「楽に話せる男友だち」との結婚はうまくいかない【小島慶子のパイな人生】

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「楽に話せる男友だち」との結婚はうまくいかない【小島慶子のパイな人生】

「「πな人生を生きていく。」」
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恋のこと、仕事のこと、家族のこと、友達のこと……オンナの人生って結局、 割り切れないことばかり。3.14159265……と永遠に割り切れない円周率(π)みたいな人生を生き抜く術を、エッセイストの小島慶子さんに教えていただきます。

第4回のテーマは「男友だち」。幼なじみ、学生時代の仲間、同僚、元彼……男性ともいろんな友情のカタチがあるけれど、実際のところうまくいくの? そんな疑問に、小島さんに応えていただきました。

「いい男友だち」が成立するまで

今回のお題は男友だち。男女で友情は成立すると思うけど、友情と恋愛の境目がわからなくなることもありますよね。若気の至りで、うっかり一線を越えてしまうこともあるかもしれません。相手の脳みそをもっと知りたいと思ったら、欲望のやりとりにもなるでしょう。もしかしたら、それで色々あったとしても、よきところで元の距離感に戻れるのが、いい友人なのかも。

別れてから友だちになれない相手というのもいます。この手の人は根っこの部分で女は違う生き物だと思っている節があって、まあだから恋愛もうまくいかなかったんだなという結論なのですが。相手を性的対象として見る以前に、人間としてリスペクトする気持ちがないと長続きしませんよね。恋なんてすぐ冷めるものだし。

どんなカップルも、いつかときめきはなくなり、結婚すればしょっぱい現実と向き合わざるを得ません。夫婦は最終的にはいい友だちとしてやっていく以外になさそうです。では、仲のいい男友だちがみんないい夫候補かというと、そうではないのが難しいところ。恋人とか夫婦という関係を経てからでないと、生涯続くようないい友だちには、なれないのかも知れません。

友人→恋人→疎遠→友人という経路をたどって縁の続いている男友だちなんかは、いいものです。幸せそうに家族の話をしたりするのを見ると、しみじみします。将来、孫ができたら見せてもらいたいものだなあ!と、もはや親戚のような心境です。

「男友だち」との結婚はあり?なし?

でもそんな美しい友愛の情に浸れるのも、所詮は他人だから。利害関係がないから、いいとこだけ見て関係を育むことができるのですね。これが夫だったら違います。お金や住宅や子育てなんかもシェアしているわけですから、なんでもきっちり算盤を弾いて危機管理をしないと生活していけません。

子供の教育なんか、人生哲学のぶつかりあい。互いを根底から否定するような喧嘩に発展することもザラです。そんな真剣勝負の付き合いをしなくてもいいからこそ、男友だちに対しては、静かに幸せを祈れるのです。
 
夫婦のコミュニケーションがうまくいかないのは、生活習慣や価値観の違いが原因です。背景には家庭環境がありますから、しまいには互いの家族のありようにまで文句を言いたくなるという底なし沼にはまっていきます。

以前電車の中で、結婚式場の打ち合わせの帰りらしいカップルが喧嘩を始めました。「そっちの親戚何考えてるの。着付け代を俺たちに払わせるのおかしくない? 予算500万て決めたじゃん」「えー、私もいとこの結婚式に出た時、払ってもらったよ」「その金銭感覚おかしいだろ。うちはもっと堅実だよ。予算オーバーしてるのに着付け代出せとかお色直しのドレスとか非常識だよ」と次第に声が大きくなる二人。これから挙式という時に、相手の一族の金銭感覚まで否定する事態になるなんて、結婚てなんて容赦ないんでしょう。

男友だちとの間には、そんな問題は発生しません。あなたのお母さんて一体どんな子育てしたわけ?とか、うちにはそんなしきたりはなかったぞとか揉めずにすむのです。しかも夫と違って、合意形成をしなくてもいい。意見の違いを楽しんだり、深掘りを避けて話を変えることができます。一方、夫婦間では煮え湯を飲ませ合いながら答えを出していかねばなりません。費やす労力が1000倍くらい違います。だから、楽に話せる男友だちとなら結婚がうまくいくだろうなんて、ゆめゆめ思ってはいけません。友人と夫婦は100パーセント別物です。

異性といい友情を築く秘訣

夫と私は、知り合って20年になります。結婚してから17年。15年間、一緒に息子たちの子育てをしてきました。しかし、彼と友人だった期間はありません。仕事で出会い、そのあと恋愛関係になり、同棲して結婚。もしも仕事ではない形で彼と出会ったら友だちになっていただろうかと想像すると、絶対になっていなかっただろうと思います。恋人か、他人かしかなかったでしょう。

今も夫とは「いい友人」という関係ではありません。もっと切羽詰まった感じです。彼が仕事を辞めたのをきっかけに4年前に一家でオーストラリアに引っ越してからは、出稼ぎ大黒柱の私はいつも崖っぷちを歩いているような気持ちなので、子供達を守るパートナーとして、夫にも全力投球を求めてしまうのです。するとどうしても「なんでわかってくれないの」「ここはもっとちゃんとして」などと注文が多くなってしまいます。

多くを求めないというのが、いい友だちでいる秘訣かもしれませんね。女性同士でも同じです。互いに踏み込み過ぎず、束縛しないことが肝心。もしかして自分は、子育てのためにという理屈をつけて、夫を思い通りにしようとしているんじゃないだろうかと後ろめたく思うことがあります。けれど、夫婦だからこそ腹に据えかねることもあるのです。

私たちは、一体いつ友だちになれるのだろう。子育てが終わったら、見たことのない彼に出会えるのかな。あまりにも近くで、あまりにも深い傷を与えあってしまった夫婦は、もう“ちょうどいい距離”になんて戻れないのかもしれません。その時の二人をなんと呼ぶのかはわからないけれど、きっとまた、彼としかシェアできない風景を見ることになるのでしょう。

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「πな人生を生きていく。」

オンナの人生って結局、割り切れないことばかり。スパッと決断したり解決したりできない自分はダメ人間かも……と落ち込んでいないで、「π(パイ)な人生」を生きる術を身につけよう。小島慶子さんがアラサー世代に贈るエッセイ。

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