薄井シンシアさんインタビュー 第1回

あえて専業主婦を選んだけど、働く友人に嫉妬…あの人の「キャリアの小休止」

SHARE
あえて専業主婦を選んだけど、働く友人に嫉妬…あの人の「キャリアの小休止」

子どもが生まれても絶対にキャリアを手放したくない。そう思う女性は多いのではないでしょうか。その理由は、仕事が好きだからというポジティブな気持ちや、生活水準を落としたくないという現実的な面もあるでしょう。

でも、「今キャリアを中断したら、やりがいのある仕事やポジションにいられなくなるから」という不安があるのなら、そんな不安は捨ててもいいのかもしれません。

17年の専業主婦生活を経て、“給食のおばちゃん”、外資系一流ホテルの営業開発担当副支配人、五つ星のラグジュアリーホテルに勤務、起業家という異色の経歴を持つ、薄井シンシア(うすい・しんしあ)さん。

薄井さんに、キャリアの小休止が本当に人生のデメリットになってしまうのか、全4回に分けて、話を聞きました。

usui1-1

「専業主婦には絶対ならない」と思っていたのに

——薄井さんの著書『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(KADOKAWA)を拝読して、専業主婦を「選ぶ」という感覚が面白いなと思いました。今は仕事と家庭の“両立”と言われる時代ですが、女性はまだ子育てのフェーズでは仕事をセーブすることを求められがち。消極的な理由でキャリアを中断しなければいけないことが多いなと感じます。

薄井シンシアさん(以下、薄井):私も専業主婦には絶対ならないと思っていたのですが……。私が留学生として日本に来たのは1980年代でした。当時は、“女性=良妻賢母”。有名大学を出ても、会社に入ればお茶汲みが仕事。一流企業に就職しても、アシスタントというポジションが与えられて、ゴールは寿退社。就職はその企業に勤める男性と結婚するのが目的、という時代でした。

——その中で、専業主婦になりたくないって珍しい考え方ですよね。

薄井:そうですね。「女性の生き方」をテーマにした女子学生の意見交換会に招かれて、留学生の私がスピーチをすることになったのですが、「なぜみんながみんな、同じように専業主婦を目指さないといけないのでしょうか。私は結婚しても仕事を続けたい」と言ったらすごく反発されました(苦笑)。

——会場はさぞざわついたでしょうね。

薄井:日頃思っていたことを話しただけですよ。「専業主婦になるのが当たり前の生き方だから」と彼女たちが言っていたのを今でも覚えています。そんな風潮には乗りたくなかったので、私は結婚後も働き続けました。仕事がとても面白くて、大好きでしたから。

娘に何かあったら自分を許せない

——そんな薄井さんが専業主婦になるのは、“ツラい決断”だったのでは?

薄井:学生時代の私が知ったら、ショックを受けるかもしれません。実際、30歳で娘を産んだ時も、「自分は仕事と育児を両立しよう」と思っていました。だけど、復職が近づくにつれて葛藤が大きくなっていったんです。

——どんな葛藤ですか?

薄井:彼女をどこかに預けて本当に自分は仕事に行くの?って。自問自答を繰り返しても答えが出ない状態だったのですが、ある時に直感しました。「彼女を育てること以上に、私にとって大事な仕事があるだろうか」と。万が一、娘の人生に問題が起これば、それが私のせいじゃないとしても、私は自分を責め続けるだろうと思いました。自分を許せなくなるぐらいなら、子育てに集中しようと思い、専業主婦が私の仕事になりました。

弁護士の友人をうらやましいと思ったことも

——子どものためというより、今やるべきことを自分で決めたという感覚ですね。

薄井:そうですね。最終的には自分。娘を育てることを一生懸命やって、たとえうまくいかなくても、自分が必死にやった結果なら受け入れられる。それに、やりきった後なら、思う存分仕事に専念できると思ったんです。

——専念する期間は子どもが何歳になるまで、と決めていたんですか?

薄井:いいえ。ただ、わりとすぐに復職するだろうなと思っていました。でも、夫の仕事柄、3年ごとに転勤があって落ち着かなかったので、「復職はまだ無理だな」と諦めるようになりました。

——確かに復職は厳しい環境ですね。

薄井:その頃はまだ腹をくくれていなかったんですね。娘が3、4歳の時でした。弁護士の友人が遊びに来てくれました。ジャケットを羽織った仕事帰りの彼女を見て、うらやましいという気持ちが湧いてきました。でも、外で働く女性と自分を比べても仕方がない。私の現状はこれだから、今を一生懸命やろうと自分に言い聞かせて、10分だけ「かわいそうパーティー」を開きました。

「かわいそうパーティー」は10分

——それは何ですか?

薄井:命名してくれたのは娘です。何かうまくいかない時は、泣いてわめいて、他人のせいにして(笑)。でも、それは10分まで。時間がきたらもう終わり。方向転換しないとただの時間のムダ遣いになりますから。友人のことがすごくうらやましかったけど、その気持ちをずっと持ち続けても何のプラスにもメリットにもなりません。

——薄井さんでも泣いたりわめいたりするんですね。

薄井:誰にでも感情はありますから。グチをこぼすことも大事です。でも、私がグチを聞くのも10分まで。成人した娘が仕事のグチを話す時も10分経ったら、「このままグチを言い続けるつもりなら、その仕事を辞めるか、他のことを考えるか、次に向けて勉強するのか決めなさい」と言います。しょうがないことは、どこかでスパッと断ち切って次の行動をするのみです。

——それ、私もやってみます! 次回は、専業主婦を「キャリア」として考える方法について聞かせてください。

【薄井シンシアさんの著書はこちら】

(KADOKAWA)

(取材・文:安次富陽子、写真:青木勇太)

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

あえて専業主婦を選んだけど、働く友人に嫉妬…あの人の「キャリアの小休止」

関連する記事

編集部オススメ

仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。その両立って本当に必要?改めて問い直すキャンペーンが始まります。

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング