介護現場のリアル(前編)

それでも僕が介護士になったワケ「“死ぬの怖いよ”の言葉に答えられなかった」

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それでも僕が介護士になったワケ「“死ぬの怖いよ”の言葉に答えられなかった」

高齢化社会が進むなか、ますます介護サービスの需要が高まっています。一方、メディアで報じられる介護業界の話題といえば、入居者への虐待や、介護スタッフの待遇の悪さなどネガティブなものばかり。

すべての介護業界が劣悪な環境なのでしょうか? そして、現場で働く介護士の方はどんな思いで働いているのでしょうか?

そこで、介護職の人材紹介事業(株式会社ウェルクス)協力のもと、介護業界で働く方々に、現場の実態や仕事のやりがいを伺いました。

<介護士プロフィール>
清水翔太さん(27歳):介護業界5年目。有料老人ホームで介護士として勤務し、主に衣食住の介添えや、外出の付き添いを行う。夜勤もあり。
田中義望さん(26歳):介護業界5年目。グループホームで2年半介護士として勤務した後、施設管理者としてデイサービスに転職。現場での仕事から営業、採用まで業務内容はさまざま。

熱い介護の現場を見て心が震えた

――介護職といえば、巷では「3K(=きつい、汚い、危険)」とも言われています。それにもかかわらず、なぜ介護士になろうと考えたのでしょうか?

清水翔太さん(以下、清水):僕、実は中学・高校といじめに遭っていたんです。そのため進路のことなんか考えられる状況じゃなくて……迷っていた矢先に、先生から「親族が特別養護老人ホーム(特養)を経営しているから、見学してみないか」と誘われたんです。

実際に足を運んでみたら、職員の方々の士気が物凄く高かったんですよ。会議でも、どうすれば入居者が快適に過ごせるか、リハビリに役立つか、など熱く語っている姿に感動してしまって。いじめられていたため、“人”との繋がりに後ろ向きだった僕には、印象深く残ったんです。そこから、介護・福祉業界を調べているうちに介護職員が足りていない現状を知り、なんとか助けたいと飛び込みました。

田中義望さん(以下、田中):僕は大学3年生の時、介護のアルバイトをしている友人から話を聞いたことがきっかけです。

彼は在宅介護や訪問介護をしていたんですが、とにかく劣悪な環境だったんです。冷房もなく、部屋も散らかっていて、異臭までする。そこで、おむつ交換などの作業をしなくてはならない。しかも、笑顔で対応しなきゃいけないんです。

それでも、友達は「それでも誰かがやらなきゃいけない仕事なんだよ」と。

当時、介護業界とは無縁だった僕には衝撃的でした。ちょうど雑誌やメディアで介護業界の劣悪さが叫ばれていた時期だったので、僕も力になれないか……と介護の世界に興味を持つようになりました。

施設によって環境が大きく変わる

――実際に介護の仕事を始めて、印象が変わったことはありますか?

清水:僕が働いている施設は、覚悟していたほど悪い環境ではなかったです。室内は冷暖房が効いてるし、業務中にお茶も飲めますし。個人的には、寒いなか外回り営業をするほうがキツイです(笑)。時間外労働もありますが、世間から厳しい目で見られているせいか、定時に上がるよう念を押されます。

僕の働く施設は、最大30人の入居者を受け入れていて、1フロアに約10名のケアスタッフと清掃員1名が配置されており、シフトをもとに1日4、5名で回しています。職員同士のチームワークができていれば負担もさほどありません。いい職場に恵まれたと思います。

田中:実は僕には潔癖症の気があって、排泄のお世話がつらかったんです。でも、「僕がやらなきゃ!」という気持ちがあれば、慣れるんですね(笑)。

人を支える楽しさと、難しさ

――やりがいを感じる部分はどこでしょうか?

田中:利用者の方のQOL*向上に貢献できることにやりがいを感じます。介護士って看護師や薬剤師と同じ「専門職」なんですよ。勉強すればするほど利用者の方にしてあげられることが増えていく、奥の深い職業だなと思います。

たとえば、普段は何気なくやっている歯磨きは、歯を清潔に保つだけでなく肺炎の予防にもなります。他にも、微熱の時の対処法など、学べることは挙げればキリがありません。

僕が勉強して、ケアをして関わっていくうちに、利用者の方の生活が改善していくと嬉しいですね。

*クオリティ・オブ・ライフ…生活の質を上げること。ストレスの緩和など精神的なケアも含む。

清水:やりがい……と言ってしまうのは失礼かもしれませんが、人の「死」に立ち合う機会が多いことで、死生観を変えられました。

僕の職場では家族や本人の希望を聞いて、「亡くなるまで施設にいるか」それとも「病院に搬送するか」を選べる「看取り」という制度があります。最初から「看取り」を希望する方も多いんです。

余命2、3か月の末期がんの方の担当になり、仲良くなったことがあります。いつも気丈に振る舞っててくれたんですが、その方が亡くなる一週間前にふと「死ぬの怖えよ」「死ぬってどんな感じなのかな」って聞かれて……うまく答えられませんでした。

人を支える楽しさと、難しさの両方を痛感した出来事です。死に向き合うことで自分を大きく成長させてもらえた、貴重な経験でした。

メディアではなかなか報道されない、「介護のプロ」としての想いや生きがいが、取材を通じて強く伝わってきました。後編では、私たちが介護を依頼するにあたって、気を付けておくべき心構えを中心に伺います。

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