漫画家・坂井恵理さんインタビュー(前編)

男性の「ハゲ」と女性の「ブス」は同じ? 私たちを取り巻く外見至上主義の本質

SHARE
男性の「ハゲ」と女性の「ブス」は同じ? 私たちを取り巻く外見至上主義の本質

「女性は可愛い方が得」。このルッキズム(外見至上主義)に傷つけられた経験のある女性も多いのではないでしょうか。

』(講談社『BE LOVE』にて連載中)は見た目の可愛い女子と、ごつくて可愛いとは言えない女子の「入れ替わり」から引き起こされる物語です。実際入れ替わってみると、可愛い女子になったから、単純に幸せになれるわけでもなく、ごつい女の子の人生が不幸なわけでもない。この作品は、美人=幸せというルッキズムの愚かさを描くと同時に、人の持つエゴや本性までを鋭く指摘しています。どうして私たちはいつまで経っても外見に左右されるの? 外見がもたらす影響とは? 著者である坂井恵理さんにお話を伺いました。

「ボーダーの服=モテない」みたいな決め付けは迷惑

©坂井恵理/講談社

©坂井恵理/講談社

――ずばり、「女の子は可愛いほうが得」という言説は存在しますよね。坂井さんはこれをどう考えていますか?

坂井恵理さん(以下、坂井):私自身可愛い女の子が好きだというのもあって、「人間は外見じゃなくて中身で見なきゃだめだろ!!」とは思いません。海外にも女性に対するルッキズムってたくさんあると思うんですけど、海外のビーチで太ったおばちゃんが普通にビキニを着てるじゃないですか。それを日本ではできないのは何でなんだろうなと思いますね。私も海外だとビキニを着ることもあるけど、沖縄で着れるかというと多分無理だなと思っちゃうんですよ。

海外の女性たちも、もちろん男性の目だけを意識してビキニになっているわけではないんだろうけど、男性の目線を恐いと思わないで肌を晒せる環境があるのかな、と。日本だと混浴も躊躇しますよね。

私の場合は可愛らしい格好は苦手で、ずっとボーイッシュな服装をしてきたんですけど、だからといって彼氏ができないということもなかった。ちょっと前に「ボーダーの服を着てる女はモテない」って話題になったことがあるけれど、ボーダーを着ていたからって夫に何か文句を言われたこともない。

「女性というのはこうだ、モテるっていうのはこういうことだ」って決め付けられるのは迷惑ですよね。

そりゃ「ボーダーを着てる女の子がイヤだ」って男性からはモテなくなるだろうけど、私もそういうタイプの男性は好きじゃないし、好きじゃない男性にモテたいわけでじゃないですもん。ボーダーが好きって言ってくれる男性にモテれば十分です(笑)。

女性同士のジャッジの方が厳しい場合もある

――『鏡の前で会いましょう』で描かれるルッキズムは、坂井さんや周囲の女性の実体験も含まれているのでしょうか?

坂井:「美人なんだけどお洒落じゃなくて、彼氏がいない」っていう設定のまなちゃんというキャラクターについては、意外とこういう子っているなとは思います。「若くて綺麗な女性がいい」って言う男性が本当に女性の顔だけを見ているかというと実はあんまりそうではなくて、ゆるふわっぽい雰囲気を醸し出しているかとか痩せていてスタイルがいいか、だったりしますよね。すごく綺麗な女性が実はモテていないってことも結構あるし、「自称面食い」って言っても案外アテにならないんじゃないかって思います。

――男性→女性だけじゃなくて、女性→女性のルッキズムもあることがこの作品では印象に残りました。「一緒にいる子も自分の価値の一部」って思うことで女性同士の軋轢が生まれることもありますよね。

坂井:実は2巻以降で「綺麗な女友達を連れ歩いているのが自分のブランド」というエピソードも出てくるんですよ。

女性の「私たちは男性のためにお洒落や化粧をしているわけじゃない」っていう意識が強くなってきた一方で、実は同性からのジャッジの方が厳しくて、男性のみならず他人の目線から自由になれないということもあるから、本当に自分のためだけにお洒落できている人なんてそんなにいない気がします。

「ハゲ」と「ブス」は同じ?

――作中で、女性の容姿について言及することを批判された男性が「女性だって男性のことをチビとかハゲとか言ってバカにするでしょ?」言い返すシーンがありましたよね。

坂井:男性にとっては「ハゲる」というのが相当ショックなこととして扱われていると感じます。男性が老けたらみんな等しくハゲになるならそこまでショックじゃないかもしれないけど、同世代でもフサフサの人もいればそうじゃない人もいる。「ハゲてしまう前に」と、さっさと結婚を決めるハゲ遺伝子の持ち主もいるんだそうです。

あと、男性は「ブサイク」とか「キモい」と言われても「じゃあちゃんとお洒落しよう」とかいう気持ちに女性よりも向かない傾向があるんじゃないかって思います。

――「逆境をバネにする」っていうのは女性の方が強いってことですかね。

坂井:お洒落までいかなくても身だしなみを整えるのは会う人へのエチケットですよね。風俗にいくときにシャワーも浴びていかない汚い男性客ってけっこういるんですって。もし女性用の風俗があったときにそこまで汚い状態で行ける女性っているだろうかって思うんですよ。たとえ商売でも相手に欲情してもらおうと思って、シャワーは浴びていくだろうし、ムダ毛処理とか匂いチェックとかするんじゃないかって。なのにそういうことを全くせず、風俗嬢に偉そうに振舞ったりする男性もいるわけですよね。

――風俗嬢に説教する客ってよく聞きますよね。自分が女性を「選んでる」ってことですよね。

坂井:最低限のエチケットを守ってもないのに、自分が上に立ってると思えるわけじゃないですか。ただ、それは一部分の男性で、そこをわきまえている人は身だしなみにも気を使ってるしお洒落もしてるし、そういう男性は増えているなとは思いますね。

――「ブス」っていうことで男性は女性を制圧したみたいな気になるんでしょうか。

坂井:ネット上で女性を攻撃するときに「ブス」と「ババア」って言葉がやたらと多いですよね。

私自身はそれを言われたからってそこまで傷つかないけど、相手は女性をコテンパンにした気でいるんじゃないかと思うんですよね。

>>>後編に続く

関連リンク:

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

男性の「ハゲ」と女性の「ブス」は同じ? 私たちを取り巻く外見至上主義の本質

関連する記事

編集部オススメ

仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。その両立って本当に必要?改めて問い直すキャンペーンが始まります。

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング
人が回答しています
подробно

there