フォトグラファー・ヨシダナギさんインタビュー 第3回

「あなたの顔は普通」と母に言われて ヨシダナギさんが語る期待しない生き方

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「あなたの顔は普通」と母に言われて ヨシダナギさんが語る期待しない生き方

「仕事もプライベートも充実させなくちゃ」「もっとスキルアップしなきゃ」なんて、日々全力で走り続けて、ちょっと疲れていませんか?

そんな女性たちに対して「誰かに拾ってもらいながら、ヌルっと生き抜いてもいい」と話すのは、2009年より単身でアフリカに渡り、アフリカ人の魅力を伝える写真を撮り続けてきたフォトグラファーのヨシダナギさん。

このたび『ヨシダナギの拾われる力』(CCCメディアハウス)を上梓したナギさんに、5回にわたって話を聞きました。第3回は、「諦める力」についてお聞きします。

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【第1回】思わず応援したくなる。ヨシダ流拾われる力
【第2回】騙そうとする人は顔を見ればわかる。選択する力

一気に集中し、一気に飽きる

——著書の中に、蕎麦や食品サンプルにハマりすぎてアレルギーになった、というエピソードが出てきます。そんなに熱中したものを諦めることになってかなり悔しかったのでは?

ヨシダナギさん(以下、ナギ):瞬間の集中力は我ながら相当なものがあるなと思います。でも、そうやって一時的に熱中したものは、大体、時間が経つと飽きてしまうんです。だから「私はカメラにハマってはいけない」と、どこか自制しているところがあります。カメラの面白さを少しでも知ってしまったら、一時的に集中して勉強するかもしれないけど、そのうち撮りたくなくなるかもしれないと思って……。

今はフォトグラファーとして仕事をいただく機会が多く、たくさんの人にお世話になっています。「こんなにお世話になっているんだから、今は撮ることを辞めちゃいけない」という一端の責任感はあって。だから、逆説的ですが、カメラの勉強には熱中しないと決めています。

——スキルアップのために勉強しなければ、という思考にとらわれない。自分の仕事を好きでい続けるために、苦しくない範囲でやるというのは、すごく新鮮な考え方だと思います。

ナギ:私はたぶん、自分を磨くという向上心に興味がないんです。でも、「極めよう」と思って勉強するほうが、モチベーションアップになる人もいると思います。そういうタイプの人は、どんどん学んだほうがいいと思うし、いろいろなことに手を出してみるのもいいと思うんです。ただ、私の場合は、自分のキャパシティ以上に頑張ったり、マルチタスクをこなしたりすることは、諦めたほうがいいんじゃないかなって。

最優先事項は、「苦なく」生きること

——自分がどういうタイプか知るって、30代以降は特に必要かもしれないと感じています。仕事やプライベートがぐんと忙しくなるDuniakita世代の読者にとって時間は大切なものですから。

ナギ:そうですね。自分のことを第三者の目で見て、向き不向きを判断できたら、生きるのがラクになると思うんです。ときどき大学生など若い世代から、悩み相談のメールがくることがあるんですよ。でもそれを見ていると、身の丈以上のことを求めて悩んでいるというか……。

——身の丈以上かどうかって、自分ではなかなか気づけないですよね。

ナギ:そうですね。でも「あなたはこういう性格だから、こういうほうが向いているんじゃない」って、もう一人の自分が悩んでいる自分に言ってあげられたら、遠回りしなくて済むような気がします。

——客観視できる自分を持つということですね。ナギさんは、いつ頃から自分のことを客観的に見られるようになりましたか?

ナギ:私の場合は、向上心がないというのは小さいときからわかっていましたし、集団行動が苦手というのもわかっていました。だから、会社員にはなれないと、割と早く気付いた。アレルギー反応が出たことで、本当に好きになったものや、ハマったものに対しては、あるとき一気に冷めてしまうというのもわかってきました。

私の最優先事項は、好きなことを仕事にすることではなく、苦なく生きること。好きなことを仕事にしたら、たぶん私はそのうち苦しくなってしまいます。それなら、そこそこ好きなこと、嫌ではないことに手をつけるのが一番いいと考えたんです。

「あなたの顔は普通」と母に言われて

——なかなかそこまで割り切れるかな。やはり「頑張れば……」とか「私ならきっとできる」って、自分への期待は捨てきれない。ナギさんの話を聞いていると、いい意味で「自分に期待」していないなって感じます。

ナギ:母の影響が大きいかもしれません。母は自分の娘に対して「あなたの顔は、ずば抜けてかわいいわけじゃない。私はあなたの親だからかわいいと思うけれど、他の人から見たら、あなたの顔は普通」と、真顔で言う人で(苦笑)。

顔の造作だけじゃなくて、できることに対しては褒めてくれるけれど、できないことに対しては辛口でした。母から「あなたってこうよね」と言われると、やっぱり最初は気にするし、落ち込むこともあるんですよ。でも、「確かに、その通りだな」と思うこともあって。母の一言が、自分について考えるきっかけになりました。

——人によっては「お母さんが私の可能性を潰した」と考えてしまう場合もあるかもしれません。でもナギさんは、「お母さんが気付かせてくれた」というふうに、意見の受け入れ方がポジティブですね。言ってくれる誰かがいなくても、自分を客観的に見る方法ってあるでしょうか?

ナギ:「自分に似合う服を着ているかどうか」を客観的に見るところから始めてみてはどうでしょうか。日本人は、「誰かが着ているから、私も着よう」というタイプが多い気がします。

「自分が好きな服だから着たい」というのではなく、「それを着ていれば安心」という考え方だと、いつまでも「これって正解なのかな?」というモヤモヤに振り回されてしまいます。でも「これが好きで、こう着ると似合う」ってわかっていれば余計な悩みからも解放されるのではないでしょうか。

画像提供:ヨシダナギさん

画像提供:ヨシダナギさん

もっと他人に無関心になってもいい

——自分の欲や意識ではなく、人の意見に左右されてしまうということですよね。

ナギ:日本では、ちょっと奇抜な格好をしたら変な目で見られたり、「あの人、派手すぎない?」と言われてしまったりしますよね。そうやって個性を受容できない雰囲気には、違和感があります。社会から排除されてしまう人にも、他人より長けている部分は絶対にあります。そこに目を向けるほうがポジティブだし、救われる人は多いんじゃないかと思うんです。

——ナギさんが知り合うアフリカ人のほうが、日本人より伸びやかですか? アフリカだって、村社会ではみ出せないというイメージがありますが……。

ナギ:アフリカ人は、服装や性格に関して、ヒソヒソと噂をしたりはしませんね。どんな服が好きかとか、性格が暗いとか明るいというのは、その人のパーソナリティであって、いちいち言うことではない。障がい者を差別しているところも、私は見たことがありません。アフリカ人や少数民族を見ていると、血のつながっていない人同士のつながりの強さを感じます。助け合って生きるという感覚が、常にあるのではないでしょうか。

——日本人は、いちいち何か言いたがる人が多いかもしれないですね。「あの人って、ちょっと変わっているよね」とか。

ナギ:「もうちょっと、他人に無関心になってもいいんじゃない?」と提案したいですね。

画像提供:ヨシダナギさん

画像提供:ヨシダナギさん

(取材・文:東谷好依、写真:面川雄大)

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