東京移住女子 第12回

本当に“大事な言葉”だけでいい。青空みたいな「東京男子」と、曇り空の「地方男子」の魅力

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本当に“大事な言葉”だけでいい。青空みたいな「東京男子」と、曇り空の「地方男子」の魅力

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富山の空は、年間を通じて「どんよりとした曇天の空」が多く、晴れ間が少ない。東京のように、抜けるような、能天気なほどの青空が少ない。私には、そんな富山の空はどこか物憂げで、まるで哲学者のようだと思う。そして、男性についても、ぺらぺら話す饒舌というよりは「本当に大事な言葉を発する」イメージがある。

やはりその土地の気候風土は、そこに住む人間の精神形成にも多大なる影響を与えるのだ。

富山の空と、富山男子はよく似ている

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「弁当を忘れてもカサを忘れるな」と言われるほど、富山は雨が多い。そして、青空がのぞく日が少ない。富山出身で県外に出た人のなかには、「あのどんよりとした空がイヤで、早く、外に飛び出したかった」と話す人もいる。だけど、私はこのどんよりとした富山の曇天も嫌いじゃない。物思いにふけっているようで、思慮深く感じる。

富山の空は、イギリスやドイツの空にも似ていると思う。
そして、口数が少なく、シャイと言われる富山の男性像ともよく似ている。

北陸新幹線が開通する前、東京から富山に通っていた頃、空港に着く大まかな時間を伝えると、クルマで、風のようにサッと迎えに来てくれた富山男子。地域おこし協力隊の面接で立山町を訪れた際は、土地勘のない私を町役場までわざわざ連れていってくれ、「面接が終わった頃、また迎えに来るから」と言ってクルマで走り去っていったお友達のお父さん。

またある夜は、うっかり傘を忘れてしまった私に、1本しかない自分の傘をさっと貸してくれた、これまた別の富山男子(あの後、傘なしでどうしたんだろう?)。

軽い無駄口をぺらぺら話すのは富山男子には似合わない。
言葉少なでも、一瞬の行動で心に染み入る優しさを示してくれるのが富山男子の魅力だと思う。

富山男子の暖かい気持ちがじんわりと伝わる

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移住する前、東京から富山をちょこちょこ訪れていた私だが、その度に友人たちが会食の場を開いてくれた。0次会からスタートして、ラストの〆まで、5軒、6軒まわることも。1軒のお店につき、座席が温まったかな?と思う頃には、みんなでぞろぞろと次のお店へ。「30分一本勝負」「45分一本勝負」という、まるで「プロレス方式」で、色々なお店に連れていってくれた。

そして、テーブルいっぱいに用意されるのは、どれも、キトキトのお魚たち。「この寒ぶり、富山の魚は最高級だから食べてみられ」と言われるがまま、口にした寒ぶりの、身はキュッと引き締まりながらも、口の中でとろけるような脂の乗り具合と言ったら……あぁ、こうして書きながらも、あの瞬間を思い出すだけで歓喜のヨダレが出てきそう。

そして、深夜、宴がお開きになると、みんなはそれぞれ、代行を呼んで家路へ。私は、「宿まですぐだし、歩いて帰るから大丈夫」と言っても「深夜の女性ひとり歩きは心配だ」と、富山男子たちの気遣いでタクシーに押し込まれ、宿に無事、送り届けられたものだった。

(そんな富山仲間の心のこもった「おもてなし」のお陰で、東京に戻ってからはスーパーのお刺身があまりにまずく感じて、食べられなくなってしまったというオマケもついたが……)

そして、嬉しかったのが、富山の山海の幸を段ボール箱に詰めてよく送ってくれたこと。ある時は、私の大好きなとろろ昆布や、昆布〆、ご当地カレーの詰め合わせ。春先は、山で採ってきたという山菜の自家製お漬物に、これまたホタルイカの自家製沖漬け。富山名物のます寿司、東京では手に入らない富山の地酒も。

富山男子ってこんなに優しくて、太っ腹なの?と彼らの心のこもった気遣いに毎回、私の小さな胸は感激しまくりだった。

そんな富山好きが高じて東京を脱出することを決めた時も、「富山行き、応援するよ。もし誰かに背中を押してほしいんだったら、いくらでも押してあげるよ」と言ってくれたのも富山男子だった。

東京を離れる前は、そんな富山仲間たちが浅草で送別会をしてくれた。浅草名物、「どぜう」の名店やおでん屋の名店へ。東京を脱出して富山に来てからは、八尾で食堂をやっている友人がそうそうに歓迎会を開いてくれた。どちらの席も、大げさな美辞麗句はなくても、門出を応援してくれている、その気持ちがじんわりと伝わってくるあたたかな宴だった。

熱いものを秘めた富山男子が好きなのだ

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「シャイ」というより、「紳士」だなぁという印象を持った富山男子たち。

少なくとも私の知っている富山男子は、初対面では確かに言葉少なかもしれないが、話してみると面白くて、キラリと光るセンスを秘めている人が多い(ように感じる)。

思うに、北陸の厳しい寒さを乗り越えた魚が、キリリと身が引き締まって美味しいように、人も同じではないかしら? 陽気な太平洋側と違って、日本海の荒波は、寡黙さが似合う。そして、そんな荒波を乗り越えた先には、どこまでもあったかいハートを内に秘めた富山男子が作られる。そう、どんな困難も黙って耐える高倉健のように。

陽気なほど晴れわたった青空も好きだけど、富山の、物憂げな雲が重く垂れ込めた空も好き。

そして、そんな空のように、内には、何か熱いものを秘めているような富山男子はもっと好きなのだ。

写真:松田秀明

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東京移住女子物語

東京に生まれて、大学も就職も、生活の拠点はずっと東京。それが、ひょんなことからキャリアをリセットしてIターン&お一人様で富山県へ。 仕事、暮らし、人間関係……。42歳にして、まったく未知の世界に飛び込んでしまった、おんなお一人様の移住物語である。

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