『生きるとか死ぬとか父親とか』インタビュー第2回

「家族なんだからわかり合える」はウソ? ジェーン・スーさんに聞く、父とか娘とか

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「家族なんだからわかり合える」はウソ? ジェーン・スーさんに聞く、父とか娘とか

「家族」と言うと世間では“家族の絆”や「家族なんだからわかり合える」といった“美談”でもてはやされがちですが、「そうは言っても面倒なときもある」「うちの家族は違うよ」と思っている人も実は多いのではないでしょうか。

コラムニストのジェーン・スーさんが自身の父親についてつづったエッセイ『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社)を上梓しました。

40代半ばに差し掛かったジェーン・スーさんが80歳になろうとしている父と、もう一度「父と娘」をやり直そうと向き合った日々をつづったエッセイです。

「母親とはよく話すけれど、父親とはちゃんと話してないな」「改まって何を話せばいいのかわからない」という人もいるはず。

ジェーン・スーさんに、3回にわたって話を聞きました。

【第1回】「テンプレの家族像にとらわれていたのは自分だった」

「家族だからわかり合える」はウソ?

——Duniakitaではテーマとして「母と娘」は結構取り上げてきたんですが、そういえば「父と娘」はあまり扱ってこなかったんですよね。

ジェーン・スーさん(以下、ジェーン):「父と娘」って家族の中では一番接点がない二人、という人も多いんじゃないかな。そうではない女性ももちろんいるとは思うんですけれど。「父親が何を考えているのかわからない」「最後にしゃべったのはいつだろう?」という人も結構いると思っていて。

傍から見てうまくいっていると思われている家族だって、実際にはそんなことないんじゃないかな、とも思うんです。うちも母が死ななかったら、こうやって父の話をじっくり聞くことはおそらくなかった。まあ、父と話をしていると、最終的に母の話になっちゃうんですけれどね。

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——「親子」の話で言えば、最近は毒親の文脈で語られることも多いと思うんですが……。

ジェーン:これは私見なんですが、毒母の話が出てくるときって、父親の話があまり出てこないですよね。たいてい父親が蚊帳の外。実際、まわりの事例でもそういうのを見てきたりしていて、何か関連があるのかなと思っています。

——確かに、母と娘の関係ばかりクローズアップされますよね。

ジェーン:やっぱり、母親と父親がきちんと互いに向き合えてないと、子どもに過集中するんだろうなと。父親と母親の両方がいる場合は、両方でちゃんと子どもを見ていないと、子どもの育ち方は母親だけの責任というふうに世間からも思われたり言われたりするんだろうなと思っているんです。

——それって親も子どももつらいですよね。

ジェーン:父親としばらくしゃべっていないな、という女性は結構いると思うんですけれど、それこそ病気になったり、認知症が始まったりしたら話せなくなっちゃうので、元気なうちに気軽に話せる関係になっていたほうがいいとは思いますね。私はそれですごく楽にはなったので。

——私もここ最近ですね。父親とちゃんと話せるようになったのは。

ジェーン:父親がちゃんと努力しないですからね。娘と話そうっていう。

——お互いに体力があるうちに話していたほうがよいかもしれないですね。「実家の片付けどうするんだ問題」もあるし。

ジェーン:実家の片付けは元気なうちに少しずつやったほうがいいですよ。どちらかが病気になってからだと「万が一」を予感させてからの話になっちゃってつらくなるので。

——そうですね。精神的にも物理的にも親とは話しておいたほうがいいということですね。

ジェーン:「うちの父親はすごく頑固だから……」と言う人もいるけれど、それも年齢によって変わってくることもあるだろうし、子どもの頃に思っていた父親の印象も、例えば、娘が30歳、40歳を過ぎても一定とも限らないですし。

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——お互いに考えていることも変わるし、関係性も変わりますよね。

ジェーン:「父親からの愛情が感じられない」という話もたまに聞くけど、だったら今から愛情をもってもらえばいいんじゃないとも思うんです。って言いながら、じゃあ私は今回父のことが理解できたか? と言ったら、そんなことはまったくなくて。多分、父も私のことはまったく理解できてないと思うんですよ。

ただ、理解できないっていう状態で互いをそこそこ受け入れるというところまでは、何とかいけたかなって思っていて。「完全に理解し合うこと」の放棄ですよね。

——「理解できないこと」を理解し合ったのかもしれないですね。

ジェーン:理解できないってことで、お互い譲歩し合ったっていうところはあるかもしれないですね。

——他人同士ですもんね。

ジェーン:そうなんですよ。親子で血はつながっていて、似てるところもたくさんあるんですけど、結局は別の個人なので。

——そこに甘えちゃっている部分もあるかなと思って。「家族なんだから、言わなくてもわかり合える」とか。でもそんなことないですよね。

ジェーン:ないですね。まったくないですね。

親が老いていくのがつらい

——進学や就職で強制的に親元を離れると、今までとは違った目で実家や親のことを見ることができるのかな、と思うんですが、ジェーンさんは東京がご実家ですよね。それで何回か実家から出たり入ったりして実家への眼差しというか見方は変わりましたか?

ジェーン:変わりました。現実的な問題として、お金がどんどんなくなっていったのと、父がどんどん老いていくっていうのが同じペースできたので「これはキツイぞ」と思いました。どっちかにしてくれよ、と。

——親が老いていくのを見るのもつらいですね。私も実家に帰るたびに、両親が老いているのを見るのが本当にいやで。

ジェーン:わかります。逆にぶっきらぼうになっちゃったりしますよね。優しくできないっていう。

——そうなんですよ。何でこんなにノロノロしてるんだろう? ってイラッとしちゃう。

ジェーン:そうですね。親の老いが受け止めきれなくてつらく当たっちゃうんですよね。自分も子どもだなと思うんですけれど。

——それって仕方がないことなんですかね? みんな通る道なんですか?

ジェーン:と思いますよ。だけど、どこかでハッと気が付いて、その場じゃなくて、別のところでフォローとかしないと可哀相だよな、と思うようになりました。

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家族のカタチが変わることで露呈する「ひずみ」

——本の最後に「親子は愛と憎をあざなった縄のようだ」と書かれていましたが、自分の家族を振り返っても本当にそう思いました。育ててもらった感謝と愛情もあるけれど、「本当はこうしてほしかったのに……」という思いや親に言われて傷ついたことをいまだに引きずっていて「憎しみ」も同じくらい抱いている。愛と憎しみの絶対値は一緒なのかな? と。

ジェーン:愛と憎悪の絶対値が同じなのであれば、それはただひたすらに幸せなことなんだと思います。すごく幸せな家庭に生まれているってことだと思いますよ。

やっぱり、憎悪のほうが増してしまう環境の人もたくさんいますし、愛のほうだけが増してる家庭というのはちょっと信じられないですけれどあるかもしれない。

まわりの友人や知人を見ていて「おもしろいな」と思ったのは、それまで比較的まんまるな家族というか、大きな問題もないように見えていた家族が、娘が40歳くらいになったあたりでひずみがガクッとくるんですよね。

いままで誰かに極端な負荷がかかっていて、それでまんまる家族に見えていただけだったというのが、露呈するんですよ。

いきなり兄弟間で揉めたり、母と娘の壮絶なバトルが起こったり、親のどちらかが病気をしたことによって姉妹間とか兄弟間の仲が悪くなったりとか、いろいろ起こる。40歳くらいで必ず家庭のひずみがくるのかなと思います。

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——それは私にも心当たりがあります。それまで友だち親子みたいな関係だったのに、娘が結婚するとなったら母親と仲が悪くなった、とか。家族ってそういうものなのかもしれないって思います。

ジェーン:形が変わるときには絶対にひずみは出ますね。うちの場合、それは母が死ぬってことだったし、家族の形態ってどこにも負荷がかかっていないわけではなくて、絶対どこかに何かしらの負荷がかかってその形態になっていると思うので。

誰かがいなくなったり、誰かが出てったりとか形態が変わったりするとブワッと噴出してくるというのはあると思います。

親子は超長い“持ちつ持たれつ”

——例えば、10の家族がいたら10の形があるとは思うんですが、ジェーンさんが今の段階で思っている家族や親子の「定義」ってありますか?

ジェーン:長年の持ちつ持たれつ、腐れ縁って感じですかね。私の場合は、やっぱり親が一生懸命働いてくれたおかげで学生時代にお金の苦労はしなくて済んだ。

その分、今ちょっと世話をすることで向こうが助かるんだったらそうしてあげたいし、”持ちつ持たれつ”ですよね。超長い“持ちつ持たれつ”。

血とか何とかいうよりも、そっちだと思います。

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※次回は5月21日(月)17:00公開です。

(聞き手:Duniakita編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)

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