『リベンジポルノ』著者・渡辺真由子さんインタビュー(前編)

裸を撮らせた子どもを叱ってはいけない リベンジポルノから考える「性情報リテラシー」

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裸を撮らせた子どもを叱ってはいけない リベンジポルノから考える「性情報リテラシー」

プライベートな画像がいったんネット上に流出すると、その回収はほぼ不可能と言われる現代。通信機器のめくるめく発達に、ユーザーのリテラシーが追い付いているかといえばそうではない。報復のために元恋人や知人のプライベート画像を流出させる「リベンジポルノ」は、大きな社会問題となっている。

メディアジャーナリストの渡辺真由子さんが取材・執筆した(弘文堂)では、リベンジポルノの定義を「恋愛(プライベートな関係)に起因するもの」と「性産業(ビジネスでの関係)に起因するもの」に大別し、それぞれの背景や対策について論じている。前編では主に、「恋愛(プライベートな関係)に起因する」リベンジポルノについてお話を聞く。

自分の裸を撮らせてしまう気持ちとは

――渡辺さんはテレビ局記者として最初はいじめ自殺、特に携帯電話を使ってのいじめ問題を取材されていたそうですね。性のリテラシーについてはどんな経緯で取材を始められたのでしょうか?

渡辺真由子さん(以下、渡辺):性をめぐるトラブルにはかねて問題意識を持っていて、記者時代にもセクハラやDVといった問題も取材していました。九州は男尊女卑のイメージが強いと言われる地域ですが、そこを解消したいという思いもあり、福岡で働いていました。具体的には性同一性障害の競艇選手の方に密着取材をしたり、DVの被害者の女性にインタビューをしたり。

――ご著書のテーマは「リベンジポルノ」ですが、この言葉ができる前と後で変わったと思うことはありますか?

渡辺:言葉ができたことで法律ができました。言葉ができたからというより、事件があったからですね。三鷹市の女子高生殺害事件がきっかけで「リベンジポルノ」という言葉が多くの人に知られるようになり、言葉によって被害の深刻さが広く知られるようになりました。そして法律ができたんです。たとえば今、元カノの画像をばらまくような事件が起こると、マスコミも「リベンジポルノで逮捕!」って報じますよね。「こういう行為が実際に起こっていて、悪いことなんだ」と広く認知されるようになりました。

――ご著書の中で、恋愛に起因するリベンジポルノについて、最初は自分の裸を撮らせてしまう女の子の気持ちがわからなかったと書いてらっしゃいましたね。

渡辺:最初はごく一部のちゃらちゃらした子がやっているんだろうと思っていたんです。しかし、取材していくうちに、性的に奔放かどうかは関係ないことがわかりました。それぞれにその子なりの理由がある。撮影させることで自分の体を肯定するためとか、浮気抑止のためとか、愛をつなぎとめるためとか。もちろんデートDVの関係のように、断りたくても断れないこともあります。とにかくさまざまな事情がありました。

撮らせた子どもを叱っても解決しない

――ネット上で知り合った、会ったこともない人に信頼関係を感じて自分の写真を送ってしまう子もいます。

渡辺:そういう子は、悩みを抱えていたり、孤独を感じていたりすることが多いですね。心が弱っているときに優しい言葉でつけ入られると、コロっとなってしまうんでしょうね。加害者は子どもの心理をわかっているので、つけこみ方がうまいです。

――大人は子どもに被害に遭ってほしくないので、「やめなさい」と注意します。でも思春期のころはそう言われるほどやってみたくなったり……ということがあるのかもしれません。

渡辺:たとえば未成年の喫煙を大人は注意します。しかし未成年による喫煙の場合は補導の対象となる行為ですが、撮影自体はそうではありません。大人に反抗するためというよりは、純粋に楽しいからやっていると思います。少し前の世代だと前略プロフがあり、そしてその流れで今のSNSがあると思うのですが、もうネットにプリクラや写真を載せるのが当たり前になっていますよね。それは友人関係の中で、自分自身の存在を認知させるためです。目立たないと取り残されてしまうから。そうやって友達の世界を広げることで、「自分が認められている」「人気がある」という自己肯定感を得ているのではないでしょうか。そういった子どもの感覚は、上の世代にはなかなか実感できないことかもしれません。

――大人の動きとして、子どもをリベンジポルノから守るために何が必要だと思いますか?

渡辺:被害に遭った子どもが相談しやすくしてあげることが大事です。そのためには、「撮影させた被害者が悪いのではない」という認識を、大人がしっかり持たなければなりません。その認識がないと、自分の子どもから「下着姿撮られちゃったんだよね」と打ち明けられた時に「アンタが悪い」と言ってしまう。そうなるとその子は、実は裸の姿も撮られていたとしても、それ以上話さなくなりますから、たとえそれをネットにばらまかれたとしても、もう言えないでしょう。大人が「悪いのは100%加害者なんだ」という認識を持ち、それを子どもに伝えていくことが必要です。

――簡単なことのようにも思えるのですが、「叱らなきゃダメだ」と思っている親が多いですよね。

渡辺:そういう考え方は、日本では何十年も前からありました。性犯罪に関しては「被害者が悪い」「被害者が誘っているように見せた」「隙があったからだ」。こういったことを言う人たちは、生きていく中でその価値観を刷り込まれてきたのです。それがまた再生産されている気がしますね。でもそれって、アダルトメディア全般が男性に向けてずっと発信してきたメッセージなんです。「襲われるのは女が夜道を歩いていたから」とか、「露出した服を着ている女性は襲ってもいいんだ」とか。そういうメッセージが一般の保護者にまで浸透しているのは怖いことですね。

レイプ神話を打破する

――「被害者に隙があった」というような考え方は「レイプ神話」とも言われますね。アダルトメディアが発信するメッセージについて、詳しく教えてください。

渡辺:私は以前という本を書いたのですが、その際に男性向けのアダルトメディアを戦前のものから調べました。戦後の男性向けの週刊誌、たとえば平凡パンチとか週刊プレイボーイなどの紙媒体で「女は本心では襲われたいと思っているから、男は強引に行け」という、男性の性的な攻撃性を刺激する特集がたびたび組まれていました。現代のAVの中でも「深夜に酔っぱらって歩いている女は、懲らしめるために襲ってやれ」とか、そういうメッセージ性を持ったストーリーとして作られています。

――こういった性に関するファンタジーを真に受けてしまう人と、そうでない人の違いはどこにあると思われますか?

渡辺:1つはコミュニケーション能力でしょうね。コミュニケーション能力が高いと、異性の本音もわかってきます。コミュニケーションについての経験を積むうちに、メディアの情報とリアルなやり取りが違うことがわかるのではないでしょうか。もう一つは、メディアの性情報を鵜呑みにせず批判的に読み解く能力。いわゆる「性情報リテラシー」がどれほど身についているか、が問われてきます。

【後編はこちら】リベンジポルノを利用した強制売春も…“恥ずかしさ”が被害者を沈黙させる

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