣:なんとなく私が育ってきた世代は、お給料として入ってきた金額から貯金する分をとって、残りのお金で生活をしていく感じだったのですが、今の若い人たちを見ていると、あまり貯金することを考えられない人が多いかなと。

駅ビルに行ってお洋服を買ったり、遊びに出かけたりしているけれど、ほんのちょっとのきっかけでつまずいてしまうと、数ヵ月とか1年暮らせるだけの貯金もないので、そこから一気に滞納になっちゃう人が多いような気がします。

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——若い世代というのは20代くらいですか?

太田垣:はい。今の若い世代って、まず親の世代がお金がないんですね。親の世代はちょうど私たち世代です。親も生活で余裕がない中で、子供の学校の入学金や学費が加わると追い詰められる。子供たちは仕送りがない分、必死に学費や生活費を稼がなきゃいけない。本当に貯金もないし、親に「助けて」と言えない。親も精一杯ということを、子供たちもよくわかってるから親に「お願い」って言えないんですね。

でも、「じゃあ1年分くらい貯金をしましょうよ」と言っても、なかなか貯金ってできない。できて1ヶ月に数万円じゃないですか。数万円って言っても、5万円以上は難しいですよね。

でも、日々楽しいこともあるし、私の時代に比べれば確実にお金がかかる。スマホや服、そのほかいろいろ誘惑もある。そんな中で、本当に貯金がなくて何かのきっかけでつまずいたときに、なかなか立ち直れないケースは多いと思います。

私たちの世代は、結婚するまでは親と一緒に住んだりして、もちろん生活費は家に入れるんだけれど、一定額を貯金するというスタイルが多かったたんですが、今はちがう。やっぱり住めるお部屋もたくさんあるので、すぐに実家を出るから貯金がしにくいというのはあると思いますね。

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「家賃は手取りの3分の1」はもう古い

——よく「家賃は手取りの3分の1まで」って言われますが……。

太田垣:私は「4分の1まで」と言っていますね。

——それはなぜですか?

太田垣:昔はコンビニなんてなかったんですよ。私たち世代はお水を買うことにすごく抵抗があった世代で。それまでは、水道の水を飲んだり、水筒に家からお茶を入れて持ってきたりしていたのが、「水を買うんだ」という感じになり、お弁当も普通は家から持ってきたのがコンビニでおにぎりを買う時代になり……。どんどんお金がかかるようになりましたね。

昔は外食と言えば、お誕生日やクリスマスのような特別なときだけだったのですが、今はそんなことないですよね。飲食店もたくさん増えたし、スマホなどの通信費にお金がかかったり、どんどんお金がかかるようになってきた。じゃあ、収入がその分だけすごく増えたかと言うと増えてないんですよね。

——だから、4分の1に抑えるということなんですね。今はみんなきれいな格好をしているし、スマホを持つのも当たり前です。「貧困」が見えづらくなっているのかなと思います。

太田垣:それはすごくあると思います。実際に滞納者の方を訪れると、みなさんきれいなんですよ。髪の毛をちゃんと染めてるし、ちゃんときれいに化粧もしているし、確かに中には寝間着の子もいますけど、パッと見て貧困とは思えない。だけど財布の中には、ほとんどお金がないという子もすごく多い。

——見た目ではわからないんですね。

太田垣:いわゆる「相対的貧困」ですね。みんなが持ってるものを持ってないってすごく辛い。そもそも、仕事を探そうとしても今は携帯電話やスマホを持ってなかったら仕事も探せないですよね。

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お給料1年分の額は貯金して

太田垣:つまずくきっかけとして、お金を借りることのハードルが低くなったというのもあると思うんです。昔は自分の大切なものを持っていって、頭を下げてお金に変えたり、誰かにお願いしてお金を借りたりしていたのが、今は簡単にキャッシングもできちゃうからお金を借りることのハードルが低くなっちゃったと思うんです。

——確かにCMも昼間からガンガンやってますしね。

太田垣:当たり前のようにね。明るいですしね。

——メガバンクがバックについてるから大丈夫かなみたいな感じもありますよね。

太田垣:ハードルが低くなっちゃった分、どうしても苦しいときにそこで借りてしまう。そうすると雪だるま式ですよね。

——うー、怖いですね。確かに年収分の貯金はないかも……。この社会では、家賃滞納や貧困は隣り合わせということですね。そうならないためにはどうすれば……。やっぱり貯金ですかね。

太田垣:まずは、何があるか分からないから、とりあえず年収分の貯金はしておこうよと。何があるか分からないし、一番の幸せっていろいろなことが選択できる、自由に選択できる状態のことだと思っているんです。例えば、もし1年分くらいの生活費があれば、仕事を辞めたとしても追い詰められなくて済む。だから、まずはお給料の1年分くらいの貯金をして、自分の選択権を手放さないようにすることが大事だと思います。

(聞き手:Duniakita編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)

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