フローレンス・今井峻介さんインタビュー 後編

夫をイクメンに変える前に知るべきこと「ビジネスライクな家族もあり」

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夫をイクメンに変える前に知るべきこと「ビジネスライクな家族もあり」

夫に育児休暇(育休)を取ってもらいたいけれど、それってやっぱり難しいことなの? どうしたら平等に役割分担ができるのか悩んでしまうこともあるかもしれません。

でも、育休を取ってほしいと思うのはなぜなのか。「取る/取らない以前に考えておきたいことがある」と、認定NPO法人フローレンスで働く今井峻介(いまい・しゅんすけ)さんは言います。

パートナーをイクメンに変えようとする前に考えておきたいこととは?

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男性の育休取得を阻むものは?

——前回は、今井さんが育休を取った理由について聞きました。勤務先のフローレンスでも育休を取っている男性がいるそうですが、まだまだ少数派ですよね。

今井峻介さん(以下、今井):そうですね。厚労省の調査*によると、男性の育休取得率は3.16%でした。ちなみに女性は、81.8%です。

*平成28年度雇用均等基本調査

——78ポイント以上も差が……。どうして男性は育休を選択しないんだろう。収入面の不安でしょうか?

今井:それはあると思いますが、そんなに減らないですけどね。給料の2/3まで育児休業給付金も給付されますし、社会保険料は免除になるし。フローレンスでは半育休と呼んでいますが、育休中に仕事をして収入を確保することもできるんですよね。

月80時間までは育児休業給付金も全額もらえて、働いた分の給与が会社から支払われるので、半育休の場合、最大でフルタイム時の9割くらいの収入を確保することができるんです。

——ならば、会社を休みにくいとか。

今井:それはもちろんあると思います。でも、もしパートナーや両親が末期ガンで長期の入院をすることになったとしたら、上司とのコミュニケーションや職場の雰囲気や環境が理由で会社を休みづらいから普段通り働く、となりますか?そういうときは、ちゃんと休むんじゃないかと思ってます。

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男性の中で育児の優先順位が上がらない理由

——うーん……。育休を取るための権利をちゃんと持っていて、多くの会社にはその制度もあるのに、取らない理由……。

今井:もちろん、人それぞれの事情があるので、一概に言えるものではないと思いますが、男性も育児が大事なことはわかっていて、でも大事だと思いながらも、育児の優先順位が上がらない、ということが結構起きているように思います。

——優先順位が上がらない原因はどこにあると考えますか?

今井:これも、いろいろあると思いますが、個人的に2つ考えていることがあります。ひとつは「こういう家族にしたいというビジョンが明確に描けていない」ことかなと。ビジネスと同じで、ゴールイメージがないと、自分にとっての育児/育休の位置付けがモヤっとしてしまって、その価値を判断できないということが起きるんじゃないでしょうか。で、自分の中の価値判断が曖昧なまま選択を迫られるので、とりあえず周りを見て多数派の価値判断に従っておこう、となりがちなんじゃないかと思ってます。

——もうひとつは?

今井:ビジネス的な言い方をすれば、「家族のマネジメントにコミットしていないこと」かなと。僕は男性全員が育休を取るべきとは全然思ってなくて。家族の形も考え方もそれぞれですし、育休を取るかどうかは選択の自由の問題だと思います。ただ、この場合の選択の自由の主語は、「自分(男性)」ではなくて、本来は「家族」であるべきなのかと。

その「家族」で合意ができているのであれば、育休を取らないことはそもそも問題ではないと思います。なので、問題は「育休を取って育児に参加してほしいとパートナーが思っているのに、それを男性がやらない」という場合なのかなと。それは、家族でコンセンサスが取れていないということで、これはマネジメントの問題なんじゃないかと思います。

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好きな「家族のタイプ」を話し合って

今井:例えばうちの場合、夫婦であれこれ話をしまして、「楽しく暮らそう」を家族の基本方針にしよう、ということにしました。例えば、「ハードワークでガンガン稼ぐ」のと「収入は低いけど定時に帰ってくる」、どちらがいいのかは難しい問題ですが、そういうときに、どちらがより「楽しく暮らそう」に近いのかという視点で考えよう、というような使い方をして、コミュニケーションを取るようにしています。

ひとって仕事やパートナーに関しては、こういうものが好き、こういうものは嫌みたいな話をいっぱいするじゃないですか。だけど、家族に対してはそういう話ってあんまりしないですよね。

——確かに。自分が育った家がベースとしてあって、時間が経てばなんとなくそれっぽくなるのかなと思いがちかも。

今井:家族って最小の組織だと思うんです。例えば、高校のサッカー部があったとして……。そこでは「こんなチームにしたい」とか、「チームの一員としてこうあるべき」って話をしているんだと思うんです。そういう感覚を家族に対して持つようにすると、ちょっとラクになるというか、楽しいものに思えてくるのではないでしょうか。

「ベストの家族」に近づくために

今井:これは持論なので、参考にならないかもしれませんが、自分はベストを尽くしていると思えるかが大事なんじゃないかと思っています。「子どもにとっていいことじゃないって本当は思ってるんだけど、育休はとれません。毎日残業して遅くに帰ります。」それがいいのか悪いのか、仕方ないのかは、ベストを尽くした結果なのかで違うなとも思います。

例えば家が旅館ですごく忙しくていつも時間がない家族がいたとして。でも、時間がない中でも朝ごはんだけはみんなで食べようと決めている。その関わり方が家族にとってのベストだと胸を張れるのであれば、家族の時間が短くてもそれはそれでいい気がします。

——今井さんの家でベストに近づくためにやっていることはありますか?

今井:いろいろ試行錯誤してますが、最近は夫婦でちゃんと話す時間が少ないことに気づきまして。子どもが同じ空間にいると「なになに!」「遊んで!」と言われて構わないといけないので、夫婦の会話というのができないんです。

なので、毎週金曜の夜など定例で夫婦で話す時間を意識して作るようにしています。それをサボるとケンカも増えるので……。

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ビジネスライクな家族もあり

——話を聞いている感じだと、かなりコミュニケーションを取っていると思いますが、ケンカするんですね。

今井:それは、もちろん…あのとき、ああ言ったけど、今は違うとかそういうのってよくあるんですよ。状況は刻一刻と変わりますし、一緒にいる時間以外は、互いに全然別のところで過ごしているから、インプットされるものも違うし。すると、やっぱりずれてくるわけです。だから都度考えや気持ちを確認して、都度目線を合わせないといけないなあと。

——そこまで一緒に考えられる関係は楽しそうです! でも、今井さんみたいな考え方ができる男性って少ないんじゃないかな……。

今井:いやいや、そんなことないです。能力や性格の問題じゃないので。みなさん会社で同じことをやっているじゃないですか。チームで週に1、2回ミーティングとか、月1で部会をやって、メンバーで認識を共有したり、課題解決のために話をしてますよね。会社でやっていることを家庭に適用するだけなので。共働きの人に限って言えば、家族とビジネスライクに付き合うのもいいんじゃないでしょうか。

——ビジネスライクにとは?

今井:家族が会社、夫婦が共同経営者、収益事業が夫婦の仕事それぞれ、育成している事業が子ども。どうやって収益を稼ぐか、稼いだ収益で何をするか、どの事業に投資するか、新規事業何する?とか考えてみたり。会社と同じように、方針を立てて、戦略を立てて、PDCAを回してみる、とか。

——おお。確かにやろうと思えばできそうですね。

今井:そういうことをやる必要があると思うかどうか、それも夫婦間の合意ですよね。そもそも、なぜ家族という組織を組成したのか、という目的に立ち返ってみてもいいのかも。会社と同じで、家族のビジョンをパートナーと共有するところから始めてみる。それができないのならそもそも一緒にいる意味ってあるのかな……。まあでも、そこはいったん信じて家族になったのだから、ちゃんと話すことから始めたらいいんじゃないかなと思います。

(取材・文:Duniakita編集部 安次富陽子、写真:青木勇太)

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