「なぜ私たちは<おじさん>が嫌いなのか」トークショー・前編

男は40歳で“別れ話”に目覚める 痛々しくも目が離せない「おじさん」とは?

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男は40歳で“別れ話”に目覚める 痛々しくも目が離せない「おじさん」とは?

女の子を目の前にするとつい名言を連発してしまったり、「素の俺を見てほしい」と迫ったりしてしまう“おじさん”たち。

そんな痛々しくも愛らしいおじさんのエピーソードや生態を軽妙に、かつ鋭く綴った鈴木涼美さんのエッセイ『おじさんメモリアル』(扶桑社)がこのたび発売されました。

本書を執筆したきっかけについて「おじさんを好きではあるけれど、同時に痛々しい生き物だなって思っていた。そんなおじさんを集積したら面白いなと思っていた」という鈴木さん。

9月12日に東京・下北沢の「本屋 B&B」で社会学者の田中俊之さん(男性学)と司会に恋バナ収集ユニット「桃山商事」の清田代表を迎えたトークショー「なぜ私たちは<おじさん>が嫌いなのか」が開催されました。

本書に登場するおじさんのタイプについて熱い議論が繰り広げられたトークショーの一部を前後編に分けて紹介します。

“おじさん”の共通点はコミュ力の欠如?

桃山商事・清田代表(以下、清田):司会を務める桃山商事の清田です。今日はこの本に出てくる中からおもしろいおじさんをピックアップしながら進めていきたいと思います。

鈴木涼美(以下、鈴木):まずは「名言引用おじさん」ですね。名言系は男の人に多いですよね。女の人ってあまり名言集とか買わないと思うんですが、おじさんは好きですよね。それで武装しようとするおじさんがいて、単純なタイプだと「ウディ・アレンがこう言ってて……」とか。

ちょっとした名言を自分の言葉として使う“借用おじさん”もいるし、名言ぽく何かを言う“製造おじさん”もいますよね。いちいち名言ぽく言うんだけれど、意味不明なんです。例えば「人は必然はなくて突然でできている」っていうのを勝手に考えて意味わからなく言うおじさん、結構いますね。

田中俊之(以下、田中):会場にいるおじさんも辛いと思うんですが、親切心から率直に言うと“唐突感”ですよね。名言って文脈があって生きるものなのに。

いきなり「会いたい」っていうおじさんも本の中で出てきましたが、コミュニケーション能力が著しく低いというのは、すべてに共通するんじゃないかな。

相手が言ったことを聞いて返すのではなくて、「今日はこれ言ってやろう」って用意してきてるってことですよね。

鈴木:彼の中には妄想しているストーリーがあるのかもしれないですが、こっちからしたら共有していないから唐突感があるんですよね。

『おじさんメモリアル』の著者・鈴木涼美さん

『おじさんメモリアル』の著者・鈴木涼美さん

男は40で「別れ話」に目覚める?

鈴木:次にピックアップした「別れるサギおじさん」もそうなんですけれど、毎回別れ話をして散々ああだこうだやった後に「やっぱり頑張る」っていう寸劇をやるおじさんも唐突感ありますね。そもそも付き合ってないのに。

田中:前提が共有されていないのにね。付き合ってないのにね。

鈴木:すぐに別れ話をするのって、実は高校生の女の子に多いんですよね。「別れる」って言って引き止めてもらうために別れ話をするみたいな。

でも、女の子は19歳くらいで「これは不毛だな」って気づいてしなくなるんですが、男の人は40歳くらいで楽しさに目覚めるみたいで(笑)。

キャバクラでも女の子に「終わりにしよう」って言い始めるんですよ。終わりも何も付き合ってもないし結婚もしてないのに三文芝居をしたがる。

清田:どういう心境なんですかね?

鈴木:ドラマが楽しいんじゃないですか? あとは彼女にとっての自分の価値を確かめたいんじゃないですか? 10代の女の子も自分への愛を確かめたくてそうすると思うんだけれど。

清田:で、言えば「名言おじさん」に戻っちゃうけれど、本の中には「ミスター倒置法」というおじさんも出てきますよね。それもドラマを楽しんでいる?

鈴木:「いろいろ考えたわけで、俺も」という言い方をすると、セリフっぽくなる。不自然ですよね。「考えたんだよ、俺も。責任感とか」みたいな(笑)。ドラマっぽい。

田中:実は次に書く本は「名言からはじめようかな〜」とか思ってたんですが……。やめますね。。

鈴木:名言は言おうとして言うもんじゃないから。名言って、たまたま出た言葉がまわりが名言にするもの。用意している感が寒いなって思います。

社会学者の田中俊之さん

社会学者の田中俊之さん

金でも肩書きでもない俺を見て! 「エセ悟りおじさん」

鈴木:次の「エセ悟りおじさん」*も名言おじさんと似たところがあって。女子大生の時に合コンばかり行っていた時期があったんですが、だいたい相手が電通とかテレビ局の社員が多いんですよね。

*テレビ局、代理店、商社などの企業に勤めて社会的、経済的に成功してその恩恵を堪能しているのに、「広告なんて所詮虚業さ」「こうやって薄っぺらい日常を重ねて何になる?」など人生を憂えて「俺は他のチャラリーマンとは違う」とアピールするおじさん。(会場で配布された資料より)

で、2人になると「チャラチャラした俺だけが俺じゃない」って言い出すんですよ。私は彼のチャラさを愛していたのにめんどくささを出されると引いちゃうなっていうのがあったんですよね。

男の人って、自分の肩書きやお金が自分の魅力ってわかってるわりには、それじゃない内面で女の子を落としたい、お金じゃないところで惹かれてほしいって思っていますよね。

田中:そういう男の人って高学歴で高収入で大人になっても勝っているってことですよね。男らしさを証明する方法って、「達成と逸脱」なんです。

達成は、学歴も収入も高いとか、社会的に認められている価値を獲得するということですね。逸脱は、社会的に認められている価値から離れる。つまり、「ルールを破る俺すごい」ってことなんです。中学校で言えばヤンキーになる男子とかが典型的でしょう。

この会場にテレビ局、広告代理店、あるいは商社などの人がいたら申し訳ないんですが、この手の人たちでタチが悪いなって思うのは「俺は達成と逸脱の両方できるよ」ってことなんです。

真面目なだけじゃないしバカもできる。女性の前でバカやった後は賢ぶりたいというか……。タチ悪いですよね。本人たちの高揚感のためにまわり(女性)も犠牲になる。男子校的な内輪ウケを持ち込んじゃっている。

鈴木:そうですね。

後編は9月21日公開です。

(取材・文:Duniakita編集部・堀池沙知子)

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