かぞくって、なんだろう?展 リポート

「40歳で里子を預かりたい」 女2人ハウスシェアから始まったかぞくのかたち

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「40歳で里子を預かりたい」 女2人ハウスシェアから始まったかぞくのかたち

6月30日〜7月7日にかけて、東京都豊島区にあるTURNER GALLERY(ターナーギャラリー)で開催された「かぞくって、なんだろう?展」。7月6日には「恋人じゃない二人暮らし〜血のつながりがなくても、恋の相手じゃなくても、家族といってみる〜」をテーマに、トークイベントが行われました。

「非婚出産」をした櫨畑敦子(はじはた・あつこ)さんと、劇作家のオノマリコさん、モスクワカヌさんによるクロストーク。パートナーシップによって里子を預かる構想や、かぞくにおける父親の役割など、さまざまな話題が展開されました。その一部をお届けします。

モスクワさん(左)、オノマさん(中央)、はじはたさん(右)

モスクワさん(左)、オノマさん(中央)、はじはたさん(右)

恋人じゃない2人でも、子どもを育てることはできる

2016年9月から一緒に暮らし始めたオノマさんとモスクワさん。2人の生活は、ルームシェアと何が違うのでしょうか?

「単なるシェアメイトというだけではなく、もっと“かぞく”に近い関係。お互いの人生の面倒臭いことにも関わりつつ、厳しい人生の荒波を共に乗り越えていこう、という共通認識を持っています」(モスクワさん)

2人とも劇作家として働いており、家事に関してはそれぞれ自分の分を行うというスタイルが基本。しかし「風邪を引いたとき、家事を任せられる存在がいる」(モスクワさん)、「帰ったとき電気がついているっていうだけでうれしい」(オノマさん)など、お互いの存在が、精神的な支えになっていることがうかがえました。

一緒に暮らし始めて数ヵ月経った頃、オノマさんはモスクワさんに、ある提案を行います。そのきっかけとなったのは、2017年4月に、大阪市の男性カップルが、全国で初めて養育里親として承認されたこと。「子どもを産むことにそこまで興味がなかった」というオノマさんは、この事例を知り「世界が一個広がった」と感じたそうです。

「自分が子どもを産まなければ、人生において子育てをする機会はない。今まではそういうふうに、イコールで考えていたんです。でも、誰かとパートナーシップを結んで里親になれば、私も人を育てることができるのかもしれないんだなって……。いま私たちは30代半ばですが、40歳くらいで実現できたらいいねと話しています」(オノマさん)

血のつながりがなくても親になるために

オノマさんは、「将来的にパートナーシップ証明書を取って、里親になりたい」という希望を、両親にも話しているそう。両親は前向きな姿勢を見せてくれましたが、一方で「結婚して子どもを産んで……という主流なリクエストは、20代の頃からずっとある」といいます。「離婚してもいいから1回結婚してくれって言われたことがあります。その考え方は謎ですよね (笑)」(オノマさん)

オノマさんとモスクワさんは、共通の友人から「自分に万一のことがあったら、子どもの親権をあなたたちに渡したい」と言われているそう。

「大阪で1人で子どもを育てている女性なんですけど、そう言われると、やっぱりその子のことが気になっちゃうんですよね。たまに大阪に行き、その子の顔を見て『このくらい大きくなってたよ』ってモスクワさんに報告したり……。子どものための貯金も、なんとなく始めています」(オノマさん)

オノマさんの発言に対し「2人を未成年後見人に指定したいという公正証書を、今から作成しておくべき」という意見が参加者から上がりました。母親に何かあったとき、未成年後見人が指定されていなければ、子どもは児童相談所に保護されて、そのまま施設に入れられてしまいます。万一の場合とはいえ、リアリティを持ってシミュレートしておくことが、かぞくになるための第一歩かもしれません。

負の影響を断ち切って、子どもにはつなげない

続くトークテーマは「親の影響」について。誰かと関係を持とうとしたとき、育ってきた家庭環境の影響で、すれ違いが起こってしまうことはままあります。親に暴力を振るわれて育ったことで、関係にズレが生じたときに、暴力でしか解決できなくなってしまうというケースも少なくありません。

「家がしんどいとか、母がしんどいとか、毒親というような言葉をよく耳にするようになりましたよね。毒親と聞いて思うところはありますか?」と櫨畑さんが投げかけると、「うちは結構大変でした」と、モスクワさんが口を開きます。

親が2人そろっていて、経済的にも安定していて、母は専業主婦という、はたから見れば理想的な家族でした。でも、中は戦場。父はお酒を飲んではしょっちゅう暴れていたし、刃物が飛び交うこともありましたね。うちって毒親だったんだ……と認識できたのは、30歳前後になってからです」(モスクワさん)

それを受け「うちも、父親がギャンブルにハマって。物に当たったり暴力を振るったりすることが当たり前にある家庭だったんですよ」と櫨畑さん。「でも、大人になってからそのことを話したら『いや、俺は暴力は振るわない主義なんだ』『子どもに手を上げるなんてあり得ない』って……。子どもの頃の恐怖より、父が覚えていないことのほうが衝撃でしたね」(櫨畑さん)

結婚せずに子どもを育てるという櫨畑さんの選択の背景には、そういった家庭環境も影響しているといいます。

家の中に恐怖がある状況というのは、子どもにとって影響が大きい。悪影響をできるだけ回避したいという思いから、1人で子育てしながら、周りの人に助けてもらう生活を実践しているんです」(櫨畑さん)

子どもが「おとうさん」と認知してもいい

「非婚出産」をして、1人で子育てをしている櫨畑さんと、女性2人で里子を迎え入れたいと話すオノマさんとモスクワさん。3人は今のところ、“かぞく”を築くにあたって、「父親役」や「母親役」という役割分担は必要ないのではないかと考えています。

最後に浮上したのは「かぞくにとって、父親というのはどのような役割を持った存在か?」というテーマでした。京都大学総長の山極壽一(やまぎわ・じゅいち)さんの著書「父という余分なもの——サルに探る文明の起源」(新潮社)を参考文献として挙げ「種つけをした後、育児に関わらなければ、その存在って一体何なんだろう?」と、櫨畑さんは疑問を投げかけます。

「子どもが産まれたとき、ひかりさん(娘)の遺伝子上のお父さんから『認知してもいいよ』ということを言われたんです」と櫨畑さん。しかし、認知すれば、当然ながら扶養義務が発生します。

「そういうことをわかっていないまま、なんとなく認知するっていうパターンはあるんじゃないかなと思いますね。周りから『お前、認知もしてないらしいな』って言われるのかもしれないけど、名前さえ書けばいいというわけじゃないんですよ。

昨年『わたし、産みたい!展』というイベントを開催したときに、認知届は子どもに出させたらいいという話になったんですよね。オノマさんとモスクワさんの例のように、親権を身内以外に渡す場合は別ですが、育てる側がお膳立てをする必要はないんです。子どもが17歳くらいになって、お父さんの席に座ってほしいと思った人がいれば、その気持ちをラブレターとして渡せばいい。母親は選べないけど、父親は選べるんですよ」(櫨畑さん)

(構成:東谷好依)

■かぞく展について
非法律婚、夫婦別姓。非婚出産、特別養子縁組、シェアハウス子育て、LGBT子育て、ポリアモリー(複数性愛)、共同保育、さまざまな人々の暮らしをみながら、新しい、我慢しない「かぞく」を一緒に考える「かぞくって、なんだろう?展」。日本のちょっとめずらしい「かぞく写真」の展示や、そこにうつるかぞくの「系譜図」や「年表」、「思い出の品」が展示されたほか、ぴあフィルムフェスティバル受賞作品のドキュメンタリー映画『沈没家族』(加納土監督)の上映などが行われました。

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