株式会社サニーサイドアップインタビュー

「会社が考えるべきは、社員の働き方より生き方」卵子凍結への補助金支給を決めた企業の思い

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「会社が考えるべきは、社員の働き方より生き方」卵子凍結への補助金支給を決めた企業の思い
サニーサイドアップインタビュー

松本理永さん

女性が将来の出産に備えて卵子をあらかじめ採取し、長期間保存しておく卵子凍結保存。海外企業ではAppleやFacebookがいち早く卵子凍結費用の補助を開始している。日本では今年に入り、千葉県浦安市が市内女性に対して助成を決定したことが話題になった。

そして今年7月、日本の民間企業として初の導入となる卵子凍結補助を発表したのが、PR会社の株式会社サニーサイドアップだ。「世界一の朝食」を提供する人気カジュアルレストラン「bills」の運営や、中田英寿らアスリートのマネジメント等を手がけていることで知られる同社では、多くの女性社員が活躍している。

同社は「離婚休暇」や「恋愛勝負休暇」制度など全32種のユニークな社内制度を導入しており、卵子凍結補助はその中の「Dear WOMAN」制度に含まれるもの。今回は同社のバイスプレジデント・松本理永さんに、補助に踏み切った背景と思い、今後求められる企業と働く女性の歩み寄りなどを聞いた。

女性社員たちに気づきを与えるために

――卵子凍結補助を含む「Dear WOMAN」制度について、詳しく教えてください。

松本理永さん(以下、松本):当社では、会社の成り立ちやPRという業務内容からか、“女性の働きやすさ”や“多様性”といった空気感は意識してこなくとも自然と根付いていました。そうしたことを背景に、改めて形として社員の働き方だけでなく生き方を支援するための32の制度を設けていて、そのうちの1つが「Dear WOMAN」制度になります。32の制度は社員からの意見を取り入れたり利用頻度を検証したりして常に更新をしています。

卵子凍結補助に関しては、病院に関係なく、卵子採取から保存等に至る総額の30%を会社が負担するものです。その他にも、出産・育児経験のある先輩女性と懇談・交流する「大人の女子会」の発足や、パートナー探しのお手伝いなどもありますが、それらの詳細はこれから決めていく予定です。7月に発表したのでまだ制度利用者は出ていませんが、まずはこうして、女性社員がいま以上に安心して働く環境を会社が作っていくという姿勢を見せたことで、活動のスタートを切ったという感じです。

――卵子凍結補助を行おうとなったきっかけは何だったのでしょうか。

松本:私は40代なのですが、友人やお仕事で知り合った方などいままでに、一生懸命仕事をしてきて、子どもが欲しいと思ったときに気がついたら出産が困難な年齢まで来ていたという女性を数多く見てきました。どうしても、女性には体のタイムリミットがあります。年齢を重ねた後になってから「知らなかった」「考えてこなかった」と気がついて、選択肢が狭まるのはもったいない。

この支援の一番の目的は卵子凍結を推奨することではなく、そうした気づきを促すことなんです。もちろん制度は利用してもらえたら良いですが、私のような人生の先輩が、そうして見てきたことを後輩たちに伝えていきたいという想いが制度に直結しました。

――いま、働く女性にとってのみならず世間的にも卵子凍結は関心ごとのひとつですが、実際の社員さんたちの反応はいかがでしょうか。

松本:30代以上の女性社員からは、「すごく響きました」といった反応がありました。当事者という意識のある人もいるでしょうし、実際に卵子凍結とは何か、行うとしたらどのくらいの費用がかかるのか、他にはどんな選択肢があるのかなど、現実的なことを考えるきっかけになったのではと思います。

逆に、30歳以下の女性社員にとっては実感がないのかそういった直接的な反応はありません。でも、会社がこうした支援をすることで「卵子凍結」という存在を知ることができる。なぜそのようなことが注目され、会社が制度にまで取り入れたのか、そこから、これからの自分の生き方を考えるきっかけになっていくことを期待しています。

働き方を考えることは、生き方を考えること

サニーサイドアップインタビュー

松本理永さん

――卵子凍結に限らず、会社側が働く女性に寄り添うために必要なことは何だと思いますか。

松本:会社の規模や業務内容によっても違いますし、全ての女性が同じではないわけですから、一概に言うことは難しいことです。でも難しいからこそ、会社は社員の働き方ではなく社員の生き方を考える必要があると思います。働き方を考えていけば、当然生き方も考えなくてはいけないわけですから。他の会社がやっているからその制度を取り入れようとするのではなく、自分たちの社員における課題をどう解決していくかですよね。

日々、社員も会社も変わっていくので寄り添い方も常に変化していくものです。だからこそ、試行錯誤しながらも常に会社側が色々な方法を考えていくことは大事だと思います。

――32の制度を見ると確かにものすごく色々な種類の制度があって、そうした会社の姿勢が見えます。

松本:例えば、働く女性のために時短制度があったとしても自分の仕事を他の社員に負担させてしまうことが不安になると、自ら制度を利用するのは難しい、ということも想像できます。でも、社員同士が普段から信頼し合いコミュニケーションを取っていることで、「ごめんね」「いいよ」なんて支え合いながら制度も利用しやすくなるのでは。うちではそのバックアップもできるよう、社員同士がお互いをもっと知ることができるように、例えば同じ干支や出身地などテーマを分けて部門や世代を超えた飲み会を開催する「会社内全員が飲み友達!飲活(ノミカツ)奨励」制度も設けています。

また、告白やプロポーズのための「恋愛勝負休暇」や「失恋休暇」など、恋愛を応援する制度もあります。たくさん制度がありますが、これらを利用することよりも、自分がどんな人生を歩むために何を選択するかを意識することが大事だと思います。

自分が選択した人生をいいものにしていく意識

――それでは逆に、働く女性が会社や社会で意識していくべきことはなんでしょうか。

松本:子どもを産もうとか仕事をしようとか、結局は自分が選んで決めていくことですよね。その選択をどうやってこれから良いものにしていこうかと、ポジティブにとらえていくことが大事だと思います。その選択は途中で変えてもいいし、変えられるかもしれないですよね。私は23歳で双子を産んだあと、離婚し、再婚して38歳で次の子を産んだのですが、自分がいまここにいるのは自分が選んだ結果ですし、「選択したのだからこの一生をどう幸せにしていくのか。するしかない」と考えてきました。

もちろん悩んで迷って選択できないことはたくさんありますし、誰も計画的に人生は歩めません。でも例えば子どもができたら、産んでみてそこからポジティブに考えなんとかするということもできるのではないでしょうか。結婚した後輩の女性社員に子どもが欲しいけどいつ産もうか悩んでいるという相談を受けることもありますが、「本当に子どもが欲しいのであればできるときに産んじゃった方がいいよ」とアドバイスしています。仕事はあとからなんとでもなりますが、悩んで先送りしているうちに失ってしまう時間は取り返しがつきません。さて落ち着いて産もう、と思ったときに全員がうまく授かる、というわけではない。そこだけは伝えていくべきだと思っています。

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