離島経済新聞社統括編集長・鯨本あつこさんインタビュー 第2回

DV夫は地元のおっちゃんに叱られたらいい 「田舎暮らし」がちょっと気になる貴女へ

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DV夫は地元のおっちゃんに叱られたらいい 「田舎暮らし」がちょっと気になる貴女へ

便利なサービスや、楽しいイベントも多くて楽しい東京。でも、他にも居心地のいい場所があるかもしれない……。

前回から引き続き、離島経済新聞社統括編集長の、鯨本あつこ(いさもと・あつこ)さんに、田舎暮らしが頭をよぎった時、移住前に知っておきたいことを聞いてみました。

前回:東京は遊びも仕事も楽しいけれど…

自然に抵抗がないことも大事

——前回は島での暮らしには協力が欠かせないと伺いました。今回はもう少し具体的に、こんな人が島の暮らしに向いているというところを聞きたいと思います。

鯨本あつこさん(以下、鯨本):まずは、誰かと協力しながら生活することが苦痛でないかですね。例えば、自分が困っていることを人に相談できるか、逆に相談されたらそれに乗ることができるか。あと、自然に抵抗がないことも案外大事ですね。天井からヤモリが落ちてくるとか……。地域によって落ちてくるものは違いますが、そういったことは日常茶飯事ですから。

——私も沖縄出身なのでわかるのですが、ゴキブリのサイズ感が違うとかありますよね。

鯨本:そうそう(笑)。都市では害虫などが駆除されている状態が当たり前ですが、田舎ではわりとありのままなので。自然環境の中で暮らしていれば、「虫くらい出るよね」と思える人がいいと思いますね。

——個人的には、島の暮らしに飽きないかという心配もあります。

鯨本:情報社会の中で、新しいモノやコトに触れるのが人生の楽しみだという人だと飽きてしまうかもしれませんが、それはひとつの価値観に過ぎません。毎日見える夕日の色が違うとか、四季を通して感じる風景のちょっとした違いを楽しめる人なら、大丈夫だと思いますね。

『季刊ritokei』で取材させていただいたご夫婦は、都内の仕事をしているんですが、都内には週1回通って、基本的には都内から船で2時間弱の伊豆大島に住んでいるんです。高台にある家からは、海がぱーっと見渡せて、富士山をバックにキレイな夕日が落ちていく。そういう風景を見ながら「今日もいい夕日だったね」という話を毎日しているそうです。

——素敵ですね。

鯨本:別の島に住んでいる若いご夫婦と話をした時も、地域行事のこととか子どもの保育園の話とか、いろんな会話を毎日しているから、暮らしが暇だとか飽きるとか考える暇がない、と。結構みなさん誤解しているんですけど、島ってある意味都会よりも忙しいんですよ。1つの島を切り盛りする人数が少ないから一人当たりの地域の仕事量が多いんですよね。

どこどこの家の嫁…は窮屈じゃないですか?

——忙しいのか……。それはあんまり考えていませんでした。世間体みたいなことはどうですか? 長男の嫁とか。

鯨本:それは地域によりますし、もっと言えば家族単位で違うこと。長男の嫁だからこうだってレッテルを貼ることは少ないと思います。うちも夫は長男ですけど、だからといって世間体が厳しすぎることもありません。

ただ、小さなコミュニティに住んでいれば、どこの家の嫁というのは、長男の嫁という意味だけではなく、どこの一家か? という感じで。地域の全員が自分が所属している一家を把握しているので、それは背負うはずです。そういう意味での人とのつながりを重視する人は島に向いていると思うんですけど、それよりも個の自分を大事にする人はきついかもしれないですね。

——個の自分ですか?

鯨本:個が個のままでやっていきやすいのは都会だと思うんですよ。田舎とか島とかは個だけじゃやっていけません。人とつながってやっと生きていけるという世界だし、その人とのつながり自体が喜びだったりするので。そういう観点で、自分自身の価値観がどちらかというのは知っておいたほうがいいでしょう。

——暮らしてみて気付くこともあるかもしれませんね。一人が好きだったけど、みんなで協力するのって案外楽しいぞとか。みんなでわいわいするのが好きだったけど、逆に個の時間を大事にしたいタイプだったんだなとか。

鯨本:ほとんどの人がそのミックスだと思うんです。極論を言えば、東日本大震災のような時に、隣の人をまったく知らなくて、誰に助けを求めていいかもわからない状態でも、みんなが大変な状態だから遠慮して声をかけられないとか。私はそういうのがすごく怖いと思うんです。でも、田舎だと近所に誰が住んでいるのかすぐにわかる。何かあったらみんな避難所に集まって、誰かがいなくてもすぐに気づいて助け合えたりします。

東日本大震災の時に気仙沼大島に行って、そこで家財も全部流されてしまった方に会いました。彼は「モノはなくなったけど、助け合える仲間がいるからそれでいい」という話をしてくれました。

DV夫は地域のおっちゃんに叱ってもらう

——孤独じゃないって大事なことですね。

鯨本:子育ても同じだと思うんです。お母さんにとって誰も頼る人がいないような孤独な子育ってつらいですよね。不幸な事件や事故の要因にもなると思いますし。田舎であれば周りの人が気づいて勝手におせっかいをしていると思うんですよね。夫のDVが超大変とか、小さな島ならバレますよ。それで地域のおっちゃんに夫が怒られたりする。夫婦だけとか、家族だけとかで生きていくよりも、夫婦や家族の単位でも周囲の人たちと上手に生きていけたほうが柔軟でラクなんじゃないかと思いますね。

——人間関係はどうですか?

鯨本:人間関係の面倒さってどの世界でもありますよね。一人で生きていたって人とつながれない面倒くささがあるし、つながったらつながった分だけ、けんかする時もある。個人的には、コミュニケーション上で発生する問題のほとんどは自分自身の問題だと思うんです。相手がどんなに嫌な人だとしても、自分がその相手をいかに軽やかに解釈するかとか。自分だけで解決できなかったら周りの人に助けてもらうとか。

——なるほど。

鯨本:……と言いながら私も基本的には引っ込み思案。何か衝突が起きた時には落ち込んじゃうんですけどね(苦笑)。でも、家族や周りの人に相談できるから助けられています。その辺のコミュニケーションのなかでも、対面のものは現代の人はどんどん苦手になっているかもしれませんね。ネット上のコミュニケーションは前より得意になっているのかもしれないけど……。でもどちらかというと、リアルなコミュニケーションのほうが生きていくうえでは大事だと思います。

移住前に通って協力者を見つけておく

——移住をリアルに考えた時に知っておきたいポイントについて教えてください。

鯨本:そうですね。島に限らず。どこかの地域に入る時に知っておきたいことは、集落ごとに個性が異なること。例えば、島に5つ集落がある時に、集落同士が仲が悪いというのもよくある話です。地方に移住されるとか島に移住されるということだったら、島の一部の部分じゃなくて、近隣の集落までできれば見た方がいいですね。その中で自分が困った時に助けてくれる人とか、悩みを相談できる人を見つけておく。その人たちと信頼関係を作れたら、移住してもやっていけると思います。

——信頼関係?

鯨本:例えば、何回も通っているうちに「おかえり」と言ってくれる人ができたとか。家探しにしても、本当の田舎だと不動産屋がないこともあるので、結局人づてになることがあるんです。

——不動産屋がない中で家を探すというイメージができない。具体的にどう繋げてもらうんですか?

鯨本:役場がオープンなところは役場の相談窓口に行ってもいいと思うんですけど、たとえば民宿のおじちゃんとかでもいいかもしれません。ご飯を食べている時に話をしてみるとか。「住みたいんですよね。でも家がないんです」と言うと、「あそこ空いているらしいよ」って。島の人たちに信頼されたら、そんなふうに探してくれるパターンがあるんです。

——親切ですね。

鯨本:ただ、それはある意味の合格者だけです。島の人たちは人柄をちゃんと見ていますよ。自分にとって大事なコミュニティに変な人が入ってくるのはさすがに嫌ですよね。あなただったらこのコミュニティにいて欲しいと思ってもらえたなら、周囲の人が協力的に探してくれると思います。

(取材・文:Duniakita編集部 安次富陽子)

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