どんぐり発達クリニック院長の宮尾益知さんインタビュー(前編)

片付けられない、時間を守れない…大人のADHDの特徴と、女性特有の症状とは?

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片付けられない、時間を守れない…大人のADHDの特徴と、女性特有の症状とは?

近年、認知が広まり始めた「大人の発達障害」。いくつかに分類されるが、例えば「ADHD(注意欠陥多動性障害)」は「片付けられない」「時間を守れない」などの特徴がある。ネット上で「アスペ」と略されることも多い「アスペルガー症候群」(以下、アスペルガー)の症状の一部は、場の空気を読んだり、相手の気持ちを理解したりすることができないというものだ。

先に挙げたような行動の傾向を知り、「もしかしたら自分はADHD?」「恋人がアスペルガーかも」と感じたことがある人もいるかもしれない。(講談社)の著者であり、どんぐり発達クリニック院長の宮尾益知(みやお・ますとも)さんによると、ADHDとアスペルガーは症状に似ている部分があるという。宮尾さんへのインタビュー前編では、両者の特徴や、性別による違い、ADHDの症状などを伺った。

ADHDはもともと“男性の病気”と考えられてきた

――ADHDはどういった発達障害なのでしょう。

宮尾益知さん(以下、宮尾):主に、「不注意」「衝動性」「多動性」の3つに分けられます。女性の場合、「多動性」が顕著なケースは男性より少なく、「不注意」と「衝動性」が目立っている場合が多いですね。

「多動性」の症状はわかりやすいですが、「不注意」と「衝動性」は「怠けている」「単なる性格だ」と誤解されることもあります。また、ADHDは長いあいだ男性の発達障害だと考えられてきたので、診断基準は男性をイメージして作られており、女性は診断されにくいという問題がありました。女性と男性では、障害の受け入れ方や、治療による気持ちの変化、症状が生じるメカニズムや治療法まで全く違います。そういった点に着目した書籍を出したいと思い、『女性のADHD』を執筆したのです。

――女性のADHDには、どのような症状が多いのでしょうか?

宮尾:まず、「不注意」からくる症状として、物事の段取りが苦手な人が多いです。例えば、1時間でどれだけのことができるかを考えるとき、料理、片付け、着替え、化粧の全部をできると思ってしまう。それから、道を頻繁に間違える人も多い。いつも降りる駅の改札が工事中などで通れないため、反対側の改札から降りなくてはならない状況になったときに、どう行けばいいのかわからなくなってしまいます。建物や道の裏側を想像できないのです。

「衝動性」の症状のひとつは、「無駄なものを買ってしまう」ことです。安いからといって、同じようなものを次々と買ってしまう。また、会話の際も、相手の話が終わらないうちに自分が話し始めてしまったり、相手を傷つけることをバッと言ってしまったりする人もいます。結婚などの重大な決断も、よく考えずにポンとしてしまう人が多い。そしてADHD当事者が母親の場合、衝動的に子どもを叱りがちです。

男性と女性で異なる、治療への向き合い方

――女性と男性では、治療はどう変わってくるのですか。

宮尾:男性は「今が良ければすべて良し」という考え方をする人が多いのですが、女性は「過去の自分が今の自分につながっている」と考える傾向があります。そのため男性は、治療薬を飲んで症状が改善されると満足しますが、女性は過去の出来事を思い出すんです。辛かったこと、悲しかったこと、できなかったこと、人に言われたこと……そして、自己否定やうつ状態に陥ります。だから、単に治療薬を投与するだけでなく、カウンセリングなどのケアも必要になります。

――治療をすることで、ADHDの女性はどのように気持ちが変わるのでしょうか?

宮尾:治療薬を飲み、それまでできなかったことができるようになると、強迫的に完璧を目指そうとします。例えば、片付けができるようになったとすると、「ちょうどいい加減」がわからないので、家の中をモデルハウスのようにしてしまう。少しでも散らかっているのが許せなくなって、苦しくなってしまうんですよね。そのため、「まあこのくらいでいいかな」というイメージを作ることが大切です。目標とするレベルを高くし過ぎないようにするのです。

――大人の女性が「自分はADHDかもしれない」と思ったときは、どうすれば良いのでしょうか?

宮尾:成人の発達障害を診察するクリニックに、まずは相談してみて下さい。以前は少なかったのですが、現在は増えつつあります。

また私は、『女性のADHD』の前に、(講談社)も刊行しています。この本の感想に、「私は女性でADHDと診断されているのですが、『女性のアスペルガー症候群』に書いてある症状がすべて当てはまります」というコメントがありました。ADHDとアスペルガーは症状がとても似ているため、自分がどちらなのかわからず、戸惑っている人も多いのです。『女性のADHD』では、「アスペルガーとどう違うのか?」という点も詳しく書いてありますので、自分は発達障害なのではないかと思う方は、両方を読んでみると疑問が解消されるかもしれません。

ADHDは衝動的、アスベルガーはこだわりが強い

――ADHDとアスペルガーは、どのあたりが似ているのでしょうか。

宮尾:ADHDとアスペルガーには、「片付けられない」という共通した症状があります。アスペルガーの場合は、きっちりやらないと気が済まず、一つ一つものを並べていくのに時間がかかりすぎて終わりません。一方のADHDは、なんでも雑にどんどん収納してしまい、結果的に片付かない。結果は同じでも、そこに至るまでの行動は異なります。

「買い物が下手」という共通の症状も、メカニズムは違っています。ADHDの人は衝動的に多くの物を買ってしまう。安く買いたい、こんなタイプがすきは変わりませんから、買ってしまって家に帰ると同じような洋服が何着もある、といった状況になります。

アスペルガーの人はこだわりがありますから、衝動買いはしません。「こんなイメージ」と思っている洋服があらわれるまで、買おうとしないのです。良いものが好きですからブランドにこり出すとキリがありません。デパートの外商の良い餌食です。私が見ていたアスペルガーの方は、自分の服のサイズや求める色柄もよくわかっている。それを知る店員に「この服はあなたのためだけに有名デザイナーが作りました」と言われて着てみると、好みもサイズもぴったり、ということが起こります。この方は私の外来に、いつも有名デザイナーの洋服を着てこられました。

――アスペルガーの人は相手の気持ちがわからないと言われますが、ADHDの人はいかがでしょう。

宮尾:ADHDの人は、本来その力を持っています。しかし、衝動性や不注意によって発揮できていないのです。ですから治療薬さえ飲めば、それまでできなかったことができるようになります。アスペルガーには今のところ特効薬はなく、治療法は異なります。

【後編はこちら】ADHDだからこそ、力を発揮できる場所がある「一つの“タイプ”として捉えて」

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(北原窓香)

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