映画「犬に名前をつける日」山田あかね監督インタビュー(後編)

犬を檻に閉じ込め近親交配…悪質ブリーダーとペットショップが減らない理由

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犬を檻に閉じ込め近親交配…悪質ブリーダーとペットショップが減らない理由
犬に名前をつける日

『犬に名前をつける日』より

小林聡美主演のドラマドキュメンタリー映画『』の山田あかね監督へのインタビュー後編。前編では、山田監督がロンドンの犬猫保護施設で知った、飼い主の性格によってペットの治療方法を変えるという考え方への驚きや、映画撮影に至るまでの困難や熱意をうかがいました。後編では、悪質ブリーダーの実態や、新しい保護施設の形への考えをお聞きします。

【前編はこちら】犬猫が年間12万頭も殺処分される日本 いま保護施設をドキュメンタリーで描く意味

悪質ブリーダーの元で地獄の日々を送る犬たち

――捨て犬や捨て猫の様々な現実が映し出されていますが、ブリーダーから犬猫を保護しに行くシーンは、こんな目に合っているのかと胸が痛くなりました。

山田:あのブリーダーはまだいい方なんですよ。もっと悪質なブリーダーが日本にはたくさんいます。彼らはどこからか犬猫を調達して小さな檻に閉じ込めて、子供を産ませてはペットショップに卸しています。犬たちは24時間ずっと狭い檻の中で、檻から出たことがないのです。出る時は赤ちゃんを産むとき、産んだら檻に戻す。その繰り返し、地獄ですよ。赤ちゃんのときは見た目がかわいいからペットショップに卸せますが、実は近親交配もしているから、異常がある子犬も多いんです。また悪質ブリーダーのところから犬を助けると、散歩なんてしたことないから、歩けなかったりするそうです。

――でもペットショップがある限り、そんな悪質ブリーダーは減りませんね。

山田:そうなのですよ。犬を飼いたいと思ったとき、保護施設から譲り受けることを知らない人が多すぎるのです。みんなペットショップに行くから、悪質ブリーダーは減らない。保護施設の犬を飼えば、ペットショップは減っていき、犬も救われるのです。私が今飼っている犬も保護犬で1歳半のときにわが家に来ましたが、おとなしくていい子です。以前は、子犬から育てないと人間になつかないのではないかと思っていたけれど、そんなことはありません。犬は賢いから「この人が飼い主だ」と思ったら、従いますし、なつきますよ。

犬に名前をつける日

写真は映画にも出演した、山田監督の飼い犬「ハルちゃん」。取材・撮影中もおとなしく、現場の様子を眺めていました。

飼えなくなったときの選択肢がない社会はつらい

――でも入院するから面倒が見られないとか、飼えなくなったという場合、どうしたらいいのでしょう。

山田:犬が飼えなくなったとき選択肢がない社会って、本当に辛いですよね。人間だって働けなくなったときゴハンが食べられない社会なんて辛い。やはり生きるためのセーフティネットは人間同様に動物にだって必要なんですよ。今、高齢者と犬はとても問題になっていて、寂しいから犬を飼ったけど介護施設に入ることになって、犬は取り残されて死んでいくことがけっこうあるのです。高齢者の方も介護施設に入るとき「犬は処分しますよ」と言われたら「はい」と言うしかない。でも施設に入って自分は生きているけど、愛犬は処分されてしまった……と、うつ病になる高齢の方は多いそうです。

――殺処分にされないでいられる動物の保護施設があればいいのですが。

山田:「飼えなくなるのだから飼うな」ではなく、飼えなくなったら相談できる場所があればいいですよね。新しい飼い主さんを探してもらえれば、犬も第二の人生を歩めるし、施設に入った高齢者も殺処分されないとわかっていれば「あの子は元気かな」と、考えたりできます。自分は入院したけど愛犬は殺されたなんて辛いですよ。

犬に名前をつける日

『犬に名前をつける日』より

犬猫の保護施設は、傷ついた人間も救ってくれる

――ヨーロッパには、殺処分されない犬や猫たちの保護施設があるそうですね。

山田:イギリスにはバタシー・ドッグス&キャット・ホーム、ドイツにはディアハイム・ベルリン(動物保護収容施設)などがあります。新しい飼い主が見つからないといって殺処分されることはありません。一生そこで暮らしていけるのです。私がイギリスの保護施設で働いたとき、よくボランティアの方がお手伝いしに来るのですが、みんな今は飼えないけど、散歩したいから、猫と遊びたいからと来るのです。そこで働いて気付いたのですが、そういう施設って、犬や猫を救うだけでなく人間も救っているのですよ。特にクリスマスは犬や猫にプレゼントを持って大勢の人が来ていました。なぜかというとヨーロッパは自立した人が多い分、寂しい人も多い。全員が寂しくて来ているわけじゃないけど(笑)、そういうゆるい場所って傷ついた人が集まるのです。そうやって犬猫と触れ合って元気になって帰っていく姿を見て、いいなあと思いましたね。

――理想的ですね。

山田:だからこそ、みなさんには保護犬を知ってほしい。捨てられた犬猫の現実と懸命に助けようとしている人々を知ってほしい。そして、犬や猫を飼うなら、犬猫の保護施設を利用してほしいと切に願います。

『犬に名前をつける日』より

・公開情報
『犬に名前をつける日』

出演 :小林聡美、上川隆也、渋谷昶子監督、動物保護団体「ちばわん」、「犬猫みなしご救援隊」ほか
製作 :スモールホープベイプロダクション
監督・脚本・プロデューサー :山田あかね (『すべては海になる』「むっちゃんの幸せ」)
音楽=つじあやの 主題歌=「泣けてくる」ウルフルズ
配給・宣伝 :スールキートス
10 月 31 日(土)シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開

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