5分でわかる女子的社会論「私たちは、変わろうとしている」#3

ママ活が成立する“性秩序なき”時代背景…だと!?

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ママ活が成立する“性秩序なき”時代背景…だと!?

「私たちは、変わろうとしている」
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2018年になっても、私たちをとりまく環境は何かと騒がしい——。それは、私たちが常に今を生きていて「これまで」と「これから」の間で葛藤を繰り返しているからなのかもしれません。

その葛藤や分岐点とどう向き合うべきか。エッセイストの河崎環さんに考察していただく連載「5分でわかる女子的社会論・私たちは、変わろうとしている」。

第2回は、女性に経済的援助を求める「ママ活」ついて考えます。

「ママ活」で年上女性が年下男性を経済的に応援するという図式は成立するか?

パパ活における男女の組み合わせは、多くの場合男性が女性より10〜20歳ほど年上である。
パパ活を成立させている最大の要因は男女間の経済格差だが、男女間の精神年齢の格差(圧倒的な女性優位)も、パパ活を成立させる上で外せない条件になっていると言える。そう考えると、同世代間のパパ活は、経済的にも精神的にもなかなか成立しないのかもしれない。
——「パパ活の社会学 〜援助交際、愛人契約と何が違う?」(光文社新書/坂爪真吾)

福岡の男子高校生がツイッターに「ママ活」相手を募集する投稿をして補導されたとのニュースが報道されたとき、まさにそんな「ママ活」のターゲットであろう30、40代女性から湧いた反応とは、まず「ママ活なんて言葉があるんだウケる」、次にその男子高校生が提示したという「『2時間カフェでまったり会うので7000円』は高いか安いか?」でした。

この件に対し、30、40代女性から「えーそんな悪いことする男子高校生(または女性)がいるのー。信じられなーい」「ヤダ不潔ー」みたいなカマトトぶった反応が湧かなかったこと自体を私は「日本の女の文明化だ」と受け取り、感無量でした。文化的先進国であるとはつまりそういうことです。この手の話に「えーヤダうそー」なんてスカスカの反応をするのは、30、40年も生きてきて何見てきたんだ、ってな話です。

冒頭の福岡のニュースは男子高校生の援助を目的とした発信であったため、高校生側の“不良行為”として補導に至ったのですが、ひとたび男子の側が大学生以上になれば、年上女性が年下男性を経済的に援助するマッチングサービスは現実に優に存在する世の中です。

参考:プレジデントオンライン

充実し多忙な仕事人生を送る女性が増えた現代、恋愛対象としては、むしろ年下男性は人気市場。男性がもともと年下女性を恋愛対象とする傾向があり、なにゆえかそれが「原始人類的当然」レベルで公認されていて、その傾向に並行する形で疑似恋愛の「パパ活」があるわけですが、女性が年下男性を恋愛対象とする「進化人類的当然」の前には、まさに並行する形で疑似恋愛の「ママ活」が生まれるのです。

そこに肉体関係を持ち込むのか否か、本当の恋愛や結婚に発展しうるのか否か(そして女性はそれを求めているのか否か)は後述するとして、その援助関係に「ママ活」という言葉が与えられたことで、女性活躍の時代らしく、「おんなの世界」にこれまでとは別の地平が拓けたように思います。男に性があるように女にも性がある、「パパ活」があるなら「ママ活」もある、そんなシンプルなことなのに、「そんなのって成立するの?」「どういう女の人がそんなことするの?」と、むしろ自分たちこそ「パパ活」に興味津々あるいは熱心なはずのおじさん世代の中には、おぼこい反応を見せる人たちもいました。

答えは、「当たり前に成立するよ」「キミらの隣や職場にいつもいるような普通の女性がそんなことするよ」です。

ママ活の特徴であり真髄は、「圧倒的な精神年齢差」

冒頭で引用した記述を借りるなら、「パパ活を成立させている最大の要因は男女間の経済格差だが、男女間の精神年齢の格差(圧倒的な女性優位)も、パパ活を成立させる上で外せない条件になっていると言える」をそのまま「ママ活」に置き換え、

「ママ活を成立させている最大の要因は男女間の経済格差だが、男女間の精神年齢の格差(圧倒的な女性優位)も、ママ活を成立させる上で外せない条件になっていると言える」

が、そのまま「ママ活」の説明になるのが、「ママ活」の特徴でもあり真髄でもあるといえます。

つまり、「ママ」と呼ぶのでややこしいですが、女性側は本当に子供のいるママもいれば、独身女性のほうが確実に多い。ママ活とは基本的に30〜40代前後のある程度余裕のある女性が、「経済格差」と「年上女性と年下男性という、パパ活の比じゃない圧倒的な精神年齢の格差」によって成立させ、エンジョイする疑似恋愛の形なのです。

パパ活と違うのは、「精神年齢の圧倒的な開き」。一方、パパ活と同じなのは、現実は疑似恋愛を提供するサービス関係に過ぎないのに、独身者にとってはそれが最終的に結婚に着地したりするかもしれない、既婚者にとっては現実逃避の末のもう一つの人生になるかもしれない、と優しく柔らかく儚い夢を見せるところです。

女性用風俗(めいた)サービスが(利用者にそれと意識させずに)成立するわけ

「パパ活が流行っている理由は、需要と供給の一致です。女性は身体と時間を提供する。その見返りとして、男性はお金を提供する。もうバッチリじゃないですか」
——「パパ活の社会学 〜援助交際、愛人契約と何が違う?」(光文社新書/坂爪真吾)

ママ活がパパ活と異なるのは、「精神年齢の圧倒的な開き」であると述べました。もともと精神年齢が相対的に高い女性の方が年上で、もともと精神年齢の相対的に低い男性の方が年下であるという、多分に「姉と弟」「母と息子」的な、どこか育てゲーのような感覚が基調となっているはずです。

ジャニーズの追っかけだった女性が、自分に息子が生まれて追っかけ活動をスローダウンさせ、「だって、自分の息子は究極の自担(自分が推しを担当するメンバー)だから」とつぶやく、作家の体験的漫画作品があります。私はジャニーズを追っかけたことはないのですが、「息子は究極の自担」とのセリフに、私自身が息子の育児にどハマりした体験から、激しく共感しました。やはり、女性の追っかけ行為は「育成」に本質があるのだと。

だから、アイドルや売れないバンドマンやお笑い芸人を懸命に追いかけ、ライブチケットやグッズやらにせっせと給料をつぎ込むという、いわゆる「お布施」を払う、あるいは貢ぐ行為は、「育成」のための積極的な投資であり、どこか貢ぐ自分に誇りさえ感じているガチファン女性がどのジャンルにも佃煮にするほどいます。ファンの間では、「ファン年数×対象者との距離×貢ぎっぷり」でヒエラルキーができ、それら変数の中でも貢ぐことが最も自発的に簡単にできる努力であるため、やがて貢ぐこと自体が目的化すると言っても過言ではありません。ホストに貢ぐ話だってさんざん聞いたことがあるはずです。某私立有名校の裕福なママたちの間で、某有名大の男子学生を「ツバメ」として共有していたとの都市伝説めいたエピソードもあります。女性の趣味範囲や年代、経済力によっては、歌舞伎や能狂言などの伝統芸能分野でタニマチとなるひともたくさんいます。

豊かな社会における豊かな女性たちのタニマチぶりは、それこそ男性たちが水商売の女性に見せてきたようなタニマチぶりとなんら引けをとりません。そのタニマチぶりを「素人の男性」に向け、継続的に育成する環境を通してキュンキュンとした感情や体験をエンジョイする。ママ活とは一言で言えば、そんなシンプルな行為なのです。

その「先」に関しては、肉体関係を求める人もいれば、そうでない人も確実にいます。その辺もパパ活と同じです。なんたって本質は「育成」ですから、例えば光源氏が紫の上とあのような関係に至ったことに果たして何を感じるかが、ある意味で踏み絵ともなるのではないでしょうか。

以前、「ジムじゃなくてイケメンのスポーツマッサージに通っているの」とアラフォー女性がキラキラと話していたことがありました。とある若いイケメンだらけのマッサージ店で、一回5000円〜1万円ほど出して定期的にイケメンに揉まれながら話を聞いてもらうのだそうです。個人の感想の域は出ませんが、彼女いわく、「肌がツヤツヤしてくる。痩せる。体調が著しく改善する」のだとか。「女性ホルモンが出るっていうか、なんかもう恋人同士みたいな気持ちになるわよね」とうるうるの唇で語るマダムに、聞いていた他のアラフォー女性たちは一斉に「それって風俗じゃないのかw」と突っ込んだものです。

そういうイケメンが女性に「奉仕」する風俗じゃないサービス業態など、美容健康方面のサービスから飲食からエンタメから派遣デートまでいくらでもある。そう考えれば、「ママ活」は「性秩序の乱れ」とかなんとか辛気臭い話ではなく、現代のサービス消費の延長上にある1点に過ぎないのかもしれません。

本日の参考文献:
(光文社新書/坂爪真吾)

(河崎 環)

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