Getty Images Japan 島本久美子社長インタビュー 最終回

「美醜ではなく、どんな意思を持っているか」広告写真からみる女性像の変化

「美醜ではなく、どんな意思を持っているか」広告写真からみる女性像の変化

百聞は一見にしかず——という言葉があるように、たった1枚の写真が私たちに強烈なメッセージを伝えることがあります。世界中のメディア、ポップカルチャー、広告、アートのクリエイターたちがいったいどのような写真を求めているのか、「検索ワード」からも社会の動きを知ることもできるのです。

世界最大級のデジタルコンテンツカンパニーであるゲッティイメージズは、デジタルコンテンツ(静止画、動画および音楽)を世界 100 カ国以上に提供しています。さらに、年間4億点を超えるライセンス購入された素材や年間10億回を超える検索キーワードを分析するとともに、メディアやポップカルチャー、広告、アートシーンの重要なイベントを研究し、毎年、世界基準のビジュアルトレンド「Creative in Focus(クリエイティブ・イン・フォーカス)」を発表。

ビジュアルトレンドは社会を映し出す鏡。そこから見えてくるものとは——?

【第1回】30代以降の伸び悩みとどう向き合う?
【第2回】理想の自分に苦しまないで

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広告やメディアが固定イメージをつくりだす

——第1回、第2回ともに、働く女性の“先輩”である島本社長にお話をうかがってきましたが、今回は写真がなぜ社会を映し出すのかをメインにお聞きしたいと思います。今、ゲッティイメージズで「働く女性」と検索すると、笑顔だったり、高齢の女性だったりと、想像以上に多様なイメージがあることに驚かされます。

島本久美子さん(以下、島本):働く女性の写真の傾向が偏っていることに気づいて7年前に、さまざまな年齢の女性と、彼女たちを支持する人々の力強い描写のコンテンツを増やすことを始めました。シェリル・サンドバーグが設立した女性の地位向上を目指す非営利組織 LeanIn.Orgとゲッティ イメージズが共同で厳選した「Lean In コレクション」も展開しています。

「働く女性といえばこういう写真でしょ」と広告やメディアが固定されたイメージを使い続ければ、働く女性像も固定されてしまいますよね。働く女性の写真以外だと、たとえば、「disability(障害)」というキーワードに紐づけられた写真は車いすばかりで、もっと目に見えない、気づかないdisabilityがあるということが反映されていなかった。今では、一見すると力強い女性、でも近くに杖が置いてあって……というような写真もあります。

——障害者は弱くないといけない、という押しつけにも気づかせてくれるいい写真ですね。余談になりますが、アスリートの写真は必ず競技中のノーメイク写真っていうのも、違和感を覚えていました。ばっちりメイクしたアスリートに「今日はデートですか?」とか質問したりするのも偏見じゃないですか?

島本:私もその質問自体にいつも疑問を感じています。

——そういう偏見を超えていく写真がトレンドになれば、必然的に社会の「当たり前」も変わっていきます。広告写真には、その力があるとお考えでしょうか。

島本:広告は社会を反映していないといけないし、だからこそ広告で社会を変えられると考えています。

——ちなみに、どのようにトレンドを抽出しているんですか?

島本:専門のクリエイティブリサーチ担当者を置いて、マーケットリサーチを行っています。文化的、アート的、社会的なトレンド、当社サイトでの「検索キーワード」、「購入された画像」、そして実際の「企業やブランド広告」の 3 つの要素についてデータを元に分析・解析し、世界基準のビジュアルトレンドを導き出しているんですよ。それを2013年から毎年発表しているのが、「クリエイティブ・イン・フォーカス」です。

さらに、このトレンド予測を 25 万人以上のコントリビューター(写真提供者)に共有して、ユーザーからの需要が高いイメージ(写真・動画)を収集し、よりニーズの高いビジュアルコンテンツを提供できる仕組みを作っています。

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無理をしない「自分らしさ」のトレンドは続く

——フランス政府のレタッチの明記の義務化を受けて、2017年10月1日からゲッティイメージズ全域でも、モデルの体形加工画像を禁止しています。これも重要な流れではないでしょうか?

島本:以前は広告でも、美人のモデルをスタジオで完璧に撮った写真というのをよく見たのですが、その後のひとつの長く大きなトレンドとして、普段まわりにいそうな女性がモデルになって自然体で撮るとか、モデル自身よりその被写体の女性が「何をしているか」という行動のほうにフォーカスするようになったという変化があります。

何を表現したいのか、その気持ちに対して忠実であるということや、無理をしない自分らしさを表したこのトレンドはまだまだ続くのではないかと思います。

——「女性の価値は美醜ではなく、何をしている人なのかというところにある」というふうに、社会が変化しているということでしょうか。

島本:そう、意思の部分ですね。モデルの女性がどういう意思をもって、何をしていて、どういうものに興味を持っていて、それをどういうふうに表現したいと思っているか……。日本でもそういうビジュアルがもっとメディアや広告で使われることで、日本の女性が「周りの皆と違って自分らしくいることがいいことなんだ」と思えるような社会につながっていってほしいですね。

女性が活躍してこそ、男性も自由になる

——日本社会の中における女性のありようというのは、今がちょうど変革期ではないかと思います。従来の女性の働き方とかロールモデルじゃないところに、自分達は今向かおうとしているのだと思うと、勇気づけられます。

島本:皆さん素敵な女性ですし、悩んでいる方も多いけれどもやっぱり輝いている方も多くて。電車とか見ると、男性のほうが疲れているなと思うケースもありますよね。

——マッチョな「男らしさ」から解放されたら、多少は元気になるんじゃないかと思うんですが。男たるもの稼がないといけない、男たるもの遊ばないといけない、男たるもの弱音を見せてはいけないとか、そういうものにがんじがらめになっているような気がして。

島本:たしかに、男性は「男らしさ」のプレッシャーをすごく受けていますよね。日本ではまだ「男が家庭を養わなくてはいけない」というようなプレッシャーもありますし。女性のほうがそのプレッシャーを少なく感じているのであれば、どんどんいろんなことにチャレンジしていってほしい。

そうすることで、お互いに影響しあって、男性も「今度は俺がチャレンジね」ってできるようになると思うんです。逆に、女性が活躍できない社会だと、男性も窮屈なプレッシャーに縛られてしまいます。

ビジュアルトレンドの変遷を見ると、2013年に「Female Rising(台頭する女性)」、2015年には性別を超えたスタイル「Genderblend(ジェンダーブレンド)」、2017年に「Gritty Woman(グリティ・ウーマン 新フェミニスト宣言)」、2018年に「Masculinity Undone(脱・男らしさ)」という流れになっているのが示唆的ですよね。女性の解放は男性の解放にもつながる、という社会の流れがここに表れているのだと思います。

(構成:須田奈津妃、聞き手:Duniakita編集部 安次富陽子、撮影:大澤妹)

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