離島経済新聞社統括編集長・鯨本あつこさんインタビュー 第1回

東京は遊びも仕事も楽しいけれど…離島経済新聞編集長が「地方移住」で思うこと

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東京は遊びも仕事も楽しいけれど…離島経済新聞編集長が「地方移住」で思うこと

東京は出会える人も、経験できることも刺激的で、楽しい。でも、高い家賃に、保活など。将来のことを考えた時、東京で暮らし続けることに不安を感じたことがある人もいるのでは?

今すぐ東京を離れるつもりはないけれど、もう少し視野を広げてみたい。ということで今回は、離島経済新聞社統括編集長の、鯨本あつこ(いさもと・あつこ)さんに、「地方や離島で暮らすってどんな感じ?」とストレートに質問してみました。

季刊ritokei 最新号の「島と結婚 」(左)、取材時鯨本さんが勧めてくれた「島のお母さん」(右)

季刊ritokei 最新号の「島と結婚(21号) 」(左)、取材時鯨本さんが勧めてくれた「島のお母さん(10号)」(右)

島での結婚生活に憧れますか?

——離島とそこに暮らす魅力的な人たちを発信したいという思いから作られているという離島経済新聞。タブロイド版の『季刊 ritokei(リトケイ)』も拝読しました。新聞というと堅いイメージがありましたが、表紙も可愛くて興味深く読みました。今日はよろしくお願いします。

鯨本あつこさん(以下、鯨本):ありがとうございます。

——まず、読者アンケート*の「島での結婚生活にあこがれはありますか?」という質問で「はい」が55%と過半数を超えているのを見て驚きました。それと同時に、自分にも驚いて。

*「島と結婚」読者アンケートについて:2017年6月14日〜6月25日に有人離島専門ウェブマガジン『離島経済新聞』上で実施。有効回答数138人。

鯨本:というのは?

——無意識に「島 < 東京」という図式を持っていたと気付いたんです。それで、東京以外の場所で結婚して、暮らすってどういうことなんだろうと思い始めました。

島には世の中に対するヒントがある

鯨本:なるほど。私たち離島経済新聞社では、全国のいわゆる本土以外の小さい島について取り上げています。本土とは、北海道、本州、九州、四国、沖縄本島の5島のことです。

——沖縄本島も本土なんですね。

鯨本:はい。人口が100万人以上いますし、一般的には本土扱いされることが多いです。私たちが対象としている島の中で最も人口が多いのは淡路島の約13万人。数人とか数十人という規模の島もあります。

——数人って、暮らしが全然想像できない……。なぜ離島に特化しようと思ったんですか?

鯨本:離島経済新聞を始める前に訪れたある島で、「ここは宝島なんだよ」と住人の方が楽しそうに話していて。そういうところに住んでいる人たちの暮らしとか考え方の中に、今の世の中に対するヒントがあるんじゃないかと思ったんです。

理想と現実の壁はやっぱりあるけど…

——視野が広がりそうですね。では、都会で働く女性が島に移住して、暮らしをスタートさせた時にぶつかる理想と現実の壁には具体的にはどんなことがあるのでしょうか?

鯨本あつこさん:アンケートに寄せられた声などから言えることは、よくも悪くも逃げ場がないこと。完全な個になる時間がほとんどないので。

——それはなんとなくイメージできますね。

鯨本:都会暮らしに比べて、周囲とのリアルなコミュニケーションが密な分、「自分の暮らし」というのが希薄になりやすいんです。でも、そもそも「夫婦の暮らし」、とか「地域の暮らし」というのは、「自分の暮らし」だけでは成り立たなくて、「みんなの暮らし」が前提だと思うんです。

そこに溶け込めるかは、自分が中心の考えだと、シフトしにくいかもしれない。いきなりみんなの世界に入っていくとストレスになると思うので、時間をかけてゆっくり、少しずつ溶け込んでいくというのが理想ですね。

今でも当たり前に行われるお米の貸借り

——「みんなの暮らし」とは具体的にはどのような感じなんですか?

鯨本:例えば、台風が来て、食糧などを運ぶ船が1週間来ない時は、ご近所同士で米の貸し借りが行われる島もあります。子育ても周りの人が一緒に、という感じ。自分の家族のことだけを考えるというマインドではない感じですね。

——自分のことで手一杯なのに変われるかちょっと心配です。

鯨本:子どもができれば仕事が増えるのは必然なので、変わらないとやっていけませんよ。私が東京にいたのは、8年ちょっと。当時は独身で、起きている時は仕事ばっかりしていました。仕事というのはお金を稼ぐための仕事。それが、結婚して子どもができて、移住したりすると、家庭の仕事や地域の仕事が入ってきます。しかもそれらは基本的に無給。

——ただでさえ忙しいのに、仕事のジャンルが2つも増えるのか……。確かにパートナーや地域の人との協力が必要ですね。

鯨本:そうですね。離島に限った話じゃありませんが、例えば休日に朝から奉仕活動という名の清掃活動がある地域もあります。土日に自分の予定ばかり入れていたら、「あの人全然参加しないわね」と言われて、居心地が悪くなることも。自分から協力することも大事です。

自分たちで協力し合うのが本来の姿

——都会でも島でも、家庭の仕事、地域の仕事というのは必須になってくると思いますが、島ではそれが“濃い”という感じですか?

鯨本:そうですね。都会は有料サービスや公共サービスが充実していますが、コミュニティ内の人数が少なくサービスとして成り立たない場合は、自分たちでそれをやるしかありません。都会でも自治会、町内会、マンションの管理組合などはありますよね。小規模な単位のコミュニティの中で、そこに属する人同士が協力し合うのが本来の姿だと思いますが、協力し合うことに変わるサービスがあればやらなくてもよい。でも、「都会の便利」さは当たり前ではなく特別だと思っていた方がいいようにも思います。

——たしかに。清掃なんかも業者さんが入ってくれるので、それが当たり前のように感じてしまっていたかも。

鯨本:私も東京にいた頃は慣れすぎちゃっていましたね。私自身は田舎生れで、子どもの頃は、日曜日の朝から廃品回収を手伝ってゴミを集めたりしていました。よく考えたらそれって地域の仕事に子どもが駆り出されているだけなんですけど(笑)。でもそれで、同じ地域の中にどういう人が住んでいるのか知ることができました。

振り返ってみると、成人式など、人生のステップの中で地域の人に祝ってもらうことで、地域にも育てられているという感覚があって。それはとてもよかったと感じています。住む場所は人それぞれ自由なので、島がすごくいいですよって、それだけを押し付けるつもりはないですけど、島暮らしにフィットする方にはどんどん行ってもらえたらいいと思います。人と人とがつながり合う暮らしが存在しているという意味では最たる場所なので。

(取材・文:Duniakita編集部 安次富陽子)

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