映画『寝ても覚めても』主演・東出昌大さんインタビュー 前編

東出昌大さんが思う「大人の恋愛」って? 映画『寝ても覚めても』主演

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東出昌大さんが思う「大人の恋愛」って? 映画『寝ても覚めても』主演

なぜその人に惹かれるのだろう? なぜその人でなくてはならないのだろう?

自分のことを一途に想ってくれる恋人と、忘れられない昔の恋人。2人の男のあいだで揺れ動く女の姿を描いた映画『寝ても覚めても』(濱口竜介監督)が、9月1日から公開されます。

ヒロイン・朝子が惹かれる2人の男——つかみどころのない自由人「麦(ばく)」と、優しく包容力のあるサラリーマン「亮平」を演じたのは、デビュー以来7年間、さまざまな監督に求められ続けている東出昌大さん。役者として初めて挑戦した一人二役や、ひとりの男性として朝子の行動をどう考えるかについて、東出さんにお聞きしました。

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振り回される役は大変です(笑)

——今回は一つの作品の中で、女性を振り回す麦と、女性に振り回される亮平という異なる人物を演じましたよね。東出さんというと、『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)のボクちゃんや、『あなたのことはそれほど』(TBS系)の涼太など、女性に振り回される役が多かった印象があります。麦のように女性を振り回す役は、新鮮だったのではないでしょうか?

東出昌大さん(以下、東出):麦を演じている最中というか、撮影に入る前のワークショップなどを通して彼という人間が僕の中に染み込んでいたので「相手を振り回している」という感覚はほとんどありませんでした。というのも麦自身は、振り回しているという実感のないまま人を振り回す人なので。意図的に女性を振り回すような悪い男だったら、この作品自体が成り立たなかったと思うんです。

——役が染み込んでいたとなると、亮平のシーンでは逆に「相手に振り回されている」感覚を強く感じていたのでは?

東出:そうですね。普段、疲れたという言葉は極力口にしないように気を付けているのですが、女性に振り回される役を演じているときは、「今日も疲れたー……」と、口をついて出てしまう瞬間があります。『コンフィデンスマンJP』のダー子にはため息を通り越して、「いやー、してやられた!!」と、家に帰った途端に思い出して怒りがわいてくることもありました(笑)。

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演じ分けより「その人間を生きる」

——心中お察しします(苦笑)。麦と亮平を演じ分けることは混乱しませんでしたか?

東出:撮影が始まってからは迷うことはありませんでした。台本をいただいたとき、「この2人は方言も違うし、歩き方も、声の出し方も違うだろうな」「キャラクターの差異が際立つほど、作品に幅と深みと面白みが増すかも」と、僕はあれこれ勝手に想像していました。それくらい、準備を万全にして現場に臨まなければと気負っていたのです。

ところが、濱口監督から「演じ分けをすることよりも、その人間を生きるという、お芝居の根本に立ち返って考えてください」と言われて。

——難しそうなオーダーですね。

東出:そうですね。なので、撮影前にワークショップの期間を設けてもらったのはありがたかったです。そこでそれぞれのキャラクターを掘り下げることができました。

自分の体を通して麦や亮平の思考を理解することで、2人を“演じ分ける”という気負いがどんどん削がれて行きました。言葉にすると難しいのですが、偶然にも同じ監督、同じスタッフが集まって、まったく別の作品を同時期に撮影していたという感覚に近かったです。

寝ても覚めても / ©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

寝ても覚めても / ©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

「麦は宇宙人」と言われて

——二人がどのような人間なのか、人物像の設定というのは、監督と打ち合わせをして決めていったのでしょうか?

東出:「こういうことを考える人ですよね」「こういう行動を取るタイプですよね」と、監督と膝を突き合わせて、役について話し合うことはありませんでした。

けれどワークショップが始まるとき、「麦はglobeの曲を知らない」という設定を監督がつくってきてくれたんです。みんなでドライブしているとき、麦は大流行していたglobeの曲を知らなくて、車の中にあった彼のカセットをかけると、モンゴル民謡のホーミーが流れるという……。

——ホーミー……。謎の多い人物なんですね。

東出:原作者の柴崎(友香)先生が現場にいらしたときに、「麦にはサイドストーリーがあって、実は宇宙人っていう設定なんです」とおっしゃっていたんです。それが、麦という人物を理解するためのひとつの手がかりになりました。「麦は、いろいろなものを超越した存在なのか」と、腑に落ちたんですよね。

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愛と狂気は紙一重のもの

——亮平についてはどうですか?

東出:誰もが通り過ぎてしまうような小さな出来事にも足を止めて向き合うことのできる、優しい人。でも、強くて優しいだけでなく、人間的な弱さもあるのですが、そこも含めていい男だなと思います。亮平が、朝子にずっと気を遣い続けているのは好きゆえの行動なんですけど、周りからは「なんでこの子のこと、そんなに好きなの?」と不思議がられてしまう。亮平は純粋に、守るものが何かわかっていて、それを守り続けようとしているに過ぎないと思うのですけれど。

濱口監督は「愛っていうのは一種の狂気」と仰っていましたが、朝子に対する亮平の気持ちも、狂気と紙一重のものなんだと思います。

——大切な局面では頭で考えるよりも先に行動してしまう朝子は「こういうところ、自分にもあるかも」という人と、「理解できない」という人に分かれそうなキャラクターです。東出さんは、朝子のような女性をどう思いますか?

東出:朝子に振り回される役を演じていたにもかかわらず、彼女の取った行動を、僕は不思議と憎めないんですよ。人って移ろいやすいものだし、愛は永久不滅と言いきれませんよね?  ずっと同じ人を好きでいられないとか、その人の何に惹かれるのかわからないというのは、多くの人に共通する体験だと思うんです。それは悲しいけれど、人間のいとおしいところでもある。

朝子の行動に対して、共感する人もいればモヤモヤする人もいるはず。正解や感じ方が一つではなく、十人十色の解釈ができるのが大人のラブストーリーだと僕は思います。そして、フィクションを見せられているはずなのに、いつの間にか自分の人生と重なって、価値観が浮き彫りになる。それが、この映画の魅力であり、怖いところでもありますね。

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映画『寝ても覚めても』は9月1日(土)よりテアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、 渋谷シネクイントほか全国公開。

監督:濱口竜介
原作:柴崎友香『寝ても覚めても』(河出書房新社刊)
脚本:田中幸子、濱口竜介
音楽:tofubeats
主題歌:tofubeats「RIVER」(unBORDE/ワーナーミュージック・ジャパン)
配給:ビターズ・エンド、エレファントハウス

©︎2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

後編は9月1日(土)公開予定です。
(取材・文:東谷好依、写真:面川雄大)

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