ブルーボトルコーヒージャパン取締役・井川沙紀さんインタビュー(後編)

「べき論にとらわれない」彼女がブルーボトルコーヒージャパンの取締役に挑戦した理由

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「べき論にとらわれない」彼女がブルーボトルコーヒージャパンの取締役に挑戦した理由

最近「自分らしく働く」という言葉をよく耳にするけど、そもそも自分らしくって何だろう?

そんな疑問をから行き着いたのは、自分の素直な直感や興味の赴くままに、やりたいことをやろうというシンプルな考えだったと話すブルーボトルコーヒージャパンの取締役、井川沙紀(いがわ・さき)さん。

ブルーボトルコーヒーでは、PRと人事マネジャーとして入社したものの、わずか7ヶ月で「日本法人の取締役をやってみないか?」と勧められて現職に就任。「え、なんで私が?」と一歩引いてしまうなるシチュエーションで、井川さんに「やってみよう」と思わせた言葉とは?

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その瞬間を楽しんでいたら、道が開けた

——前回は、ブルーボトルコーヒーに入社するまでの経緯を聞きましたが、井川さんにも「こうあるべき」という思いがあったことを知って驚きました。

井川:「こうあるべき」と自分で結論づけてしまうことは、誰にでもあると思います。私は、「べき論」に縛られなくなってからはとても楽になりましたよ。自分なりのやり方で進めて良いのだと考えられるようになったり、その時々に心惹かれたことをやればいいんだと思うようになったりました。広報だけやるというような縦割りの仕事だけをするのではなく、もっと全体に関われる仕事の方が向いていると気づきました。

——ブルーボトルコーヒーならそれができる、と?

井川:はい。フリーランスのPRとして独立も考えていた時期だったのですが、前職の先輩から声が掛かり話を聞いてみようと思いました。サンフランシスコのブルーボトルコーヒーにも行ったことがありましたし、ジェームス(創業者のジェームス・フリーマン氏)の考え方も魅力的だと思っていたので、面白い仕事ができそうだなと感じました。実は、立ち上げフェーズに関わって、軌道に乗るまでサポートしようというスタンスだったので、ここでこんな風に働くことになるとは思ってもみませんでした。

——ええ!? 

井川:日本上陸のお手伝いができたらいいなぐらいに思っていました。でも、出店に向けて準備を重ねていくにつれて、「あれもこれもやらなくては」という状態になり、気づいたらいろいろなことを任されていました(笑)。コーヒー豆やカップなどの備品を確認したり、繁忙期の年末年始にはお店にヘルプで入ったりと、まさに縦横無尽に駆け回っていたので、「だったらそのまま取締役に就けばいいじゃないか」と声がかかったのです。

——忙しく働いていると「これって、私がやる仕事?」と思ってしまうこともありそうですね。

井川:特に若い時はそう考える暇さえなかったですね。今でこそ全てに意味があったと思えるようになりましたが、当時は正直どこに向かっているのかもわかっていませんでした。その瞬間を楽しむという気持ちでいたら、道が開けたという感じです。働いていると、「これをやる意味は?」と考えがちなのですが、考えすぎなくてもいいと思いますよ。

ステップダウンも選択肢

——取締役に抜擢された時は、素直に受け入れられましたか?

井川:いえ。私には裏方が向いていると思っていたので、最初は断りました。でも、ジェームスから「とりあえずやってみたら? やってみて合わなければ、前のポジションに戻ればいいじゃないか。サポートもするから」と言われて、挑戦することにしました。合わなかったら戻ればいいんだと思えたんです。

——一般的に「降格」と聞くと、自分まで否定されたような気持ちになりそうですが、「合わなかったら戻る」という選択肢があるのはいいですね。

井川:はい。降格という言葉にはネガティブなイメージがありますよね。引き受けたからには、責任を全うしないと、というプレッシャーもあります。でも、ジェームスは、「君が100%持っている力を発揮してくれることは分かっている。だから、やってみて合わないと感じたら、ステップダウンしてもいいんだよ」と。それで踏み出す勇気を持てました。

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「30代女性のフツーの楽しみ」はないけど

——トップになると、正直、仕事で犠牲にしていることも多いのでは?

井川:多いと思います。プライベートはほとんどないし、家はぐちゃぐちゃだし(笑)。いわゆる、30代の女性が理想とするような暮らしぶりはできていないですね(笑)。でも、だからどうってことはなくて。犠牲にしているものがあるにしても、それ以上に経験ややりがいを与えられているので、今は満たされています。

——日本とアメリカを行き来しているそうですが、実際にはどんな生活をしているんですか?

井川:アメリカに1ヶ月、日本に2週間滞在するというようなルーティンにしています。どちらにも家があるので、聞こえはデュアルライフですが、帰るたびに郵便ポストはパンパン。大掃除から始めなきゃいけないし、クリーニングはいつ出したっけ……なんてこともしばしばあるし、外から見えるほど華やかな生活ではないんですよ(笑)。

湖のほとりをウォーキングしながら会議

——言われてみたらそれが現実ですよね。

井川:アメリカのオフィスで働いていると、同僚は時間の使い方が上手だなと感心することがあります。「夕方5時から8時までは家族時間で仕事は完全にオフだから、連絡しないで。返信もできないよ」とか、湖の周りをウォーキングしながら会議をするとか。「仕事を最優先するべき」や「会議は会議室で行うべき」というような考えは、自分の思い込みだったんだなと気づかされました。

——もっと自由にって、いいですね。

井川:そうですね。そういう意味では、経営者にもいろんな経営者がいていいのだと思います。例えば私は、オーケストラの指揮者のように、スタッフ全員がそれぞれの力を十分に発揮できるような環境作りを心掛けています。旗を振って、「みんなこっちだよ!」というリーダーシップもあるけど、私はそれぞれの役割を尊重しながら、どんなハーモニーを奏でていくかを考える方が自分に合っています。このポジションに就いてから、リーダーシップの形もいろいろあっていいということに気づきました。

何か挑戦したいことがあるなら、あまり「こうあるべき」とか、「自分は前例とは違うタイプだから」というのは考えなくていいと思います。みんなと一緒じゃなくていいし、自分が最初のひとりになるのも悪くないですよ。

(取材・文:Duniakita編集部 安次富陽子、撮影:青木勇太)

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