『透明なゆりかご』インタビュー・前編

産まれたあとの人生を描きたかった…NHKドラマ「透明なゆりかご」原作者に聞く

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産まれたあとの人生を描きたかった…NHKドラマ「透明なゆりかご」原作者に聞く

女優の清原果耶さんが主演するNHKの連続ドラマ『透明なゆりかご』(総合、金曜午後10時ほか)が放送中です。累計発行部数360万部(電子含む)を突破した、沖田×華(おきた・ばっか)さんのマンガが原作で、産婦人科院の見習看護師として働くことになった高校3年生の×華さんから見た、命が生まれるだけではない産婦人科の現場を描いています。

連載開始から4年。ドラマ化でさらに多くの読者を獲得し、反響を呼んでいる同マンガについて沖田さんに話を伺いました。

【沖田×華さん対談】中絶した女性に「あめを2つ舐めたら帰って」

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「産んだら終わり」ではない…医療モノへの違和感

——7月から始まったドラマも佳境を迎え、残すところ3回になりました。ドラマはいかがでしょうか?

沖田:清原果耶ちゃんが主役なので、「可愛いな」「これが私か」と思いながら見ています。一緒に住んでいる彼と毎回見ているのですが、彼は毎回泣いてますね。

——ドラマの掲示板を見ていると男性からの書き込みが結構あるんですよね。

沖田:やっぱり脚本がすごくちゃんとできているなあと思います。濃いんですが、重くなり過ぎないというか。音楽も素晴らしい。私自身は普段はあまりドラマは見ないのですが、「すごいな、すごいな。自分の原作じゃないみたいだ」って思いながら見てますね。別の話を見ている感じがします。

——コミックスの1巻のそでに「最近の医療ドラマに関する違和感から『透明なゆりかご』を描きました」と書いてらっしゃいましたが、違和感というのは?

沖田:病院のドラマって多少エンターテイメントという部分があるから、盛り上がったりするのはわかるんですけれど、妊娠、出産の過程でいろいろなトラブルがあったり、困難があったり、病気になったりとかしながらも、無事産まれました、よかった! というところでおしまいなんですよね。

「これで、赤ちゃんは幸せになったんでしょうか?」と。「産まれてからの生活はどうするのかな?」と気になるんです。産まれたあとにどうやって人生を生きていくのかっていうところはあまり興味がないのかなって。

——産んだら終わり、みたいな。

沖田:私の地元でも10代で妊娠する子が多いんです。それで妊娠してしまったら女が悪いみたいな感じになるんですよね。

知識もなく、「産んだらなんとかなるでしょ」「友だちもいるし」みたいな感じで産んだけれども、結局、彼氏ができたり、別れたりでうまくいかなくなって、子どもに手を上げたり、放置したり、保育園行かせない、ご飯食べさせないというのを見ているので、産まれてこの子は多分、15年くらいたったら働けるけれども、その間はどうするんだろう? その間はずっと親にボコボコにされるのかな? と、この子の幸せや人生が気になってしまうんですよね。

そういうところを踏まえた上での妊娠、出産、中絶っていうのを描きたかったんですね。

——なるほど。ただ、沖田さんのマンガはどこか希望があるというか、わかりやすい明るさではなくて、読者に委ねて放っておいてくれるような温かさがあるなと思って……。

沖田:私の妄想も入ってます。実際の話をそのまま描くと、やっぱり暗いんですよね。「その人は、それ以来行方不明になってしまいました」とかで終わっちゃうから、それはみんなモヤモヤしちゃう。

あくまでも私の妄想なんですが、その人が今も生きてるっていう前提で描くので、そうするとやっぱり、女の人は80年くらい生きるし、ずっと下り坂の人生のわけないから、その間になにかよいことが必ずあったりするじゃないですか。もしかしたら、このときに、こういうことがあったかも……というのを描いてるというか。

——逆に言うと、それがないとやっていけないですよね。

沖田:そうなんですよね。死産とかで子どもを亡くされたお母さんとかも、本当は死にたくて仕方がないくらい辛いけれど、ほかに兄弟がいたら死ねないじゃないですか。この子を真っ当に育てていかないと、という思いもあるからこそ死なないし、人生をずっと生きていかなきゃいけない。

だから「生きている」「生きてゆく」というのを強調するというか、みんな日常的に過ごしていることなんですけれど、辛くて世知辛い世の中をずっと生きていくのは大変だから、日常の何気ないこともすごいことなんですよというのを言いたいという思いはあります。

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「何事も正解はない」見方は読者に委ねる

——大きい話になってしまうのですが、沖田さんが考えるマンガの役割って何だと思いますか?

沖田:私のキャラクターって、基本的にものを知らない、子どもから見てる視点なんです。高校生のときに「なんで? なんで?」と思うことが多々あって、それをいざマンガにしたら、同じような考えを持ってる人がかなりいたというか、共感してもらえたというのを初めて知ったんです。

例えば、「子どもが欲しくない」というのも私だけだと思っていたので。「妊娠したくない」というのも私が変だからそう思うんだと思ってたけれど、実はそうではなくて、いろいろな人たちがいて、でも思ってることを言えないというか……。

特に、妊娠が途中でダメになったりとか、流産だったりというのはすごく多いんです。それって理由が分からないものなので、答えがないからこそ、女の人ってめちゃめちゃ答えを探すんです。「自分のところに赤ちゃんがきちゃったから、こういうことになっちゃった」みたいな。「そんなことないよ」と。

マンガは基本的に誰かを悪者にしたくないので、誰がいい、悪い、これが正しい、悪い、というのはなくして読者さんに委ねます。見方を決めてもらう感じですね。だって、正解はないから。子どもを産んでこれが不正解でしたとか、正解でしたというのは一生見つからないことなので。それはきっと、自分の人生が終わったときにわかるものだと思います。私の人生どうだったかなとかいったときに、走馬燈で流れると思う。(マンガは)そういう役割なんじゃないかなと思います。

(取材・文:Duniakita編集部・堀池沙知子、撮影:矢野智美)

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