『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』インタビュー第1回

恋愛は一人でステップアップするものじゃないから…僕が恋愛小説を書いた理由

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恋愛は一人でステップアップするものじゃないから…僕が恋愛小説を書いた理由

1年間だけと決めた不倫の恋や学生時代はモテた女性の後悔、かつての彼女とよく通ったパン屋さんを訪ねた男性……

さまざまな恋愛模様を音楽とお酒のエピソードとともにつづった林伸次(はやし・しんじ)さん(49)による初の小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)が7月に発売されました。

東京・渋谷のワインバー「Bar Bossa」の店主でもある林さんに、小説執筆の経緯や恋愛とバーの関係など「恋愛」にまつわるお話を伺いました。

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ずっと小説を書いてみたかった

——今回、初めて小説を書いてみようと思ったきっかけは?

林:実は20代の頃くらいから小説を書きたくて、何度も何度も書いていたんです。でも、途中でだいたい3分の1くらいまで書いて書けないというのが何回も何回も続いて……。

一方で、結婚前、妻と付き合う前に1ヶ月間、妻に宛てて毎日ラブレターを書いていたんですが「いずれすごい作家になるから。あなたがやることは、通帳の0を数えるだけでいいから」ということを書いてしまっていた。それから付き合うことになって結婚したんですけれど、3~4年に1回のペースで妻に「あれ? 小説書くんじゃなかったの?」と必ず言われるんです。

「書く、書く」って言って、お店を始めたあとも、何回か書き始めたんですけれど、どうしても書けなくて……。どうしようかなあと思って、だったら最初は短い話を書こうと思って、初めはFacebook、今はnoteで週に1回、短いテーマを決めて書いたんです。

週に1回は必ずアップするように決めて、もちろん全然ダメなのもあるんですが、10本とか20本に1本は自分でも「よく書けたな」というものがあって、そういう短編を集めて編集者さん2人に担当してもらってできあがりました。

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——どのくらいかかったんですか?

林:8年くらいですね。完成したあとに1年半くらいかけて書き直しをしました。

——「20代の頃はなかなか書けなかった」ということですが、初めて恋愛小説を書いてみて大変だったことは?

林:人物描写っていうのがまずできなくて……。担当編集さんがそういうのに厳しいというのもあるんですが、うちの妻も厳しいんです。うちの妻はアパレル業界で働いていたんですが、服にすごくこだわりがある。

例えば、男性作家が書いた小説を読んでいても「この歳の女性はこんな服は着ない」と思うと一気に読みたくなくなるらしいんです。僕の小説に対しても「みんな同じ人になっているよ。みんな上品で、ボブカットで知的な感じだよね」と。

まあ、要するに、僕が好きなタイプなんですけれど、好きなタイプの女性でないと書けないし、どうしようかなあと思っていたら、もう一人の編集者さんから「知っている人とか、俳優とかそういう人をそのまま描写すればいいんですよ」とアドバイスをいただきました。

——「この歳の女性はこんな服は着ない」という感覚はちょっとわかるかも……。

林:そのアドバイスに従って書いたうちの一人が田端信太郎さんです。

——えっ、田端さんっぽい人が登場するんですね。探してみます!

林:でも、人物描写というのが本当に分からなくて。妻が「(小説家の)片岡義男の女性の表現がすごくうまい」といっていたので、図書館に行って、片岡さんの本を20冊くらいバーッと借りてきて、出てくる女性の描写を全部書き上げていったんです。

「こういう上品そうな服を着させて、こういう声のトーンにして、体の線のことを書いたら、ちょっとセクシーな感じが出るんだな」というようなことを全部書き上げて表みたいにして、もちろん丸写しはしないですが、参考にしながら書いていきました。

——表にしたんですね。

林:もともとリサーチが好きなんですよね。マーケティング気質というか代理店気質なのかもしれない。

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——奥様の反応は? 最初に読まれたんですか?

林:編集者に渡す前に読んでもらったんですが「面白かったよ」と言ってくれたので、安心して編集の方に渡せました。

——奥さんが最初の読者なんですね。

林:僕はありとあらゆるものに妻のセンスを信じているんです。最近は撮影も多かったんですが、服のアドバイスももらって。僕の趣味は偏っているんですが、妻は割とフラットなので、「妻が面白いって言ってるんだったら大丈夫だな」と参考にしてます。

——反響はいかがでしたか?

林:女子力が高そうな女性や男性が「すごく好き」と言ってくれたのは嬉しかったです。お店にわざわざ感想を言いに来てくれたことも3回ありました。

恋愛が一番おもしろい

——「恋愛」をテーマに書いてみようと思った理由は?

林:僕はどうやら恋愛が好きみたいですね。男性と女性、男性と男性や女性と女性の場合もありますけれど、「人と人が出会って心が通じた」とか「これは言わないほうがいい」とか、いろいろな人の心の動きが出てくるのが恋愛だと思っていて、そういう心の機微の面白さが一番出てきやすいのは恋愛なんじゃないかって。

駆け引きというゲームとしても出てくるし、自分の想いや気持ちが伝わらなかったときには悲しみとかいろいろな感情が出てくる。小説って、少年がいろいろなことをやって成功していく話や他のパターンもいくつかあると思うんですけれど、やっぱり恋愛が一番面白い。バラエティがあると思うんです。

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——相手があることだから「自分」というものが壊されやすいのも恋愛なのでしょうか? 想像がつかないというか、期待や予想がいい意味でも悪い意味でも裏切られる。

林:そうですね。相手があることだから難しいんですよね。自分だけで一生懸命勉強したり、努力したりしてステップアップするものじゃないですからね。

——ストレートな「成長」じゃないですもんね。相手がどう出てくるかわからない。

林:はい。相手によっても違うし、例えば相手が結婚しているか、していないかの状況でも違うし、そういう面白さがたくさんある。

——毎回ダメ男に引っかかっちゃうっていうパターンはあるにせよ、毎回相手は違いますもんね。そうじゃない場合もあるけれど……。

林:そうなんですよ。

——若いころと、ちょっと経験を積んだあとも違う。

林:「セックス」ひとつとっても、すごく年を取ってしまってセックスができなかったり、いろいろな要素が絡んでくるから面白いですよね。そういう意味で、他にはない面白さだと思います。

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※次回は8月30日(木)公開です。

(聞き手・Duniakita編集部:堀池沙知子、撮影:河合信幸)

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