若宮正子さんインタビュー 第5回

「これって私の仕事?」と思ったら…“鈍感フィルター”をかけてみて

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「これって私の仕事?」と思ったら…“鈍感フィルター”をかけてみて

日々忙しく働く女性たち。ふとした瞬間に「どうしてこんなことをしているんだろう」「これって本当に自分がやるべきことなのかな」といった気持ちが押し寄せてくることもあるでしょう。

そんな悩める女性たちの背中を押すのは、世界最高齢のプログラマー若宮正子さん。82歳で高齢者向けのアプリを開発して一躍時の人になりました。

このたび『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』(ぴあ株式会社)を上梓した若宮さんに話を聞きました。5回目である今回は、「報われない仕事で“腐らない”ために必要なこと」です。

5-1

“雑用”には旨味が詰まっている

——ガラスの天井という言葉に代表されるように、キャリアにおける男女の差は今でも存在します。以前、若宮さんが銀行員として働いていた50年前はなおさらだったというお話がありましたが、そんな中でも、若宮さんが一つの仕事を全うできたのは、どういったモチベーションからだったんですか?

若宮正子(以下、若宮):そうですね。当時は女性の管理職なんてとんでもない時代で、会議室に来てくれというのは「コピーを取って来い」という意味でした。女性は鬼ごっこをすれば、鬼をずっと代わってもらえないような存在で、それどころか、まず、ゲームに入れてもらえないことも。女性たちもそもそも中へ入って行こうなんて気はなかったんです。私もそういうものだと思っていたんですよ。

——そこからどんなマインドチェンジがあったんですか? 今の若宮さんからは、やりがいもなく働いている姿がどうしてもイメージできないんです。

若宮:たとえば、当時のコピーって、今とはちがって写真の現像のように水につけたり乾かしたりしなければならなくて、とても手間のかかる作業でした。だからコピーを頼まれると面倒臭がる人も多かったのですけれど……。私はね、ちょうどいい機会だからって、資料に目を通して重役会議の中身を見ていたんです。だって、そういう意味では、誰にも警戒されずに高度の機密に触れられる立場でもあったわけだから。

——警戒されずに高度の機密に触れられる立場……。すごい発想の転換です。

若宮:私は雑用とは考えようによっては、ものすごい教育だと思っているんです。会議室にお茶を持って行くだけでも知り得る情報はいくらでもあって、会議の雰囲気とかお客さんの顔色とかを見ていると、まるで一つのドラマを見ているような気持ちになりました。会社の動きがいろいろと見えてきちゃうわけです。「あの会議まだやっているの? 何やっているのよ」なんて興味のないふりをしながらね(笑)。

“鈍感フィルター”をかけるとどんな仕事も楽しめる

——若宮さんが当時、そうした会社全体の動きにまで興味を持っていたのは「いつかは自分も役職についてやるんだ!」という、気概や反骨精神があったからなんですか?

若宮:まさか! 当時の情勢では銀行の中で女性である自分が出世するなんてあり得えないわけですから、「純粋な好奇心」以外の何ものでもありません。それによって、自分がどうこうなろうなんてことは、これっぽっちも考えていませんでしたね。

——「大切な仕事を任せてもらえない」という理由で、人はいくらでも腐ることができると思います。どうして若宮さんは、それでも業務を前向きに捉えられたんでしょう?

若宮:それはきっと、「鈍感力」の為せる技ですよね。「なんで私がこんなことをしているんだろう」って思ってしまったら辛くなってしまうけど、そこにちょっとだけフィルターをかけて、鈍感力を発揮するんです。そうすると、「これはこれで楽しいじゃない」って思えるものだから、それだけでもずいぶんラクになれると思いますよ。

(取材・文:武末明子、撮影:面川雄大)

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