『生涯未婚時代』永田夏来さんインタビュー 第1回

結婚していない「私」は未熟なの? 少子化だから結婚って言われても困ります

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結婚していない「私」は未熟なの? 少子化だから結婚って言われても困ります

テレビや雑誌の特集でたびたび取り上げられる「結婚できる/できないオンナ」というキーワード。

「どうすれば彼と結婚できるのか」というお悩みは巷にゴロゴロ溢れていますが、結婚って「できる/できない」だけじゃなく「する/しない」で考えてみるのも大事なんじゃないでしょうか?

そんな疑問を携えて、『生涯未婚時代』(イースト・プレス)を上梓した、家族社会学が専門の永田夏来(ながた・なつき)さんに、結婚や家族のカタチについて話を聞きました。

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「結婚できるオンナ」に違和感

——インタビューをお引き受けくださり、ありがとうございます。独身アラサーの身としてはメディアなどで「結婚できるオンナになる」というフレーズを見るたびにモヤモヤしちゃって。今日はそのあたりをぶつけさせてください!

永田夏来さん(以下、永田):すごい勢いですね(笑)。お手柔らかにどうぞ。

——あ、すみません。つい鼻息が荒く……(苦笑)。そもそも「結婚できるオンナ」という言葉に違和感があって。

永田:そうですね。私が思うに「結婚できる」と形容されている人が、あらゆる点で「できない」人よりも優れているという考え方が特に最近強くなっているのかなと思うんですよね。

——そう! なんだか優劣をつけられている気がするんです。それって最近のことなんですか?

永田:90年代の半ばくらいまでは、結婚しないといけないという前提がおかしいんじゃないかという話もあったんですよ。「自分の意思として生涯結婚しない」という「非婚宣言」する人も出ました。ところが、90年代の後半ぐらいから「いつまでも結婚しないというのは、親に甘えているんじゃないか」とか「大人になれない若者の甘えだ」という声が出はじめたんです。

パラサイト・シングルは甘え?

——パラサイト・シングルという言葉が盛んに使われていた頃ですね。

永田:そう。パラサイト・シングルが代表的な例ですが、“親元に寄生して暮らして自分の収入を全部遊びに使う優雅な独身者”という悪いイメージが広まっていました。ところが、その後の若者研究で明らかになるのですが、実際に調べてみるとパラサイト・シングルって世帯の収入が低い人たちが多かったんです。

——どういうことですか?

永田:つまり親にも子どもにもそんなに収入がなくて、2人分の収入、3人分の収入を持ち寄れば、なんとかみんなで暮らしていけるよねという状態だったんです。「親に寄生して独身貴族を謳歌」している人だけがどっと増えたわけではなかった。でも、そちらの情報はあんまり外に出てこなくて。メディアでは、パラサイト・シングルという言葉は、若者に対して理解できない存在だというレッテルを貼るニュアンスで使われることが多かったんです。

——確かに、「大人になりきれない人」のようなニュアンスで受け取っていました。

永田:まだ経済に余裕があった頃は、若い人の新しい生き方も余裕を持って見られていましたが、経済の停滞とともに、非婚化・晩婚化が、少子化という問題に結びつけられるようになってきた。今の日本においては子どもを産むのは結婚していることが前提になっているので、少子化対策というと、結婚が必要だとされてしまいます。だから、「少子化の理由は結婚をしない若者が増えているからだ、けしからん!」みたいな考えが強くなる。

「従来の家族のカタチ」に還る人は応援されるけど…

——(眉間にしわを寄せて)でもそれ、おかしくないですか? 子どもを産むために結婚するわけじゃないですよね。個人の自由として尊重されることなのに。

永田:ほんと、「なんだよそれ」ですよね(笑)。海外を見てみると、たとえばフランスとかスウェーデンでは生まれて来る子どもの半分は婚外子なんですよ。日本とは結婚の仕組みが違うから単純に比べることはできませんが、そうやって自分がやりたいって思う人生として「結婚を選ばない」こともできる。

——婚外子を育てるのは、今の日本ではまだ難しい印象があります。

永田:そうですね。海外では、法の枠に入らない行動をする人が増えてきたら、じゃあ法律の方を変えましょうとなるわけです。しかし日本では法律の方に行動を合わせているという状況ですね。日本で婚外子がとても少ないのも、その例のひとつだと思います。

——同性婚を認めましょうという流れのような?

永田:きちんと法制化されているとは言いにくいですが、同性婚は行動に合わせて仕組みを変えられた例のひとつでしょうね。ただ、それって「従来の家族のカタチ」という枠組みに寄せる人は受け入れるけど、寄せない人は無視するということでもあるんですよね。

——……あ、そうか。やっぱり結婚ありきになってしまうのか。

永田:そう。つまり、血縁関係のある子どもは持てないかもしれないけど、たとえば養子縁組をして、子どもとカップルの3人で暮らすという、家族のカタチがあるとしますよね。それに対して、男だろうが女だろうがやりたい人はやればいいよという考え方は、比較的理解されやすい。でも、それっていわゆるフツーの家族のスタイルに還って行く人たちを応援するっていうことでしょう。それが、「いい/悪い」というより、それも選びたくないという人も同じように応援されてもいいはずなのですが。

——結婚を認めて、行政的にもバックアップするから、子どもを育ててねってギブアンドテイクみたくなってる。

永田:そんな感じになるんですよね。人の生き方の多様性をいろんな方向から応援するのって、他にもいろいろあるんじゃないのかなって思いますよね。

——確かに……。次回は新しい家族のカタチについてもっと教えてください。

(取材・文:Duniakita編集部 安次富陽子、撮影:面川雄大)

【イベント情報】
永田夏来さんと、エッセイストの紫原明子さんの対談トークイベントが開かれます。

結婚と家族にしばられない生き方って? ~「呪い」の言葉をはね返す「白魔法」~
日時:2017年9月22日(金)19:00〜21:00
参加費無料
詳しくはをご覧ください。

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