奨学金問題対策全国会議事務局長 岩重佳治弁護士インタビュー(後編)

奨学金返済のために風俗で働く女性も…問題解決のために知っておきたいこと

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奨学金返済のために風俗で働く女性も…問題解決のために知っておきたいこと

奨学金を取り巻く課題について、奨学金問題対策全国会議事務局長の岩重佳治弁護士に聞くインタビューの後編。前編では、奨学金の返済に困難を抱える人が増えた背景や、制度的な問題についての話を聞いた。後編ではこれから奨学金を借りる人や、現在返済に困難を抱えている人がどのように行動すべきかについて語ってもらった。

【前編はこちら】奨学金という名の“金貸しビジネス”の実態 収入ゼロでも返済を迫る制度の問題点

奨学金を借りている人が気をつけたい2つのポイント

――現状の制度のもとで奨学金を借りている人、またこれから借りる人はどのようなことに気を付けたらいいのでしょうか。

岩重佳治弁護士(以下、岩重):多くの課題を抱えた制度だということを知った上でどうすればよいのか。私が勧めているのは以下の2つだけです。

まず、奨学金を借りるときに保証人をつけるのですが、このときできれば個人の保証人をつけないことをお勧めします。多くの場合、親御さんや親せきの方が連帯保証人になってしまうのですが、代わりに保証会社に頼む方法をとったほうがいいと思います。

なぜなら、個人の保証人を付けると、いざとなったときに自己破産がしにくくなるからです。自己破産とは、その人の収入と財産をもってしても支払いが不能な場合に、一定の財産をお金にかえて返済し、残りを免除する制度のことです。自己破産というとマイナスなイメージがありますが、破産後も普通に生活をすることができますし、本来は生活再建のための非常に有効な手段なんですね。

しかし、保証人に親御さんや親せきの方がいると、「自分が自己破産すればお父さんやお母さん、おじさんに迷惑をかかるから…」と踏みとどまってしまう人が多いんです。ですから、個人の保証人をつけるのはできれば避ける方がよいと思います。ただ、保証会社を頼む場合には保証料を負担する必要があることに注意すべきです。

――連帯保証人に親がなっている場合、親が支払えない場合は親も自己破産という形をとることがあるのでしょうか。

岩重:もちろんそういう場合もあります。他方で、自己破産に踏み切れない方も少なくありません。特に田舎の方などは先祖代々の土地や建物を所有しているため、それを売って返済できればそもそも自己破産は認められませんし、自己破産する場合でも、土地建物などを失いたくないという方が多いからです。そうすると返済が困難になっても、このような保証人への影響をおされて、本人は自己破産がしにくくなります。やはり保証料はかかりますが、初めから会社に頼んでおくことを検討すべきだと思います。

もうひとつは不充分な救済制度ではあるものの、それをしっかりと活用していくということも重要です。猶予制度は生活が困窮したときにすぐ申請しなければ、延滞金が発生していたり、所得証明が発行できなかったりと、申請自体ができなくなる恐れがあります。ですから、生活に困ったらすぐに救済制度を申し立ててください。

日本学生支援機構にナビダイヤルというものがありますが、そこには1日3000~4000件の返済に関する相談があるそうです。相談件数も多いですから、自分でホームページなどを見て救済制度についてよく勉強し、「こうしてほしい」と明確に、かつしつこく申し立てをしていくことが重要です。

1回の電話で終わらないと、また最初からオペレーターに説明し直しです。この段階でみんな心が折れてしまう。つらいだろうけど、でも諦めずに交渉をしてください。もし困ったら奨学金問題対策全国会議でも全国に相談窓口を作っていますので、そちらに相談してください。

また時効や自己破産といった法律的なところは弁護士会、法テラスでも相談できます。ですが弁護士に奨学金制度についての知識が必ずしもない場合もありますので、そういった場合には奨学金問題対策全国会議の相談窓口でフォローできればと思います。

奨学金が返せないのはあなたが悪いわけじゃない

岩重:奨学金の問題が報道されるときには、「父親や母親が子どもの返済を肩代わりして、子どもがそれに感謝する」といった情景が描かれていることがよくあります。頑張って返そうという決意が美しい親子愛として扱われている。しかし、頑張って返そうとすると、頑張りすぎてしまって潰れてしまう人も多いんですよ。

日本の教育のよくないところは「頑張ろう」ということしか言わずに自己責任を強調し「困ったらどうしたらよいのか」について具体的な方法を全く教えないところです。ですから、頑張らなくてはいけないという意識だけがふくらんで、精神的な負担がものすごく大きくなる。

もし、あなたが奨学金を返せなくなったときは、「自分だけがわるいわけじゃないんだ」と思うこと。日本は学費が高くて、さらにそれを全て借金で個人がまかなわざるをえず、救済制度も極めて不十分です。奨学金問題はこうした構造的な課題であって、個人の問題ではありません。ですから、返せなくなった時には無理をしすぎず助けを求めて欲しい。

特に女性で言えば、望んでいないにも関わらず奨学金返済のために風俗で働いているという人もいます。またインターネットで「奨学金 結婚」などと検索すると数多く検索結果がヒットすることからも分かるように、奨学金の返済があるから結婚や出産を諦めるという人まででてきています。

本来ならば人生を豊かにするはずの進学がここまで本人の選択を狭め、苦しめているのはおかしいですよね。お金に余裕がある家庭に生まれたらそういう苦労をしなくていいのにも関わらず、たまたま親に払う力がなかったら奨学金を借りざるを得ない。苦しい家庭に生まれたら、そのお子さんも苦しくなる。どんどん不公平が広がって連鎖していっているんですよ。そんな社会はおかしいと思います。

ですから、現在苦しんでいる人には「無理しなくていいんだよ」ということを伝えたいですね。

「耐える力を変える力に」奨学金問題の解決に向けて

――こうした制度を変えていくためにはどうしたらよいのでしょうか。

岩重:本当は当事者の人たちが生の声を届けていくことが重要ですが、ゆとりがないとこうした問題を考えたり、行動する力は生まれないと思います。ですから当事者の人だけでなく、この問題を知っている人が行動しないと制度は変わっていかないと思います。

でも、奨学金の問題って本当に当事者の人が声をあげづらいんですね。おそらく恥ずかしいという意識が強かったり、思い出すのもつらいという人が多いからです。

こうした社会問題に直面している人たちは、「耐える力」が非常に強くて、困難な状況でも耐えようとしてしまう。しかしそれでは苦しくなるばかりです。

関西の労働組合「関西学生アルバイトユニオン」では「耐える強さを変える力に」というフレーズを合言葉に、一人で悩まず力を合わせて現状を変えようということを訴えているということを聞きました。これは非常にいい言葉だと思います。

耐えようと頑張るのではなく、頑張って問題を社会化しようという発想をみんなで持っていけたらいいなと思います。そして、「こんな状況はおかしい!私はこうやって行動して救われました」と当事者の人が胸を張って言えるようになってほしいと思っています。

奨学金の返済が苦しいのは社会問題であって、恥ずかしいことではありません。頑張りすぎる必要はないし、助けてと言えるようになってほしいと思います。そのためにも、当事者が声をあげやすい状況をまずは作っていけたらと思っています。

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