TPO・マニヤン麻里子さんインタビュー 第2回

毎日ガミガミ子どもを叱る夫を見て気づいた、“自分ごと化”の大切さ

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毎日ガミガミ子どもを叱る夫を見て気づいた、“自分ごと化”の大切さ

2018年7月に、国内初の従業員の仕事とプライベートの両立をサポートする従業員向けコンシェルジュサービス「ユア・コンシェルジュ」の提供を本格スタートさせた、TPOのマニヤン・麻里子さん。

起業のきっかけは、自身も仕事とプライベートの両立や日本人男性中心の職場環境に悩んだことだと言います。今回はワーキングマザー時代の葛藤と、働く女性がより輝いて働ける未来への提案について伺いました。

【前回は】会社に従業員向けのコンシェルジュ!?

「どうせ私たちとは違う」と言われて感じた閉塞感

——ご自身も育児をしながら金融の第一線で活躍。さらに、起業までされていますが、その働くモチベーションはどんなところから来ているのでしょうか?

マニヤン・麻里子さん(以下、マニヤン):モチベーションというか、私にとっては働かないという選択肢はありませんでした。一人の人間として社会の役に立ちたいですし、子供達が生きていく社会を少しでも良くしたいという思いや、反骨心があって。

——反骨心?

マニヤン:幼少期をアメリカで過ごしたり、パリの出版社で働いたりした経験のある私にとって、日本での働き方は行き詰まり感をおぼえる場面が多々ありました。でも、そこから逃げずに力を発揮したいという気持ちがずっとあります。

——日本での働きにくさ、どんなところで感じたのでしょう?

マニヤン:小さい頃からですが、何か発言するとすぐに「帰国子女だから」「どうせ私たちとは違うから」と言われることが多くて、窮屈でした。一人ひとり違う人間なのだし、どこで生まれて育ったかなんて仕事においては関係ないと思うのですが……。今後グローバルな働き方が当たり前になったら、そんなことは言っていられないですよね。

これまで、性別格差が少ないと言われる外資系企業を選んで働いてきました。でも結局、おじさまだらけの小さな職場にいたときは「このままでは無理……」と思うことも多かったですね。

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女性がキャリアを積む時の負の連鎖を断ち切りたい

——女性というだけで働きにくいというシーンはありますよね。夫婦間でも企業の中でも、男性が働いているのは当たり前なのに、特にワーママだと“自己実現”のためでしょ? と思われがちです。

マニヤン:本当にそうなんです。給与格差にも表れていますよね。日本に限らず海外でも、男性に比べると女性の給与は2割くらい低く設定されています。おまけにワーキングマザーともなると、やむなく時短でしか働けずに給与が下がってしまったり、早く帰れるように給与の低い仕事に転職しなければならなかったり……。そんな負の連鎖を私は断ち切りたい。

——昨今男性が育児参加をするようになったとはいえ、女性の負担の比ではないですから……。私も子どもがいるので、そのバランスの悪さにため息をつきたくなることがあります(苦笑)。

マニヤン:私の夫はフランス人なのですが、子どもへのぶつかり方の本気度は、こちらが見ていても時々ハラハラしますよ。毎日、母親と同じようにガミガミと子どもを叱っています。彼の性格もあると思いますが(笑)。でも私、それはちゃんと“自分ごと”として子育てを捉えているからだと思うんです。

——自分ごととして子育てできていない男性が多いと感じることはありますか?

マニヤン:もちろん全員がそうとは言えませんが、日本人で育児参加をしているという男性で、保育園の送りは行っても、毎日お迎えに行く人はほとんどいないですよね。

——たしかに、お迎えの場面でお父さんを見かけることは滅多にありません。

マニヤン:お迎えに行くのって、すごく労力を使うじゃないですか。「すみません、先に上がります」と言って途中で仕事を切り上げて、大急ぎで保育園にお迎えに行くと、疲れ果てた子どもが泣き叫んでいて。その子どもをピックアップして帰って、わがままを聞きながら食事の支度をして……。子どもが病気の時に休みを取るのもほとんどの場合が女性です。本当に負担が大きい。だからこそ、それに耐えている女性たちにどんどん「この状況はおかしい」と声を上げていってほしいんです。

小さな声をすくい上げて、広く社会に届けていく

——そうは言っても、なかなか声をあげられない現状もあると思います。どこに伝えればいいかもわからない。マニヤンさん自身は、「ユア・コンシェルジュ」を提供することでどんなアクションを起こせると思いますか?

マニヤン:私は、クッションのように柔らかく企業と個人の間に入って、意思を伝達するような存在になりたいと思っています。企業は「ダイバーシティ」や「女性活躍」って言っていて、それ自体は歓迎すべきなのですが、それを提唱しているのって、年配の男性社員ですよね。

彼らは妊娠・出産の当事者にはなれないし、おそらく育児は専業主婦の奥さん任せ。それでは女性が働きながら育児をすることの難しさが本当には伝わらないと思うんです。

それと同じように、介護をしている人や外国人もそれぞれに違う事情を抱えています。一人ひとりの異なる状況を理解することはとても難しい。でも理解しようとする姿勢や共感、優しさは実現できるはず。

——ここでも自分ごと化がキーワードになりますね。

マニヤン:私たちコンシェルジュの元には、ありとあらゆる悩みや声が寄せられます。働きづらいと悩んでいる人の中には、子育てをしている女性だけではなく、介護をしている人、密かに病気の治療をしている人もいる。そんな人たちの小さな声を、会社だけではなく、広く社会に向けて代弁するのが私たちのこれからの使命だと感じています。

コンシェルジュにお願いできない私たちはどうしたらいい?

——コーポレート・コンシェルジュのような味方がいれば、とても心強いと思います。とはいえ、すべての人がその恩恵に預かれないのが現状です。小さくてもいいので、私たちにも始められるアクションはありますか?

マニヤン:知見を広げることが大切だと思います。普段触れ合う機会のないコミュニティに参加してみると、当たり前だと思っていた世界がほんの狭いものだったとわかる場合もありますし。実は周りのお母さんたちは、家事をもっともっと手抜きしているかもしれないですしね。

——それはSNSを見ていても感じます。家事や育児を生きがいにしてすごく頑張っている人、仕事に集中するためにうまく手を抜いている人。さまざまなカテゴリのコミュニティが存在しています。

マニヤン:日本の歴史にちょっと目を向けてみるのもいいかもしれません。今こんな風に、お母さんたちが孤独の中で仕事と子育てに奔走している状況も、実は高度成長期を支えるためにつくられた直近のモデルに過ぎません。

私の祖母の時代には、家庭にはお手伝いさんがいて、赤ちゃんは時に近所の誰かにお乳を飲ませてもらっていて、夫婦が共働きをしていることは当たり前だった。とても自然に誰かに頼りながら生きてきた時代は、ほんの最近まで普通にあったんです。そんな風に考えれば、今の生きづらい状況だって、あっという間にひっくり返すことができるのではないでしょうか。

(取材・文:波多野友子、撮影:青木勇太)

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