思想家/事業家・山口揚平さんインタビュー

10年後も社会で生き残る人材になるには「会社ではなく職業に忠誠心を」 

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10年後も社会で生き残る人材になるには「会社ではなく職業に忠誠心を」 
山口揚平さんインタビュー

山口揚平さん

80歳まで生きるとすると、アラサー女性は約10年後から人生の後半戦を迎えることになる。「そのころ、世の中はどうなっているだろう」「自分はどこでどんな仕事をし、誰と一緒にいるのか」「今、何をしなくてはいけないのか」などの不安に苛まれやすい年齢と言えるだろう。

今の日本社会で生きていくうえで能力な能力とは何か。「会社に対してではなく、職業に“忠誠心”を持つべき」と語るのは、複数の事業・会社を運営し、執筆・講演活動も行っている山口揚平さんだ。7月に上梓した『』(SBクリエイティブ)では10年後の世界予想から、お金や経済に関する見地まで、多方面に渡って解説している。今回は山口さんに、アラサー女性たちが10年後に生き残るために必要な考え方をうかがった。

「会社のプロ」より「職業のプロ」に

――山口さんは数々の事業を手掛けられていますが、女性のキャリアアップにおける問題点についてどうお考えでしょうか。

山口揚平さん(以下、山口):昔はみんな、勉強を18歳までやって22歳くらいまで結婚していましたが、現在は男女問わず22歳まで勉強し、そこから29歳まではとりあえず一生懸命働くという道を歩む方が多いですよね。女性が仕事に精を出しつつ「なんとか35歳までには出産を」と希望していても、自分の力だけどうこうできる問題ではない。社会の流れは変わっても女性の体は同じなので、出産年齢だけ上げてもいろんな問題が生じます。

日本と違って、アメリカのキャリアウーマンは「ダブルキャリア」という考え方をします。学校を卒業してから第一のキャリアを積んだあとに、20代前半で結婚して子どもを産み、そこから大学院に入って20代後半から第二のキャリアを始める。つまり、連続的なキャリアではないんです。アメリカにおける「エリート」とは、このように5年ずつ3つくらいのキャリアを経験した人を指します。日本でも、こうした「非連続的なキャリア」を積むことは重要になっていくでしょう。

――日本ではまだまだ、同じ会社に勤続してキャリアアップすることが一般的ですが、「非連続的なキャリア」というのは可能なのでしょうか?

山口:そういう“洗脳教育”をしがちなのが、日本の会社のよくないところですね。とくに男性は「カンパニースペシフィック」と私が呼んでいる、その会社特有の忠誠心が強い。この精神によって、家庭ではなく会社を自分の居所と見がちなので、結婚しても家庭に帰らない人が多くなっているという問題も生じています。

僕は、忠誠心を持つ対象は会社に対してではなく職業に対して持つべきだと思います。とくに女性はフットワークも軽いし、コミュニケーション能力にも長けている人が多いと感じるからです。職業にプロフェッショナリズムを身につけて、どんなところでも自分だけがその仕事ができるという強みを持つことで、非連続的なキャリアは可能になると思います。

困ったとき「お願い」できる人脈作りを

――その職業のプロフェッショナルとして地位を築きながらも、家事や育児を両立していくために必要なことはなんでしょうか。

山口:会社に尽くして働く男性に女性が対峙するには、能力やスキル、知識を培っていくことはもちろん、「どう尽くしていくか」を考えるといいでしょう。女性は子どもができると、どうしても家庭という内側にばかりコミットメントしがちなので、自覚的に社会や顧客という外側にも向ける意識を持つ。非常にすごく難しいことなのですが、尽くす精神性を場合によって振り分けることはとても大事です。

例えばテレビ出演や作家としての活動も目覚ましい、ハフィントンポストの創設者であるアリアナ・ハフィントン氏や、Googleの責任者からFacebookの最高執行責任者になったシェリル・サンドバーグ氏など、どの分野でも成功を収めていますよね。彼女たちは優秀であることはもちろんですが、結婚して子どもがいても、仕事中は顧客と価値創造に全力で尽くすという精神性を持っている。そして家に帰ったら一切、仕事をしないという決まりを作っているのだそう。内と外で尽くす相手を徹底的に分けているんです。

――本の中で「これから求められる能力は愛嬌力」と書いてありますが、そうしたコミュニケーション能力も顧客に尽くすといううえでは必要になってくるのでしょうか。

山口:「愛嬌力」は、単に皆に笑顔を振りまくということではなく、「誰に助けを乞えば良いのか知っている」という意味合いです。アインシュタインも「調べられるものを、いちいち覚える必要はない」と言っていますが、今は「ノウハウ」はネットで調べればわかる時代です。でも、現実的に困っているときに、ネットという顔の見えない媒介や第三者が提供する情報には限界がある。そんなとき、身近にいる誰に「お願い」できるか、誰が手を差し伸べてくれるか。いわゆる「ネットワーク価値」ですね。損得抜きで付き合える人たちと関係性を深め、信頼残高を増やすと、つながりや健康、生命力といった価値を生み出していきます。これは女性のほうが得意なことだと思います。

人間関係なしでは生きていけない

――現代は人間関係が希薄になってきていると言われますが、身近なネットワークは、今後ますます価値を持っていくのですね。男女間におけるパートナーシップはどうでしょうか。

山口:お金を稼ぐことは、なんとかなると思うんです。シェアハウスに住んでアルバイトをしても、金銭的には生きていける。でもシェアハウスだって、人間関係の摩擦がありますよね。とにかく昔も今も10年後も、人間関係なしでは生きていけないことは明らかです。

イギリスでは紳士淑女教育が幼いときからほどこされるのですが、日本は教育の問題もあり、男女の相互理解が乏しいですよね。二次元を求めたり、結婚する/しないだけで相手を語ったり、単純なレベルでしかお互いを見れていないと思います。「男女は分かり合えないもの」と結論づけるのではなく、相手を理解しようとする姿勢を持つのが大事です。自分の「好き」を突き詰めることと同じくらい、相手の「好き」も理解する。いろいろな情報が得られる時代なのだから、例えばAVでも漫画でも映画でも、男性は女性向けコンテンツを、女性は男性向けコンテンツを見ると、相互理解をはかるという意味で効果があると思います。

――家族のあり方、子どもを産み、育てるという意識や制度については、どう変わると思われますか。

山口:1980年代~90年代の理想は、夫婦に子ども2人という状態でしたが、今は結婚して夫婦になり、1人だけでも子どもを……と考える人が増えていると思います。でも、2020年以降の世帯の形は、単身者、夫婦二人だけ、親(シングルマザー/ファザー)と子どもといった構成がどんどん多くなっていくと私は予想しています。そうなると単身者も夫婦も、子どもがいない不安要素が大きくなっていくので、養子が選択肢に加わる。現状は養子縁組の条件や制度がまだまだ整備されていませんが、10年後にはもっと養子はとりやすくなるのではないでしょうか。

実際に神奈川県横須賀市では今年から、実親の虐待などで児童養護施設に入った子どもの特別養子縁組を進めています。現在、横須賀市では200人弱の子どもが施設で暮らしているそうなのですが、4人が18歳まで施設で暮らせば約3530万円もの経費が必要なんですね。子どもが欲しい養親と、親が必要な子どもを繋げることだけでなく、自治体の経費節約の面でもメリットがあるこのような動きは、10年後にはもっと増えていくでしょう。

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