『日本のヤバい女の子』はらだ有彩さん 後編

ニュートラルな”ふり”が一番ダサい 「友情に必要な想像力」について考える

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ニュートラルな”ふり”が一番ダサい 「友情に必要な想像力」について考える

「なんか昔々の女の子は相当ヤバかったらしいよ」と友達に語りかけるような新感覚なエッセイ『日本のヤバい女の子』(柏書房)が今、話題となっています。

著者のはらだ有彩さんとのガールズトークの後編は、「友情に不可欠な想像力」について聞きました。

【前編】キレイなオチがつかなくても人生は続く

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はらださんのような女友達がほしい

——『日本のヤバい女の子』の面白さって、はらださんの視点や寄り添い方にあると思いました。こんな女友達がいたらいいなと素直に思える。本に出てくる女の子たちは、どんなふうに選んだのですか?

はらだ有彩さん(以下、はらだ):ありがとうございます。物語を読んでいるときに、自分がツラかったと思ったこととか、腹が立ったこととか、身に覚えがあるぞと感じた話を選んでいます。実体験だけではなく、友達から聞いた話とかも含まれています。

ウェブでの連載*が40本くらいあるのですが、今回本に収録した女の子たちは、自分ができないことをやっている人たちを選びました。

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——自分ができないこととは?

はらだ:強い行動を起こした女の子。たとえば、オシラサマ。彼女は「馬娘婚姻譚」という話に出てくる馬と結婚した人間の女の子です。最後は、馬と空に消えてしまうのですが、その際に残していく家族に対するケアが万全なんです。愛を貫きつつ、周囲への思いやりも忘れないって強い行動だなと思うんです。私にはとてもできそうにない。

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ひとりだとおかしいなと思うことも…

——書籍化する時に、加筆した部分も多いと聞きました。どんなところを意識したのでしょうか?

はらだ:ウェブでは自分の考えを押し付けないように、あえて断言を避けて書いた部分も多くありました。でも、本にするのならもっと友達と話している感じにしたほうがいいなと思い、自己開示を意識しました。

——友達と話している感じが自己開示?

はらだ:たとえば、新しいお店ができたらしいよという情報だけでは一方的に提示しているだけ。「私はそこに行きたい」とか、「私はそのお店の料理が美味しそうだと思う」と伝えないと、相手の気持ちも引き出せませんよね。なので、自分の素直な気持ちも書こうと。結構、憤っている気持ちなんかも入っています。

——キレっぷりがいいですよね。一緒になって「そうそう!そうだよね!」って言いたくなりました。というか言っていました(笑)。

はらだ:ふふ。ありがとうございます。日常生活で、「こいつしばいたろか」って思う瞬間って結構あると思うんですよ。一時期話題になった、わざとタックルしてくるおじさんとか悪気なく「遅くまで働いてカレシは怒らないの?」とか聞いてくる人とか。

でも、全部その場でキレることはできないですよね。どちらかというと怒りを飲み込むことのほうが多いのではないでしょうか。その抑圧させてしまった怒りをどこかで共感に変えられたらいいなと思って。昔話の女の子たちがそのきっかけになれば、と。

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——なんだかとても健全な気がしますね。

はらだ:自分ひとりだとこれっておかしいのかな、こっちが我慢することなのかなって思うこともあると思うんです。でも、昔話の女の子の話をする中で、「やっぱりこれってキレていい案件だよね!」と気持ちを軽くできたらうれしいです。

ニュートラルなふりをする人が一番ダサい

——うんうん。すごく昔の話なんだけど、今の時代の私たちも同じようなことで悩んだりキレたりしているのはとても新鮮な感覚でした。個人的に”わかりみ”が深かったのが虫愛づる姫君(堤中納言物語)です。たまたまオフラインで出会った数名に「虫好きの変なヤツ」とカテゴライズされるのは、ムカつくなー、と思いました。

はらだ:私は虫愛づる姫君の中に出てくる、右馬佐(うまのすけ)という男の子に腹を立てました。「想像してたより可愛いじゃん」なんて、ニュートラルに見せかけて、「化粧したら化けそうなのにもったいない」と実は偏っているんです。そういうのが一番ダサいんやぞって思って。

理解を示しているふうを装っているけれど、無意識にバイアスがかかっている。そして、その本人が悪人ではないというところにままならなさを感じるんです。その人を殴っても解決しないし、でもこっちはモヤモヤするし……。

——(はらださん意外とワイルド……)。虫愛づる姫を読んで感じたことがもうひとつあって。今って、一度言ったことを貫くのが尊い、という傾向があるなと感じるんです。たとえば、虫好きキャラだったら、どんなときもそれを貫かないといけない。ちょっとブレると「好きとか言って蛇にビビってんじゃんw」「変人なふりしてるだけじゃん」って。余計なお世話というか、ツラいなと思うんです。

はらだ:そうですね。常に筋が通っていないといけないというのはすごく息苦しいなと思います。誰だっていきなり顔の前に大きな蜘蛛が落ちてきたら驚くでしょうし、「それもあかんのかい!」ってなりますよね。

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その人のアウトラインだけ見て決めつけないで

——ただ虫に興味があるだけなのに。

はらだ:彼女が幼虫を愛でるのは成長を拒否している証であるとか、恥ずかしいことは何もないと言いながら家の奥に引っ込んだりして、行動が破綻しているとか。いろんな考察があって、私はそれらに難癖をつける気はさらさらないのですが、姫のアウトラインだけを見て「この人はこうだ!」と語られることに、ショックを受けたんですよね。

それで、姫が「わーい!」と言っている感じの挿絵を描きました。この「好き」とか「楽しい」という気分はもっと大事にされてもいいのに、と。

『日本のヤバい女の子』(柏書房)より

『日本のヤバい女の子』(柏書房)より

——大人になると、処世術も身につきますよね。自分が好きなことを邪魔されないように、表面上は世間とうまくやっていこうと努力もしますよ。それを矛盾だって言われたら、「やってらんねぇな」って舌打ちしたくなります。あ、すみません。ちょっと気持ちが入りすぎました(苦笑)。

はらだ:そうですね。そこで、大変だったねとか、ただ好きでいてもいいのにね、と声をかけてあげられたらいいですよね。

相手のことを「ただ好き」と思うだけでいい

——そういう寄り添い方が大切なんだなと思います。本の推薦コメントのなかに「痛みに思いを馳せ、無念に寄り添うその姿を見て、友情に最も不可欠なのは『想像力』だと確信した」(桃山商事・清田代表)という一文を見つけて、その通りだなと思いました。

ただ、想像力も思い込みになると妄想に変わってしまいがちです。いい意味での想像力を持つために、どんなことに気をつけたらいいでしょうか?

はらだ:その人のことをただ好きだと思うだけでいいのではないでしょうか。本当に親身になるがゆえに、何も声をかけられないことってありますよね。でも、ハッピーでいてほしいなと思う気持ちがあるから、ただ寄り添う。それだけでいいと私は思います。

——はらださんが1000年前の女の子たちに寄り添ったように、もしかしたら未来では私たちが寄り添われて、語られているかもしれませんね。

はらだ:そうですね。「2018年ってこんなことで悩んでたの? ヤバいよね」って、今のモヤモヤや怒りが“ありえない話”になっていたらいいなと思います。

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(取材・文:Duniakita編集部 安次富陽子、撮影:面川雄大)

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