沼田尚志さんインタビュー

「“障害者”は一枚岩ではない」 当事者が語る、世間の目とのギャップ

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「“障害者”は一枚岩ではない」 当事者が語る、世間の目とのギャップ

沼田尚志さんインタビュー後編。16歳のときに脳梗塞で3年間寝たきりになり、今も右半身が麻痺している沼田さんは、日常生活で“障害”についてコメントを求められると困ってしまうと言います。それは、問題点がそれぞれ違うのに、障害者というだけでひとくくりにされることに違和感があるから。後編では、世間の目と当事者のギャップについて伺いました。

【前編はこちら】「障害者は逆にモテる」半身不随男性が語る、ブランディングとしての身体障害

レイヤーが違う障害の人にコメントはできない

――障害をネタにすることを「強者の論理」だと批判する人もいますよね。Duniakitaの記事で反響が大きかった「欠損女子」について「この子たちは障害をネタ化できるかもしれないけど、そんなことを売りにできる障害者ばかりじゃないんだから不謹慎だ」とという意見も集まりました。乙武洋匡さんもよく障害をネタ化した発言で物議を醸していますよね。

沼田尚志(以下、沼田):僕は自分の障害については「足が遅い」レベルの認識なので、それぞれの障害については足が遅いのか、肩が弱くてボールを遠くまで投げられないのか、みたいな話だと思っています。

足が遅い人に対して、肩が弱い人が何か言うのって、全然レイヤーが違うじゃないですか。健常者で足の遅い人と肩の弱い人では問題点が違うように、僕と目の見えない人では共通の課題の持っているわけではないから、コメント自体しにくいです。

――障害者は障害者でもカテゴリーが違うからコメントはできないと。

沼田:ことに強者と弱者、みたいな話でいうと、自分の身内が障害者であったり自分が当事者ならまだしも健常者がそうやって「不謹慎だ」って言うのはすごく違和感があります。

僕は「自己の最大化」を第一に考えていて、自分がどうやったらスケールするかを真剣に考えているから。

「不謹慎」はもったいない

――自己の最大化とはどういうことですか?

沼田:たとえば出世するとか、何かが出来るようになるとか、女の子にモテるとかなんでもいいんですが、あくまで中心は自分であって周りの人に起こることはあまり重要なことではないと思っています。

だから周囲が欠損女子についてどうこう言うっていうのはエネルギーがすごくもったいないなと思います。そのエネルギーをもっと自分のことに使えばいいのにって。どんな人でも、自分を最大化して世の中に価値を提供しなきゃいけないのは一緒ですからね。ある意味、わかりやすい障害を抱えた僕や欠損女子の皆さんの方が、世間にリーチしやすい。

「不謹慎だ」と言ってくる方に関しては、余計なお世話かも知れませんが、もっと自己の最大化に注力したほうが良いと思います。

「もし障害がなかったら」なんて、考えても意味がない

――沼田さんがエネルギーを維持するために意識していることはどんなことでしょうか?

沼田:AかBか悩むときってたくさんあるじゃないですか。何食べるかレベルでも転職するかレベルでも。転職するって決断したときに、決断した方の人生しか歩めないから、「転職しなかったらどうだったか?」っていうと考えることはできても、自分の実体験としては味わえない。

――自分の想像の域は出ないですね。

沼田:その選択は色んなところにあって、悩んでても、片方を選んだらどっちかを選べない。であれば、どっちか選んだほうを良い選択だったって言えるようにすることしかできないんです。だから悩むときは2秒以上悩まないようにしています。

たくさん悩む人もいると思うけど、僕はその悩み自体に意味を見いだせなくて。悩むより悩む時間を減らすことで選択する回数を増やしたいんですね。

そうやって早く選択すれば、また次の選択肢に行き当たってトータルで選択する機会が増える。たくさん選択した分だけノウハウやセンスも判断力も磨かれて研ぎ澄まされていく気がするので、悩んでもどっちかしか選べないから早く決めちゃおうって。

――どっちかしか選べないんだからさっさと決めちゃって、選んだほうでベストを尽くすしかないってことですね。

沼田:「もし障害がなかったら」なんて、考えても意味がないじゃないですか。障害が「ある」という前提でものを考えなければいけない。悩むことに費やす労力や時間で疲弊しちゃって有意義な選択ができない可能性もありますから、スピーディーにいきたいです。

タモリを心配して見られなくなった「いいとも」

――じゃあ「あのときはたくさん悩んだけど、それが今の糧になっているな」なんて経験もないんですか。

沼田:あまりないです。悩んでる時間がもったいないですもん。その背景には「いつか死んじゃうんだから、いつでも思いっきりチャレンジしたい」という死生観も強くあります。

――悩むって悩むための「余裕」がないとできないことですもんね。「今日も起きられてよかった」「女の子と目があってよかった」って思うほど死に対する危機感を持っていたら確かに悩んでいる余裕はないのかもしれないですね。

沼田:みんな余裕があるなと思います。僕、病気してから「笑っていいとも」が見られなかったんですよ。生放送中にタモリさんが倒れちゃったらどうしようって。

――どういうことでしょうか。

沼田:タモリさんが倒れてしまうと、テレビの中が大変なことになるじゃないですか。みんなが右往左往して、カメラが止まって。そんな光景見たくないなって。実際自分はいきなり倒れた経験があるわけで、可能性としては低くないと思っているんですよね、人が突然倒れることが。復活してしばらくは、街を歩く人間がみんな時限爆弾に見えちゃう時期がありましたね。

――沼田さんにとって「死」はやはり恐怖なんでしょうか。

沼田:僕はライフハックとして、障害のこととか、死に対してとかネガティブな要因については、それらを埋め尽くすくらい楽しいこと、刺激的なことをたくさん作って、トータルで見たときのネガティブの割合を減らすようにしています。

夜に寝る時間がもったいなく思えるような、24時間起きていたい、くらいの楽しいことで埋め尽くして、自分の中に占める不安のパーセンテージを減らしていきたいんです。突然倒れることを心配するより、今の楽しさを極めていきたいです。

成功のハードルを低くすれば、小さなこと幸せと感じられる

――このインタビューを見た人は沼田さんを「成功者」として見ると思うんですけど、今まだ成功にたどり着いていない人、模索している人、に伝えたいことはありますか?

沼田:成功なんてとんでもないです。ただ心のハードルは下げたほうがいいと思いますね。小さなことを最大の幸せと感じられたら成功体験が増えていい循環になっていくと思います。

――ただ「肩書きがあって美しい妻がいて十分成功しているのに不倫して失脚」みたいなニュースが最近多いですよね。それっていつまで経っても満たされない、人間の業なんじゃないかと。

沼田:みんな一足飛びに求めすぎている気がします。 わかりやすい成功というものを見せ付けられて。堀江貴文さんなんかも純粋にすごいなーって思うけど、あの方は一夜にして財をなしたわけじゃなくて、すごく細かい階段をたくさん上ってきたから今がある。

「今日起きられたことで成功」って思えたら、「次は朝ごはん食べた。これもまた成功」って少しずつ階段が上がっていく。そうやって今よりも前に進んでいけるんじゃないかって思います。

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