川島なお美の陶酔と強さが私たちの不安を救う――失笑されても「私は女優」

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川島なお美の陶酔と強さが私たちの不安を救う――失笑されても「私は女優」

川島なお美の陶酔と強さ

9月24日、川島なお美が胆管がんで亡くなった。54歳だった。訃報にあたり、多くのメディアが彼女を「女優として人生をまっとうした」「女優業にまい進した」「女優としても評価は高かった」と賞賛した。生前からそんな評価だったろうか。

「川島なお美」と聞いて、「女優」と認める人はあまりいないだろう。代表作は「お笑いマンガ道場」とワインだ。「失楽園」は、枕営業疑惑や激しい濡れ場、映画版主演の黒木瞳との比較ばかりがクローズアップされ、女優として高く評価されたかというとそうではなかったはず。いつも自分に酔っているのか本当にほろ酔いなのかわからないが、「女優」という言葉に陶酔している、ただそれだけの人に見えた。

名(迷)言も多い。「私の体はワインでできているの」はよく知られているが、そのほかにも次のような言葉がある。

「当分は男性とボディーランゲージできないですね」(1999年に虫垂炎で手術を受け退院した際の言葉)
「女性の年齢はダイヤモンドのカラット数。私は47なので47カラットです」(2008年、ダイヤモンドのイベントで)
「私という名のワインを完熟に向かわせてくれる器にようやく出会えた。彼というグラスの中で熟成していければと思います」(2009年、パティシエ・鎧塚俊彦との結婚会見)

自分のキャラをよくわかった上で、メディアが喜びそうなフレーズをうまく発している。サービス精神が旺盛な点は、まるで芸人だ。いわば「女優芸」の人である。

闘病を経て「自分を活かす道」を悟る

そんなこんなで「女優」の肩書きがどこか浮いているような彼女だったが、「おや」と思ったのは、9月7日、イベントでの激やせ姿だった。あえて首もとや肩が露出するドレスをまとい、過酷な闘病生活を思わせた。亡くなったあとの報道でも、「普通の女優だったら闘病で痩せている姿を隠そうとする。でも、そうしなかった。彼女らしい姿だった」と周囲の人が話したという記事があった。故渡辺淳一の「女優はさらけだしてなんぼだ」という言葉に従ったのではないかと書かれていた。

「女優はさらけだしてなんぼ」の是非はおいといて、川島が自分をさらけ出し続けたことは事実である。14年1月、胆管がんの手術を受けたあと、2014年2月6日から公式ブログで不定期に自叙伝を書き始めた。2014年2月11日には「お笑いマンガ道場」について「女優への階段をあがる途中で出会った かけがえのない宝物です 川島なお美に マンガ道場の話はNGとかって まったくでたらめですから」と書いている。“大女優”になればなるほど、過去のグラビアやバラエティ仕事は隠したがるものだが、川島は自分から振り返っている。

2015年3月3日には、「週刊誌で『バラエティしか経験のなかった 失楽園のヒロインに抜擢された』みたいな書かれ方をされたことがありましたが どっこい いろんな経験を積んでいましたよん」と、ネガティブな報道にもあえて触れた。自分のキャリアへの自信がなければ、できることではないだろう。

「私も最近ようやく女優の道こそ自分を活かす道 そして職人の夫が彼の信じた道を極めるまで支え続けるという妻道を 一歩一歩あゆんでいきたいと思うのです」()

死の4ヶ月前に記した「女優の道こそ自分を活かす道」。彼女は、誰がなんと言おうと女優である。「マンガ道場(笑)」といった揶揄は意味をなさない。過去の経歴も、世間の失笑も批判も、自分の年齢も、そして襲い来る病にも、女優として毅然とした態度を貫いた。女優だから、抗がん剤治療を拒み、純金の棒に頼った。過激な減量など貪欲な役作りをすることを「デ・ニーロ・アプローチ」というが、今後は敬意を表して「なお美アプローチ」と呼びたい。川島なお美は、闘病する女優・川島なお美という役をみごとに演じきり、ステージの上で死んだ。

生きていれば、迷うし凹む。年をとることも、死ぬことも怖い。でも、できれば後悔したくない。不安に襲われたときは、川島なお美を思い出そう。そして、彼女のように、自分という名の美酒に酔えるほど、強く生きてゆくのだ。

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