若宮正子さんインタビュー 第1回

「芽が出ないと嘆くのはムダなこと」アプリおばあちゃんが明日のために種を蒔く理由

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「芽が出ないと嘆くのはムダなこと」アプリおばあちゃんが明日のために種を蒔く理由

「年齢」を理由に新たな挑戦をあきらめたりしたくない。だけどそんな意気込みとは裏腹に“失敗のリスク”が不安になって動けなくなってしまう人もいるのでは?

そんな悩める女性たちの背中を押すのは、世界最高齢のプログラマー若宮正子さん。82歳で高齢者向けのアプリを開発して一躍時の人になりました。

このたび『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』(ぴあ株式会社)を上梓した若宮さんに話を聞きました。そのお話を全7回にわたってお届けします。初回である今回は、若宮さんが「心に木を育てる」理由について聞きました。

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芽が出る/出ないは関係ない

——がむしゃらに駆け抜けてきた20代とはちがって、30代はこの先の人生設計への悩みも深まります。人生100年時代と言われる中、若宮さんのように80代になっても活躍していくにはどんな30代を過ごしていくといいのでしょうか?

若宮正子(以下、若宮):私自身、2年前にアプリを開発するまでは、こうしてインタビューを受けることになるなんて想像もできませんでした。人生ってどうなるかわからないものですし、だからこそ面白いと思いますよね。

——若宮さんが、昔から意識して心がけてきたことってどんなことだったんですか?

若宮:私がこれまでやってきたことは、本のタイトルにもなっている「心の中にたくさんの木を育てる」ことです。私の心の中には、プログラミングの木、セルの塗りつぶしや罫線で文様を描くエクセルアートの木、友達の木、旅行の木などたくさんの木が根ざしています。

どれも始めは小さな種から始まりましたが、水をやって大切に育てているうちに、枝葉を広げた大きな木になりました。いつになったら芽が出るかなんてわからなくても、そうした種をまずは、1つでも2つでも蒔いてみてはどうでしょうか?

——せっかく植えた種の芽が出なかったこともきっと経験されているはず。そうするとつい、「このために費やした時間や労力をもっと別のことに使えばよかった」と嘆いてしまいそうになります。若宮さんはそうした後悔はこれまでありましたか?

若宮:もちろん私にも大成しなかった小さな木はあります。けれどもその小さな木も、そのままで大切にしているんです。それに世の中はこれからもどんどん変わっていくはずです。そうした時代を生きるからには、種を蒔いても芽が出ないと嘆くのは時間がもったいないと思うのです。要するに、これまでの経験なんて直接的にはみんなムダになっていくはずですから。

クリエイティブであれ!

——変化の激しい時代の中にあって、変わらず必要とされるものってなんだと思いますか?

若宮:それは、基本的な“人間力”だけだと思います。パソコンでいうOSの部分ですよね。スキルにあたるアプリは次々と変わっていくので、新しいものをインストールするかアップデートが必要になります。でも、そうするにはOSの処理能力や容量がしっかりしていないとアプリも進展していきませんよね。

——人間力ですか……。スキル以上にハードルが高そう。

若宮:人間力を養うには、知識や情報を持ち合わせていることはもちろん、生身の人間を知ること。たとえば情けや仁義、人との付き合いにおけるバランス感覚なんかがそうで、それこそが人工知能や動物にはできない「人間にしかできないこと」だと思うんです。

——AIに負けないために必要とされるのが、“人間力”というアナログ的要素であるのは少し意外が気もしますね。

若宮:私は人工知能にはできないことが2つあると思っていて、その一つがゼロから1を生むこと。つまりクリエイティビティの部分です。そしてもう一つは、心変わりをすること。だから恋愛もするし、悲しいことがあるとご飯がおいしくなくなっちゃうのよね。でも、人工知能はきっと情緒的に「なんだか、バカバカしくなったから、この辺が引き時よね」などと割り切ることなんてできません。プログラミングされたとおりに動くしかないのですよね。

——割り切ることができないだなんて、人工知能も大変……。あらためて人間に生まれてよかったと思わずにはいられません。

若宮:私もそう思います。創意と工夫とほんのちょっとの遊び心は日常のちょっとした中にも隠れています。せっかく人間に生まれたのですから、常日頃からそのことを意識して取り組んでいきたいですよね。

(取材・文:武末明子、撮影:面川雄大)

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