結婚がわからない・プロローグ後編

夫婦の「健全な依存関係」って? 桃山商事・清田代表と考える

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夫婦の「健全な依存関係」って? 桃山商事・清田代表と考える

「ちょっとYOUの結婚話もしちゃいなよ」というDuniakita編集部のY子さんにそそのかされ、エッセイのテーマを考えてきた前回。

いろんなパートナーシップがある中で、結婚というものが一番「親密なもの」とされているのはなぜかという議論をする中で、「私が結婚できない理由」を語り出すY子さん。

後編では、彼女の話を聞きながら健全な夫婦関係とは何かについて考えてみた。

【プロローグ・前編】結婚が特権的に語られるのはなぜ?

夫婦の「健全な依存関係」って?

清田:前回、時間やお金に関するアクセス権を他者に開放したくないから、自分が結婚できないんじゃないかということでしたよね? それって具体的にどういうこと?

Y子:自分が他者によって変えられることが怖いというか。開放と依存ってどこかでつながってますよね。私はいったん開放しちゃうと全力で相手に依存してしまいそうという恐怖があります。それで言うと、夫婦の「健全な依存関係」ってどんなものなのか気になりますね。

清田:確かにバランス問題ってありますね。ルームシェアしてるときは、「同じ家でそれぞれが一人暮らしをしてる」って感じだったんですよ。相手が何時に帰ってくるとか、この日はいないとか、聞けばわかるけど、あえて共有する必要はなかった。

それはそれで自由で楽しいけど、個人的には、予定の共有とか、一緒に朝ご飯を食べるとか、重なり合う部分を増やしユニット感を強めたいという思いもあって。そこは相手とのバランスになってくるけど、あまりバラバラだと「一緒に住んでる意味ないじゃん」って思ってしまって(笑)。なんだかウェットな感覚だけど……。

結婚相手は真逆な人

Y子:清田さんがパートナーシップに対し、そこまでユニット感を求める気持ちってどこから来ているんですか?

清田:なんだろう、背景には「生活(being)が苦手」って感覚があるんですよ。食事を楽しむとか、植物を育てるとか、散歩するとか、そういう日々のことを楽しみたいという気持ちはあるんだけど、どうにもうまくできない感じがあって、目的とか、タスクとか、そういうものがないと行動できない。

自分のこういうところがすごく嫌なんだけど、でもどうしようもなく根づいてしまってる部分もあって、それで生活を「活動(doing)」みたいな感じにしたくて、仲間の力を借りてきたというか……。

Y子:なるほど、その感覚はちょっとわかるかも。

清田:それで言うと結婚相手は真逆で、being重視の人なんですよね。生理的に心地良い時間をずっと過ごしていたい人、というか。眠いときはずっと寝てるし、気が乗らないことはしない。そういうところがカッコイイんですよ。

俺なんか本当にセコセコしてて、早く起きなきゃとか、空いた時間はなるべく本を読まなきゃとか、食事とかも、楽しむというより「手っ取り早く空腹を終わらせたい」ってのがつい先にきちゃうし。

究極的に自分を最優先してくれる人が欲しい

Y子:私もそれに近いところがあるかも。大学生の私、会社員の私って、「何かしら役割がないと社会と繋がれていない不安」があります。役割があるからかろうじてアイデンティティを保っている。

清田:めっちゃわかる……。役割を脱いだときの恐怖とか虚しさってあるよね。かといって役割にまみれていれば幸せかというとそうではなくて、仕事や予定に忙殺されてるときでも虚しさを感じていたり。そういうものが巡り巡って結婚に対する渇望へつながってる部分があるかもしれない。

Y子:結婚に求めてるものって、もはや経済力じゃないですもんね。

清田:そうだよね。これは恋愛相談でよく聞くことでもあるけど、結婚していないことに不安を抱える女性の多くは、一様に「自分が孤独死するんじゃないか」と怯えている。老後に一人暮らしの部屋でひっそりと最期を迎え、死後しばらく経って発見される自分の未来をリアルに語る女性が多いんです。

彼女たちの話を聞いていると、結婚したいという願望の正体って、究極的に言えば「自分を最優先してくれる人が欲しい」って気持ちなのかもって感じる。

Y子:ちなみに清田さんはどうですか。奥さんが最優先になりました?

清田:う〜ん、どうなんだろう。そういう感覚もなくはないけど、例えば桃山商事の活動では森田とワッコが最優先になるだろうし……そもそも「最優先」ってなんなんだろう。具体的にどういうこと?

Y子:「海で私と愛犬が溺れています。どっち助けますか?」みたいな。

清田:本当にそんなシーンあるのかな(苦笑)。実際に溺れていたとしても、そのときの状況がもっと詳細にわからないと判断できないという気も……。

Y子:そういう話をじゃなくて、「あなたを一番に助けるよ」って聞きたいんですよ。それが最優先にして欲しいっていう女性の心理。

清田:ヤバい、前にも同じことを女友達に言われたことがあった(笑)。ただ、自分の中にあるどういう気持ちと似た心理なんだろうとか考えるんだけど、正直あまりピンとこないというか。その気持ちの正体って何なんですかね。

例えば具体的な困りごとが起こったとき、医師とか弁護士の友達がいたりして、「任せとけ!」って助けてくれたらめちゃめちゃ心強いけど……そういうことじゃないですよね。

無条件にまるっと肯定して欲しい気持ち

Y子:それはいわゆる助け合いでは……? 清田さんには助けてもらうメリットがあるし、金銭の授受がなくても相手にも何らかの見返りはあるはず。私が思い浮かべるのは父親との関係です。我が家の話だと、父がエキセントリックな人なので、父親からの安心感とか守られている感が満たされなかった。だから、交際相手にそれを求めちゃうことが多い。「お前がどんなに悪い子でも、俺だけは味方でいるよ」みたいな。

庇護欲にも近いのかな。悪いこととか、間違っていることって、他人に指摘されなくても自分が一番理解してる。だから、正されたいんじゃなくて、それすらも許して欲しいっていうか。自己嫌悪に陥っているときですら、「好きだよ」「大事だよ」ってまるっと肯定して欲しいんです。

清田:そっか。それは確かに重要なことですよね。そういう存在がいなかったら足元がグラついてしまうかもしれない。

Y子:結婚に特権を与えてしまうのは、私の中ではそこかもしれない。「すべてのアクセス権を明け渡してしまいたくなる、でもホントにそれでいいの」と。

清田:Y子さんの中には「他人に踏み込まれたくない」と「全アクセス権を与えたい」というアンビバレントな気持ちが同居しているってことか。

Y子:そうですね……。ただ、すべてのアクセス権を与え合うような関係は長く続かないんでしょうね。大恋愛したカップルがあっさり離婚しちゃったりするのもそれが原因かも。

なぜ結婚、家族にこだわってしまうの?

清田:確かに「継続」が難しそう。瞬間最大風速はすごいものがあると思うけど。全人的に求め合う。許し合う。でもそれもハイカロリーゆえに疲弊していく……。

その一方で、西洋的な意味での「個人主義」というか、私は私、あなたはあなた、独立した他者同士ではあるけれど、協力できる部分は力を合わせてやっていきましょうという考え方もある。その中間というか、バランスが大事なのかもしれない。

Y子:でも、バランス取るのが目的になるのも気持ち悪くないですか? みんなどこか不完全なはずだし。きっちり平等にするならルームシェアとかでもいいじゃんって思えてきました。

なぜ結婚や家族という形を取る必要があるのか。同じお墓に入りたいとか、今そんなに重要じゃないですしね。

清田:確かにそうだよね。例えば渡辺ペコさんの漫画『1122(いいふうふ)』(講談社)はそのあたりの意義を揺さぶっている感じがします。

「公認不倫」という、身体へのアクセス権をパートナー以外にも開放するということと、結婚関係を維持するということ。そこにある矛盾や境界線の問題を描いている作品なのかもしれない。

だって、こっそりやる浮気と公認不倫ではかなり大きな違いがあるもんね……。

Y子:『1122』には、妻のいちこちゃんが女性専用の風俗に行くシーンが出てきます。従来の不倫ともちょっと違う、身体的な欲求だけが満たされればいいのかという問題もありますよね。

清田:最近は「レズ風俗」の存在も注目されていますが、男性向け風俗に比べると、女性向けの性的サービスはまだまだ圧倒的に少ない。結婚してもセックスレスになる人はざらにいるというか、大半がそうかもしれない。性欲のアウトソーシングって、つまり結婚の機能を分散させるってことなのかな。

Y子:家族社会学者の永田夏来さんも『生涯未婚時代』の中で言ってますよね。「性・生殖・愛情」が三位一体となった結婚、いわゆる「ロマンティックラブイデオロギー」は現代にマッチしていないって。

対話を通して結婚についてもっと考えたくなった

清田:って、いつの間にか壮大な話になってる……。そもそも今回は、結婚してはみたものの、そういえば結婚って何だっけ?みたいな疑問がわいてきたから、それをいったん考え直してみようという時間だったのに。

Y子:どんどん骨太な話になってしまいましたね(笑)。でもいいかも! 「結婚したら、結婚をもっと考えたくなった」というテーマでやってみましょう。

清田:自分は一人で考えを深めていくことが苦手なので……いろんな人との対話を通して結婚について考えていけたらと思います。どうぞよろしくお願いします!

次回は家族社会学者・永田夏来さんをゲストに迎えてお送りします。お楽しみに!
(清田隆之/桃山商事)

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