『手に持って、行こう ダーリンの手仕事にっぽん』インタビュー最終回

「ノー」と言わないルールを作ってみる “ダーリン”と多様性のある社会について考えた

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「ノー」と言わないルールを作ってみる “ダーリン”と多様性のある社会について考えた

累計発行部数400万部を超える人気エッセイマンガ『ダーリンは外国人』シリーズの著者・小栗左多里(おぐり・さおり)さんと夫のトニー・ラズロさんが刃物や和紙、器作りに挑戦した様子を描いた『手に持って、行こう ダーリンの手仕事にっぽん』(ポプラ社)が6月に発売されました。

小栗さんの故郷・岐阜県関市を中心に、小栗さんと”ダーリン”ことトニーさんが日常で使う暮らしの道具を手作りしたエッセイマンガです。

小栗さんとトニーさんに話を聞きました。

【第1回】もの作りで自分自身のことが見えてくる
【第2回】「知らないカドっこを知る」“ダーリン”に聞いた幸せのコツ

日本に帰国するたびに思うこと

——小栗さんとトニーさんは、今は息子さんと3人でドイツに住んでいらっしゃるんですよね。人口も環境も国の制度もちがうと思うので、一概には言えないと思うのですが、日本に帰ってきて思うことってありますか?

小栗:私たちが住んでいるベルリンはドイツではないと言われるんです。英語も通じるし、自由だし、外国のバックグラウンドを持つ人が多い。あとベルリンに限らずドイツって実は電車も遅れるし、何かあったときの担当者の対応も悪いし、役所の人も仕事が進んでいなくてもバカンスに入っちゃうし。「ドイツは真面目な国民性で……」って言ったの誰だよ? って思うんですけれど、それでも社会は回っていくんですよね。

だから、日本人は責任感も強くて、自分の仕事だけではなくて他の同僚の仕事もカバーしたり、協力しあったりするのはすごいことだと思うんですが、もう少し肩の力を抜いてもいいんじゃないかなって思います。ベルリンって、不便なことがあってもお互い様と思っているし、月曜日の出社率が低いらしいんですが、みんな察するとか。自分も休むから、他の人が休んでも大丈夫だよ、みたいな。学校の先生も授業が終わればさっさと帰るし、校長先生に同性のパートナーがいても誰も何も言わない。自由な部分が大きいんですよね。

——自分も休むから他の人が休んでも何も言わないっていいですね。自分もゆるくやるから他人のゆるさにも寛大っていい社会だと思います。トニーさんはいかがですか?

トニー:日本のよいところを残しつつ、いろいろ考えてゆくのがいいのかなと思います。ベルリンには、日本と比べて、自分の街はきれいにしていくとか、迷惑をかけずに行動しようと考えている人が少なすぎます。だから結構、迷惑がかかることが多い。バスや電車に乗っていても、座っている人が隣の席に自分の荷物を置き、そしてそれをどかさない、というのも結構ある。人口が少ないから、誰もいないから置けることが多いんだけど……。

「多様性のある社会」のために必要なことって?

——最近「多様性」という言葉も注目されていますが、どうすれば多様性がある社会と言えると思いますか?

トニー:多様性がないほうが決断が早いくて済むんですよね。みんなが同じようなところから、例えば「ご飯に箸を立てちゃいけない」とか、「食後にカプチーノを飲まない」とか、同じ価値観の背景をみんなが持っていれば、当然言わなくてもわかるからそこに摩擦は生じない。

小栗:「なぜカプチーノを飲まないの?」という疑問すら起こらないよね。

トニー:それが長所なんだよね。逆に、多様性の長所というのは、考えつかないアイデアが出てくること。何千回やっていても多様性がなければ、それほど違った結果は出てこないんだけど、多様性があって、その上、それが活かされる環境であれば、違った背景を持った人の違ったアイデアが出てくるんだよね。でも、多様性はそこが難しいところでもあって。

——というのは?

トニー:社会に少数の声があっても、それが言えない、言いたくないということがある。それに価値があると認められるような場であれば、アイデアが出てきて活かされるようになるんだけれど、その状態までに持っていくのがなかなか難しい。

——「少数派」にかなりの負担がかかってしまいますよね。少数派が自分の意見を押し殺してしまう場合もある。

まずは「イエス」と言ってみる

トニー:そう。だからね、よく即興劇でやることなんだけれど、どんな意見や提案に対しても「ノー」と言わないというルールを作る。まずは、「イエス」と言った後で、「でも、僕はこう思うんだけれど……」ってつなげる。そういうのも大事なのかなって思います。いきなり「ダメ!」って言うよりはね。

——「ダメ」って言ったらそこで終わっちゃいますもんね。

小栗:自分が思っている常識を押し付けないというのも大事なのかなと。思春期の頃や最初に受けた教育や知識で、常識が決まっちゃうと思うんですね。そこから抜け出すのがなかなか難しかったりするんですけど、本当に常識って国や地域によって違うんですよね。だから何か「お行儀が悪いこと」をしている人を見たときに「非常識」と瞬間的に決めつけてバシッと切らないほうがお互いのためなのかなと思います。

(聞き手:Duniakita編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)

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