「摂食障害って何?」第3回

“新橋のおじさんメンタル”を見習おう…「摂食障害の私」を責めすぎないで

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“新橋のおじさんメンタル”を見習おう…「摂食障害の私」を責めすぎないで

女性誌を開くと毎号のようにダイエット特集が掲載され、スマホを開くと「〇〇が激やせor激太り」といったネットニュースの見出しがおどっています。

“女性の体型”は女性自身だけではなく、どうやら他人や世間にとっても「放っておけない」案件のようです。

一方、自らを振り返って見ても体重を気にして無茶なダイエットをしてみたり、ストレスがたまって暴飲暴食してしまったりした経験はあること。しかし、「さすがに異常かも……」と自分の食行動に疑問を持ったことはありませんか?

普通に食事をとることができない「摂食障害」という病気があります。大きく「拒食症」と「過食症」に分けられ、行きすぎたダイエットや、意志が弱い食いしん坊の症状だと誤解されがちですが、厚生労働省が難病指定する精神疾患です。実は女性の約1割が何らかの食の悩みを抱えているといいます。

その背景にあるのは、上手くストレスに対処できない性格や、こだわりの強さ、まわりに気をつかう敏感さなど、誰にでも心当たりのあるちょっとした無理の蓄積。

「なんだか変な食べ方しちゃうんです」——決して他人事ではない食の悩みについて、一般社団法人「日本摂食障害協会」の理事を務める政策研究大学院大学保健管理センター教授の鈴木眞理先生にお話を聞きました。

【第1回】摂食障害ってどんな病気?
【第2回】摂食障害に母娘の関係は影響する? 発症しやすい人のタイプ

鈴木眞理先生

鈴木眞理先生

摂食障害は、きちんとしている人がなる病気?

——過食症の患者さんが病院を受診せず、症状が長引くのは、「恥ずかしい」という気持ちが先にたつからではないでしょうか?

鈴木:まさに、摂食障害って、そこで「恥ずかしい」と思うタイプの人がなる病気なのよ。心が弱いと思われるのが恥ずかしいとか、稀な病気だから恥ずかしいとか、食べる姿を見らるのが恥ずかしいとか。世の中、もっと恥ずかしいことをやってる人は堂々としてるのに。

新橋あたりで1週間に1回酩酊してるおじさんなんか、翌日会社に行ったら「課長さん」や「部長さん」としてデスクに座ってるんだから(笑)。

——言われてみればそうですね(笑)。新橋のおじさんメンタルが羨ましいです。

鈴木:だから、認識を変えれば良いのにと私は思うの。過食嘔吐の人は、人に見られないようにしてるだけ新橋の酩酊おじさんよりカッコいいわよ。トイレかお風呂で流しちゃうんだもの。

だから私は「トイレもちゃんと掃除して、エレガントな患者になってね」って言うの。

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——6月2日に実施された「世界摂食障害アクションディ」の講演会にうかがいましたが、会場に来ている女性がキレイな人ばかりで驚きました。みんな「きちんと」しているというか……。

鈴木:そうでしょ? 摂食障害の女子大生の会というのがあるんだけど、行ってみたら皆さんモデルばりで、私、「素敵な人がなる病気なのね」って思っちゃった(笑)。あなたもきちんとしていそうじゃない? どこかが抜けていたら、ならない病気なんですよ。

——そうですかね(笑)。結構いい加減なんですけど。

鈴木:と言いながら、きっと、同業の他の人よりきっちりしてるから(笑)。

——確かに、そう言われたことはあるかも。

鈴木:捉え方の違い。この病気をしていても、誰にも迷惑かけていないし、誰も死なないのよ。

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「ここぞ」というときのストレス解消の面も…

——前回、摂食障害になる・ならないには、物事の受け止め方=「認知」の仕方も影響しているというお話がありましたね。摂食障害の人は、この認知が歪んでいるのでしょうか?

鈴木:過敏なんです。それが良い、悪いということではありません。なので、過食症の治療には認知行動療法が効くと言われていて、今年の4月から保険が効く治療になったんですよ。

*認知行動療法:ものの見方(認知)を変えることで、考え方や行動の幅を広げていく治療法

——それは朗報ですね。心理カウンセリングは保険適用外で、経済的に継続が難しいですから。

鈴木:米国では 認知行動療法をちゃんと受けると「100%治る」という説もあるけど、それはちょっと言い過ぎね。半分くらいは軽くなる。「治癒」とは言いません。だって、いつも(ストレス解消の手段として)頭の隅にあるでしょう?

——あります。

鈴木:だから、それを「使うか、使わないか」のところで、「他の対処法があるんじゃないか」と考え方を広げられるようになることが大事なの。「治る」というより、自分でコントロールできるようになればいい。

東日本大震災のときに、「身内を亡くした私が後追い自殺をしなかったのは、摂食障害があったからです」とおっしゃった人がいました。申し訳ないけど、分かるでしょう? 私はそれでいいと思ってるんです。

——どうしてもストレスに耐えられないときは過食嘔吐に助けてもらう……ということですよね。私も、今まで摂食障害があったから、仕事も折れずに頑張ってこられたのだと思っています。

鈴木:「ここぞ」というときは使っていいと思う。まだ症状が残っている方から、「先生、私は今こういう状態なんですけど、治っているんでしょうか?」と聞かれて、「ほぼ治れば、それでいいんじゃない?」と答えたらすごく喜ばれました。安心するんですね。

そもそも、過食嘔吐していても、人に迷惑かけてないぶん、新橋の酩酊おじさんよりマシですから(笑)。

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——たしかに、過食嘔吐とはいえ路上で吐いたりしませんからね(笑)。「私はなんてダメな人間」と自己嫌悪のスパイラルに落ち込まないことが大事なんですね。

鈴木:有名グローバル企業の部長クラスの人も患者さんにいますが、家に帰って15分くらいでぱっと食べて吐いて、すっきりしてから、また仕事を頑張る……というケースもある。仕事ができるお姉さんの中には、わーっと飲んで酩酊する人も結構いるじゃない? あれと同じよ。

ヤク中よりマシだし、タバコよりいいと思うわ。法律を犯しているわけでもないし、だから大丈夫! 自分に自信を持って。

※次回は11月6日(火)公開です。

(取材・文:新田理恵、写真:矢野智美)

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