『かしましめし』インタビュー第1回

「上京してやっと息ができた」 血縁でも家族でもない“つながり”の可能性【おかざき真里】

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「上京してやっと息ができた」 血縁でも家族でもない“つながり”の可能性【おかざき真里】

心が折れて仕事を辞めた千春、バリキャリだけれど恋愛でつまずくナカムラ、恋人との関係がうまくいかないゲイの英治という”生きること”に不器用な男女3人がごはんを食べることで生き返っていく姿を描いたマンガ『かしましめし』(祥伝社)の待望の1巻が9月に発売されました。

これまで、広告代理店で働く女子のリアルが話題を呼び、ドラマ化もされた『サプリ』や派遣社員とネイリストの副業に奮闘する女性を描いた『&(アンド)』など、都会で働く女性の恋と仕事のリアルを鋭く切り取りってきたマンガ家のおかざき真里さん。

『かしましめし』のテーマや誕生秘話、働く女性のリアル、「生きることとは?」など3回にわたって話を聞きました。

「疑似家族」をテーマにしたかった

——単行本の発売、おめでとうございます。男女3人が一緒にごはんを食べることで救われていく様子を描いた『かしましめし』を描いたきっかけを教えてください。

おかざき真里(以下、おかざき):もともと知り合いの知り合いが男女3人でシェアハウスに住んでいて、面白いなと思っていたんです。

「擬似家族」にも興味があって、シェアハウス的なものを題材に……と考えたのは実は何年も前なんですが、当時(掲載先のマンガ誌である)『FEEL YOUNG』にシェアハウスもののマンガがあったので、テーマがかぶるからと実現しなかったんです。

それでごはんものにしようかなと思って連載がスタートしたんですが、他の連載とも並行しながらだったので単行本になるまでに2年くらいかかりました。

——「擬似家族的なものに興味があった」というのは?

おかざき:新卒で広告代理店の「博報堂」に入ったんですが、会社員だったときは朝から晩まで……というか晩から朝まで会社の人と一緒で。ほぼ村みたいな感覚だったんです。

私自身、実家の親と折り合いがあまりよくないというのもあって、会社やチームの人たちと一緒にいるのが居心地がよくて「そういう単位もありだな」って思っていたんです。

気持ちのいい人たちと一単位作るというか……。家族も、別に血縁や婚姻関係にとらわれなくてもいいんじゃないの?って思っていて、血がつながっていなくても一緒にいたい人たちと単位と作ってもいいんじゃないの?って。

(C)おかざき真里/祥伝社フィールコミックス

(C)おかざき真里/祥伝社フィールコミックス

実家は「遠きにありて思ふ」もの?

——「実家と折り合いが悪い」という女性は結構いる気がします。Duniakitaでも「年末年始に実家に帰らなくてもいいよ」という記事を掲載するとアクセスも伸びるので、程度の差こそあれみなさん「実家」に対していろいろな思いがあるんだろうなと思います。上京して親元を離れてやっと自由になれたという声もチラホラ聞きますね。

おかざき:わかります!逃げてこれてよかったなと……。そういう方、多いですよね、特に上京組は。実家はなくなれとは思わないけれど、「実家は遠きにありて思ふもの」でいいんじゃないかなと思います。

——一定の距離を保つことでうまくいくというのもありますよね。東京は居心地いいですか?

おかざき:はい。人がたくさんいるほうが安心するというか、他人ならではの踏み込まない感じ、でも悩みは共有できるという感じが……。他人はありがたいですよ(笑)。

実家はたまに行くくらいでいいですね。私の場合、すでに「行く」場所であっても「帰る」場所ではないのかなって思います。家族って踏み込んでくるので、他人のまま単位になるのが私の理想郷ですね。

「上京してやっと息ができると思った」

——実家にいるときも早く出たかったですか?

おかざき:出たくてたまらなかったですね。実家は何代も続いた酒造なんですが、私は長女で本当は家業を継がないといけなかった。でも、親に「お前は継がなくていいよ」って言われていたので、実家に頼らないで生きていくためにはどうすればいいか?というのを常に考えていて、手に職をつけないとって思っていました。

——なるほど。それって高校生くらいの時ですよね?その頃から「手に職を」と考えていたんですね。

おかざき:はい。高校生の頃は美大の日本画科に行きたいなと考えていたんですが、食べていけないし、食べていこうと思ったら大学院まで行く必要がある。そこまで親のすねはかじれないなと思って美大のデザイン科に行ったんです。

——上京していかがでしたか?

おかざき:ようやく息ができるって思いました(笑)。地方の進学校に通っていたせいもあって高校時代は、文句を言われないように平均点以上は取っておこうと猫をかぶっていたんです。誰ともサブカルやオタクの話ができなくて孤独でした。

でも、大学に入ったら私よりもっと知識が豊富な人もいるし、むしろ「もっとやってもいいよ」「つきつめていいよ」って言われた。もう嬉しくて嬉しくて……。大学に入って弾けました(笑)。

で、会社に入ったら、お金ももらいながら「もっとやっていいよ」って言われた。こんなに素晴らしいことはないって思いまいした。

——『サプリ』はおかざきさんの会社員時代の経験が色濃く反映された作品だと思います。次回は、会社員時代のお話と、働き女子のリアルについてお話を聞かせてください。

第2回は11月15日掲載です。

(聞き手:Duniakita編集部・堀池沙知子)

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