長谷川晶一氏×中森明夫氏×松谷創一郎氏トークショー「『Cawaii!』とその時代」レポート(後編)

きゃりーぱみゅぱみゅは“ギャルマインド”を引き継いでいる 雑誌『Cawaii!』の盛衰に見る時代の変化

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きゃりーぱみゅぱみゅは“ギャルマインド”を引き継いでいる 雑誌『Cawaii!』の盛衰に見る時代の変化

(亜紀書房)の刊行を記念して、著者の長谷川晶一氏、アイドル評論家の中森明夫氏、(原書房)の松谷創一郎氏を迎えて行われたトークイベントレポート後編。

【前編はこちら】雑誌『Cawaii!』は、なぜ女子高生にヒットしたのか?

一時は40万部を超える売り上げを誇った『Cawaii!』だったが、2000年代に入るとその人気に陰りが見えてくる。2004年には発行部数が20万部近くにまで落ち込んだ。後編では、この衰退の原因をめぐって話が進む。

炎上を回避したがる今の若者たち

『Cawaii!』が衰退を迎えた理由―その大きな原因のひとつは「女子高生たちのマインドの変化」とでも呼ぶべきものであった。

松谷創一郎氏(以下、松谷):『ギャルと「僕ら」の20年史』は、創刊の経緯と最盛期だけでなく、人気が落ちていくプロセスを包み隠さず描いているところが興味深いと感じました。

中森明夫氏(以下、中森):本では、2000年代後半に、女子高生たちに変化がみられるようになっていったと書かれていましたね。

長谷川晶一氏(以下、長谷川):2000年に「カリスマ」という言葉が新語・流行語大賞をとりました。有名なカリスマ店員であり、『S Cawaii!』の主要アイコンでもあった森本容子さん(※)は、「今はショップ店員になりたいという人がいなくなっています。私たちのころはショップ店員になる競争率が高かったけど、今はそれよりも、アイドルや歌手、それから高級店のキャバ嬢になりたいっていう子のほうが増えている」と言っていました。もしそれが叶わないならば、ステータスがある人の愛人になりたいと。その次にやっと、ショップ店員やアパレルメーカーのプレスがあるのだそうです。

※当時はファッションブランドEGOISTの店員。現在はファッションプロデューサー

長谷川晶一氏

長谷川晶一氏

松谷:それはやはり、お金が儲かるかどうか、ということなんですかね。

中森:ショップ店員は、ものすごく過酷で給料も安いんだけれども、昔は憧れという名の「象徴的価値」があった。でも今は、女の子たちがショップ店員にその価値を見出せなくなっているんだと思う。女の子の憧れって生まれた時代の経済状況を露骨に反映するから。

松谷:あと、今の若い人たちは「普通」という基準から外れると何かやばい、という意識が強いんですよね。ファッションでもなんでも。だから、読者モデルやカリスマショップ店員なんていう目立つことをやりたい子が少なくなっているんじゃないでしょうか。

長谷川:突出しないことが、美学になっているんですかね。

松谷:美学というよりも、炎上リスクの回避なんですよね。若い人たちにとっては、いかに加点をするかよりも、減点をしないことのほうが重要になってきているんです。ただ、それって決してプラスにはならないので、実は合理的選択でもなんでもないのですが。

スマホの普及によって渋谷に集まらなくなっていく

ショップ店員や読者モデルが憧れとしての「象徴的価値」を失い、女子高生のマインドが徐々に保守化していく―そんな時代のうねりにさらに拍車をかけたのがコミュニケーション手段の変容であった。

中森:携帯やスマホができてから、編集部に女子高生たちが集まらなくなったっていうのも面白いよね。渋谷にも人が来なくなった。

長谷川:『Cawaii!』が創刊された95年は、女子高生たちがポケベルを持ち始めたばかりだったんですよ。ポケベルがPHSになって、それが携帯、スマホに代わっていった。その通信機器の普及と雑誌の衰退は、すごくリンクしているような気がしますね。

松谷:みんながスマホを持ち始めると、LINEが登場して、あっという間に広がった。雑誌というのは、ファッションスタイルをフックに、読者同士がコミュニティをつくってコミュニケーションをとるじゃないですか。でもLINEができたあとは、友達やグループ同士、見知らぬ人とまで、一瞬でつながれるようになった。

中森:コミュニケーションにおいて、雑誌という媒介を必要としなくなったってことか。カルチャーがいかに通信手段に依存しているかがわかるよね。

ギャルは消えたのか? その復活の兆しとは

こうして『Cawaii!』は2009年には休刊を余儀なくされ、『egg』など他のギャル雑誌も次々と休刊を発表していった。雑誌の休刊とともに、街からもギャルが徐々に姿を消した。ギャルはもう、過ぎ去った時代の産物でしかないのだろうか? イベントの終盤では、松谷氏の一言をきっかけに、「ギャルのこれから」が語られた。

松谷:僕は、ガングロ的なものって、実はハロウィンのなかに生きていると思うんです。

中森・長谷川:おお、その心は?

松谷:どちらも「非日常」に根付いているんですよね。

中森:ああ、つまりガングロとして非日常を生きるのと、仮装をしてその日限りだけれど、とてつもないことをやるところが共通しているってことか。

でも、ハロウィンはガングロに比べてまだ「お行儀がよい」っていう感じがするなあ。昔だったらハロウィンの日の渋谷のように人がいっぱいだったら乱闘でも起こって、人が死んでいたはず。でも今はすごく安全で、文化として洗練されているよね。

もちろん人は死なないほうがいいけど、でも「表現者」として巨視的に考えた場合、ガングロやゴングロが持っていた危険性という魅力が失われてしまっているんじゃないかな、という気がする。「彼女たちはどこまでいけるのか」という期待と表裏一体の危険性が脱色されて、仮装文化として落ち着いてしまったんだと思う。

松谷:ただ、文化が広がるというのは、そういうことだと思うんですよ。一言でいえば「浸透と拡散」が起こったのだと思います。

中森:平和なのはいいんだけど、未分化な文化、そしてそのパワーが失われてしまった気はするな。

左:中森明夫氏、右:松谷創一郎氏

左:中森明夫氏、右:松谷創一郎氏

長谷川:見た目の上でのギャルは絶滅しつつありますが、「ギャルマインド」はまだ生きていると思います。本の最後に「みちょぱ」という現役人気ギャルモデルの子へのインタビューを引用しているんですが、彼女の話が昔のギャルと同じテイストだなと感じて。

彼女は「ギャルマインドがある限りはギャルです。ギャルマインドというのは、やりたいことをやるってこと。それも過剰にやる。ここでいいだろう、ってところから、さらに踏み越えていくことなんだ」ということを語っていて、当時16歳の彼女の言葉に衝撃を受けたんですよね。

松谷:炎上リスクをみんな気にしているから、みちょぱさんのように、自分がやりたいことを過剰にやる子が少ないんですよね。そういうものをギャルマインドと言うならば、今それを体現しているのはきゃりーぱみゅぱみゅじゃないでしょうか。

中森:あと今の小学生でめちゃくちゃオシャレな子にはギャルの面影があるよね。それって、若いころにギャルだったママの影響なわけです。だから今に女子小学生のなかから、すごいカリスマがでてくるんじゃないかな。

長谷川:みちょぱさんのお母さんもギャルなんだそうです。あの世代は、「遊ぶ」ということの楽しさをよく知っています。だから、子育てのなかで、自分が楽しかったことを子どもにもやらせてあげたい、という気持ちがある。ギャルマインドは、そうやって伝わっていくものなのかもしれませんね。

『ギャルと「僕ら」の20年史―女子高生雑誌Cawaii!の誕生と終焉』

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