TENGA広報 西野芙美さん・工藤まおりさんインタビュー1

オープンな女性に「何を言ってもいい」は勘違い【TENGA広報に聞く】

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オープンな女性に「何を言ってもいい」は勘違い【TENGA広報に聞く】

タブー視されがちな女性の性欲に真正面から取り組み、SNS等で顔出しの発信を続ける、性具メーカーTENGA広報の西野芙美さんと工藤まおりさん。

時には暴走した性欲の「オカズ」にされ、心ない言葉をぶつけられることもあると言います。そんななかで彼女たちが気づいたこと、発信していきたいこととはいったい何なのでしょうか? 今回から全3回にわたってお届けします。

西野さん(左)と工藤さん(右)

西野さん(左)と工藤さん(右)

【プロフィール】
西野芙美さん
早稲田大学文化構想学部卒。人材紹介会社、出版社勤務を経てTENGAに転職。現在2年目。

工藤まおりさん
津田塾大学数学科卒。リクルートグループで人材派遣の業務にかかわったのち、TENGAに転職。現在4年目。

「エロい女には何を言ってもいい」なんてはずがない

――顔を出してアダルトグッズの広報をしていると、まったく知らない人から性的な欲望をぶつけられたりすることも多いかと思います。

工藤まおりさん(以下、工藤):私はTENGAの広報に転職して4年目になるので、いわゆる「オカズにされる」ことにもようやく慣れてきましたね(苦笑)。ああ、こんなふうに見られるんだなと客観視できるようになったという感じです。

西野芙美さん(以下、西野):TENGAという会社がどういうビジョンを持ってアダルトグッズを製作しているのかが、まだまだ浸透していないから、「そんな会社で働いている女はエロい」「抜ける」みたいな発言が出てくるんだと思います。

実際には男女ともに自分の性を楽しめるように、高齢者の性や障がい者の性などにも真面目に取り組んでいる会社なのですが、その部分をもっと伝える必要があると感じています。

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――西野さんは以前、Twitter(ツイッター)で「最近『TENGAの広報なんてやってるスケべ女ぐう抜ける』的なコメントが私にも寄せられるようになって驚いてるけど、こちとらそういう『エロい女には何してもいい』ってクソ思考を撲滅するためにこの仕事してるからな」とおっしゃってましたね。かっこよかったです。

西野:我々としては「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というTENGAの企業理念があって、たとえば女性向けアダルトグッズの「iroha」は、女性が自分の性を肯定してポジティブに楽しめるように製作されています。「アダルトグッズを使う女=エロいビッチ」という偏見をなくして、自分の性をもっと楽しんでもらいたいという思いから誕生したプロダクトなんですよ。

工藤:「アダルトグッズを使う女=ビッチ」とイコールで結んでしまう考えには、普通の女性はそんなことしない、女性なら慎むべきだという、「女性は〇〇であるべき」というバイアスがかかっていることに気づいてほしいです。

それ、逆ですから

――エロいと認定した女性には「やらせろ」等の暴言を吐いていい、という謎のロジックを展開している男性も多いですよね。性的な欲望が生まれるのはしょうがないとしても、それを本人にぶつけていいわけがないと思うのですが。

西野:そうなんですよ! 「性的欲望をぶつけられるのがイヤなら、この仕事を辞めればいい」というような意見もありましたが、「それ、逆だから!」って思います。偏見をなくすために、考え方を変えていくためにこの仕事をやっているんだから、辞めるという選択肢は方向性が逆なんですよ。どういうふうに言葉を尽くせば、こういう人たちにも伝わるんだろう……って、ちょっと絶望しちゃいました(苦笑)。

工藤:私の場合、「セックスしたいって誘ってくる人みんなに職場と顔全部さらしていいんだったら考えますって言ってる」とツイートしたら、「僕、全部さらすんでセックスしてください!」みたいなコメントがきて、「そういうことじゃねぇよ!」って(苦笑)。それくらいのリスクを負って発言してくださいねっていう意味なのに。

西野:ツイッターでは、言葉尻だけをとらえて誤読されないように、余白をなくすというか、できるかぎり思考の流れが見えるかたちで発言するように気をつけてはいるのですが、どうしても誤読は生まれてしまいますね。

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コミュニケーションが苦手を免罪符にしない

――他人に100%の真意を伝えることは不可能なんだと絶望しても、ツイートし続ける理由って?

西野:「理解しあえない相手なんだ」と切り離してしまったら、それ以上何も生まれないからです。分断するのではなく、相手がそういう考えに至った背景は何だろう、と考えるほうが建設的ですし、女性も「男性は××であるべき」と思い込んでいるところがあります。お互いが一方的に「男性の/女性のこういうところが嫌だ!」と糾弾するのではなく、相手が嫌だと感じていることを受け止めて、そのうえでどうしたらいいかをもっと話し合えるような関係性になるといいのですが。

工藤:伝え方が重要ですよね。たとえば、「セックスしたい」と相手に伝えるにしても、傷つく伝え方とそうでない伝え方があります。

西野:「(誘ったら乗ってくれそうだから)セックスしたい」と「(あなたのこういうところが魅力的で人間として惹かれるので)セックスしたい」とでは全然違いますよね。コミュニケーションが得意な人もいれば、苦手な人もいるのは重々承知しているんですが、相手を不快にさせない、相手を傷つけないために必要なものってなんだろうと探る努力は諦めないでほしいです。コミュニケーションが苦手ということを免罪符みたいにしないで。

工藤:お互いの関係性によっても、傷つくか否かはだいぶ変わってきますよね。この間、カラオケで私が歌ってるときにヤリマンコールされたんですよ(笑)。

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一同:サイテーだな。

その話、相手が受け取る準備はできていますか?

工藤:でも、その人とは、前提として軽口を叩ける関係性があって、相手のどこまで踏み込んでいいのかが見極められるから私としては不快ではありませんでした。基本的に下ネタ好きが集まっていたので、私もヤリマンコールに「うるさーい!(笑)」って返して、結果、なごやかな空気に(笑)。

西野:牧歌的な何かを感じる……(笑)。

工藤:もちろん下ネタを受け流したり、上手に返したりするのがいいオンナだなんて言うつもりはさらさらありません。言う側と言われる側でちゃんとコミュニケーションが取れていますかと考えてほしいんです。

たとえば、実際のバーを貸し切って「猥談・下ネタOK」というルールで集まる「猥談バー」というイベントがあるのですが、そこではただただ男女が集まって、みんなでエロい話を共有して飲んでいる。

処女も童貞も、ご主人様も下僕も、いろんな性癖の人が自分の性をオープンにしていて、誰もそれを茶化したり引いたりしない。みんな当たり前の日常を話している感じで、すごく居心地のいい空間なんです。

――みんな、下ネタリテラシーが高そうですね(笑)。参加者の合意も取れているので、安心して話ができますね。

西野:こんなこと言ったらどう思われるだろうと人の目を気にせず話ができたら、変にこじらせずに済みそうですよね。相手のことを考えないクソリプや、偏見を持たないためにはすごく良さそう。

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(取材・文:須田奈津妃、撮影:大澤妹)

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