日本一ちっちゃな働きかた改革 第25回 元Google人事・ピョートルさんインタビュー(第2回)

女性の上司は一番相談しにくい相手? 私たちのモヤモヤが終わらない理由

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女性の上司は一番相談しにくい相手? 私たちのモヤモヤが終わらない理由

「日本一ちっちゃな働きかた改革」
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「フリー編集長」と「社畜プロデューサー」というまったく異なる立場から、Duniakita編集部というチームを運営している鈴木円香(34歳)と海野優子(32歳)。

脱サラした自営業者とマジメ一筋の会社員が、「心から納得できる働きかた」を見つけるため時にはケンカも辞さず、真剣に繰り広げる日本一ちっちゃな働きかた改革が現在進行中です。

海野P(左)と鈴木編集長(右)

海野P(左)と鈴木編集長(右)

「日本の女性はモヤモヤばっかりしてないで、行動しなさい!」

と一喝されてしまった前回。今回も引き続き、モルガン・スタンレーやグーグルで人事のプロとして活躍、現在は起業家兼作家のピョートル・フェリークス・グジバチさんに聞いていきます。

第2回インタビューのテーマは、「モヤモヤするばかりで何も変わらないのは、なぜ?」。仕事は好きだけど、今のままはなんだかな……。「ここでがんばる!」と覚悟が決まらないDuniakita世代の煮え切らない思いについて一緒に考えていただきました。

ピョートルさん(右)に会いに行ったふたり。

ピョートルさん(右)に会いに行ったふたり。

モヤモヤが終わらないのは◯◯が足らないから

海野P:前回、「モヤモヤはもう古い!」って斬り捨てられてしまったんですが、とはいえ、すぐに行動に移せるかといえば、そうもいかず……。

Duniakita読者も私と同じように社会人10年目前後ですが、「ここでがんばる?」「転職する?」「思いきって辞めて他の道を探しちゃう?」……という選択肢の間をグルグルまわり続けて覚悟が決まらない状態にあると思うんです。

鈴木:(モヤモヤ、グルグルを繰り返しているわけですな……)

ピョートル・グジバチさん(以下、ピョートル):ちょっと海野さん、モヤモヤする前に、ちゃんと「振り返り」してますか?

海野P:振り返り?

ピョートル:自分がどんな未来を手に入れたいかは、過去をきちんと振り返らないと見えてこないんです。今日は何をして、何を感じて、何を学んだ、か。今の仕事で何が楽しくて、何が楽しくないか。そんなふうに日々自分の頭の中を整理する習慣がないのだと思いますね。その整理をしないで、「今の仕事はつらーい」というところで立ち止まっている人をよく見かけます。

海野P:(振り返りかあ……そんな余裕ないかも……)

ピョートル:自分に問いかけることは、すごく大事です。人は特に何もしなくても毎日成長しています。わずか1%の成長でも、過去を振り返ることでそれをきちんと認識してあげられるかどうか。認識できれば、それがプライドにつながり1年で3800%を超える成長に積み上がります。そして、過去にプライドを持てれば、未来も描けるようになるんです。

海野P:でも、コツコツまじめにやってはきたけれど、これといって大きな成功体験があるわけじゃないし……。そんなことで満足していいの? その程度の自分の過去にプライドなんて持っていいの?って思っちゃいます。

ピョートル:ハハハハハッ!!! 今の海野さんの発言は、「ザ・日本的」ですね!!!

海野P:(苦笑)

ピョートル:日本人はみなさん「大きな成功」にとらわれすぎていますね。もちろん、大きなビジョンに向かうことは大事ですよ。でもね、魔法は一瞬ごとに起きているんです。それが積み重なって今の海野さんがある。今夜おふろに浸かりながらひとりでよく考えてみて。絶対にあるんです。どんなに小さいことでも、つらい思いをしながら乗り越えてきたことが。それを思い出してみて。

海野P:おふろに入りながら……。やってみます。

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幸せに働き続けるための5段階

ピョートル:人が幸せに働き続けるには、次の5つの段階が必要なんです。

1. 自己認識をする
2. 自己開示をする
3. 自己表現をする
4. 自己実現をする
5. 自己効力感を上げる

【1】は先ほど申し上げた「振り返り」ですね。【2】は、自分が思い描いた未来や理想を手に入れるために「これが欲しい」と相手にきちんと伝えることです。そして【3】【4】で自分が望むような形で自己表現や自己実現ができて初めて、まわりから感謝されたり評価されたりして【5】の自己効力感が上がります。自己効力感とは、平たく言えば自信ですね。

海野P:「自分はこれでいいんだ」と思える肯定感みたいなもの?

ピョートル:そうです。

難しい言いかたをしましたが、要は自分に問いかけながら深く考えるということです。自分は、仕事を通じて何を得たいんだろう? なぜ、それを得たいんだろう? 何をした時に「いい仕事をした」と思えるだろう? 「いい仕事」をするために今は何が足らないんだろう? そんなふうに考えてみる。

海野P:(苦手かも……)

ピョートル:ところが、日本は【1】の自己認識と【2】の自己開示が圧倒的に足りていないんです。そもそも日本人は世界的にも特に自己認識と自己開示をしない民族だと思いますが、働きかたを変えたいならやらなきゃダメですね。

日本では最近「働きかた改革」ってよく言いますけど、この2つをすっ飛ばして全部制度から入っています。オフィスをフリーアドレスにしてみたり、パソコンを持ち出してカフェで仕事したり。はたまた20時でオフィスの電気を一気に消しちゃったり。でも、そんなの全然意味ないですよ。必要なのは「自己認識」と「自己開示」です。

日本の職場には自己開示できる場所がない

ピョートル:特に自己開示に関しては、日本の職場には安心して自己開示できる場所がないんです。

鈴木:要は、働きかたについて、「こうしたい」と要望を言えないということ?

ピョートル:はい。個人個人が今どんな問題を抱えながら働いているか、その問題をどんなふうに解決してほしいと考えているかということを、言葉にして話せる環境がない。そういう環境を用意しないで制度だけ整えても、何の意味があるの?と首をかしげてしまいます。

鈴木:確かに、いつでも、誰でも、言えるようにはなってないですね。

ピョートル:ちょっとお酒を飲んだりしたら、みなさん「こうしたい」とか「これが欲しい」とか自分の要望を言えるんですけど、シラフだと無理(笑)。いまだにノミニケーションがないと自己開示できないのが日本です。

このあいだ、とある大手企業の部長さんと食事をする機会がありましたが、その時の彼も「オレ、絶対に上司にホンネ言わないもん」とこぼしていました。部長レベルでそうなら、その下の社員は絶対に自己開示していないですよね。

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「女性の上司」が一番相談しにくい相手?

ピョートル:安心して自己開示できる場所がないのは男女ともなんですが、特に女性は難しいかもしれませんね。

鈴木:というと?

ピョートル:私は普段からビジネスパーソンが集まるセミナーやコミュニティーに参加していますが、そこで会う女性たちからよく相談を受けるんです。職場の人間関係のこと、待遇のこと、転職のこと、結婚のこと……もう何でも(笑)。でも、どうして私に相談するのかな?と。私みたいな、ヘンな外国人に打ち明けるんだろう?と常々疑問に感じていて。

鈴木:キャリアのことなら、まずは女性の同僚とか先輩が相談相手として浮かびそうですが。

ピョートル:ですよねえ! でも、彼女たちの話をよくよく聞いてみると、「ピョートルさんには言えても、女性の上司には言えない……」と。つまり私みたいな「ヘンな外国人」には自己開示できても、女性の上司には自己開示できないんです。

海野P:それはなぜ?

ピョートル:みなさん、だいたい女性の上司に相談してみた過去があるんです。でも、その時に「私たちだって苦労して我慢してきたんだから、あなたたちもオヤジたちを転がしてうまくやりなさい」というようなことを言われてるんですね。だから、もう女性の上司には相談しない、と。

海野P:ああ、そのガッカリ感、わかるかも……。

鈴木:女性にとって一番自己開示しやすそうに思える、「女性の上司」がもっとも相談しにくい相手になっちゃっているんですね。つまり前回話に出た「男性っぽさ」を過剰に取り込んじゃった女性が上司になっている場合が多い、と。

ピョートル:はい、まさにそういう状況です。

「自己開示」できる環境はどうつくる?

海野P:では「自己開示」を安心してできる環境って、どうすればつくれるんですか? 「腹を割って話そう」としても気づいたら、悪口や愚痴の言いあいになってしまいそうな気もします。

ピョートル:まず心理的安全性を確保することです。最初にチームのメンバーで、生まれ育った環境、家族のこと、抱えている問題……などなど自分はどういう人間であるかをオープンにする。前職のグーグルでは、この心理的安全性の確保にとても力を入れていました。

海野P:何でもオープンにしてOKという雰囲気をつくる、と。

ピョートル:はい。それから、自己開示のコツは「いい質問」をすること。質問には、「時間をムダにする質問」と「人生を変える質問」の2種類しかないんです。相手にうまく自己開示してもらうには、後者の質問をうまく積み重ねていくこと。

例えば、後輩が自分の話をちゃんと聞いてくれないとグチっている人がいたら、「つまり後輩にもっと話を聞いてほしいということですね?」「話を聞いてもらうために何か試しましたか?」「じゃあ、何をしましょう?」と建設的に話していく。最終的には後輩に「◯◯してください」と具体的に依頼できる内容が見えてくるまで質問を繰り返します。

つまり、自分がどんな信念や価値観に基づいて、どんな状態を理想としているか(夢や希望)にまで落とし込んでいく質問が大事なんです。対して「時間をムダにする質問」とは、往々にしてファクトベースで「正しい答え」を求めます。

鈴木:「じゃあ、どうしたい?」というところまで持っていく、と。

ピョートル:はい。相手に自己開示させることが上手な人は、会話を通じて、相手が何らかのギフトを持ち帰れるように意識できる人です。「後輩へのグチ」を「後輩への依頼」に変えられたら、それはギフトを与えたことになりますから。でも、実際にこれを意識できている人は、ほとんどいません。

鈴木:自己開示もスキルなんですね。

ピョートル:そうです、マネジメントスキルです。日本の職場で自己開示が進まない原因の一つに、マネジャーにマネジメントスキルがなさすぎることが挙げられます。ほとんどの日本企業では、上司と部下は1年に1度か2度、期末の評価面談くらいしか1対1で話をする機会がありません。で、しかも部下が普段どんな仕事をしてどんな成果を上げているかを把握していないために、訳わかんない話がされておしまい。

海野P:確かに、そういう職場はすごく多そう……。

鈴木:「モヤモヤするばかりで何も変わらないのは、なぜ?」この問題は結局、私たち一人ひとりに「自己認識」が足らないこと、そして日本の職場に安心して「自己開示」ができる環境がないことの2つが原因なんですね。

次回は、来日から17年目のピョートルさんが「いまだに最大の謎」という、日本女性の結婚と仕事をめぐる問題について聞いていきます。

【ピョートルさんの著書が好評発売中!】

『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』(SBクリエイティブ)

『0秒リーダーシップ』(すばる舎)

(構成:Duniakita編集長・鈴木円香)

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脱サラした自営業者のDuniakita編集長・鈴木円香と、社畜プロデューサー海野Pのふたりが、時にはケンカも辞さず本気で持続可能なワークスタイルを模索する連載です。

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