母親が乳がんなら自分も受けるべき? 「遺伝子検査」について聞いてみた

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母親が乳がんなら自分も受けるべき? 「遺伝子検査」について聞いてみた

10月は「乳がん月間」。乳がんは日本人女性の約12人に1人がかかると言われています。

乳がんの話題で、近年よく耳にするのが、細胞のがん化にブレーキをかける特定の遺伝子に異常(変異)があるため、がんになりやすい「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」。ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが将来の乳がんの発症リスクを低減させるために2013年に両方の乳房、2015年には卵巣・卵管の切除を発表したことでも注目を浴びました。

筆者(33)の母親も42歳の時に乳がんを発症し、片方の乳房を切除しました。母親の年齢に近づくにつれ「自分も乳がんになるのでは?」と不安に思う毎日。

今回、乳がんについてきちんと理解しようと思い立ち「自由が丘みきブレストクリニック」の森美樹(もり・みき)院長に遺伝性乳がんと遺伝子検査について話を伺いました。

遺伝性乳がんって?

森美樹先生(以下、森):乳がんや卵巣がんの発症と関連している2種類の遺伝子をBRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子と呼びます。この2つの遺伝子のどちらか、もしくは両方に変異がある状態を「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」と呼びます。

一般的に、若い年齢で発症する乳がんは、食生活や喫煙といった環境要因が蓄積する年数が短いため遺伝要因が強いと言われています。反対に、年をとって発症する場合は環境要因が強いようです。

遺伝子検査を受けた方がいい人は?

−−遺伝子検査を受けた方がいい人はどんな人なのでしょうか。

森:遺伝子検査を受けた方がいい人は下記のがんにかかった人です。遺伝子検査は乳がんを発症した人が受ける。それが原則です。

□若年発症の乳がん
□トリプルネガティブ乳がん(ホルモン治療が効かない)
□2個以上の原発性乳がん(乳房の細胞ががん化して発生したがん)
□卵巣がん
□男性乳がん
□乳がんを発症したことがあり、かつ次にあてはまる血縁者がいる
・50歳以下で乳がんを発症
・卵巣がん/卵管がん/腹膜がんを発症
・乳がんや膵がんを発症した血縁者がいる(2人以上)

−−42歳で乳がんを発症した母を持つ私の場合、まず母が受けた方がよいと?

森:そうです。母親が乳がんの場合、遺伝子検査を受けてお母さまに遺伝子の変異が見られたら、娘さんも変異を持っている可能性が50%。変異が見られなかったら、お母さまは別の遺伝子の変異や環境要因で乳がんになった可能性があります。

母親がHBOCで自分はHBOCでなかったら安心できますが、母親も自分もHBOCではない場合は安心材料になりません。なぜなら、母親と同じような体質を受け継いでいる可能性が高いからです。母親が遺伝子検査を受けてBRCA1/2遺伝子に変異がないとわかれば、娘さんは検査を受ける必要はありません。

BRCA1/2遺伝子に変異がある場合、非常に高率で乳がんになりやすいとされています。乳がんについては41〜90%の人、卵巣がんについては8〜62%と言われています。

−−BRCA1/2遺伝子に変異があるとわかった場合は、どうすれば?

森:もし変異があるとわかったら、通常とは違う検診を受けてもらう必要があります。乳がん検診はマンモグラフィや超音波検査に加えてMRI検査、卵巣がん検診は半年に1回超音波検査と血液検査で腫瘍マーカーを調べます。子どもを産み終わっている人であれば、卵巣を取ることを勧められます。

乳がんは発見しやすく、治療をして治りやすいと言われていますが、卵巣がんは見つかった時にはステージが進んでいることが多いんです。ステージ3以上で見つかることが多く、見つかった時には手遅れであることもしばしば。BRCA1/2遺伝子に変異がある場合は卵巣切除を勧められます。

森:乳がん患者の中には家系内に乳がんや卵巣がんを発症した人もいますが、それを家族歴と呼びます。乳がん全体の中で家族歴のある人は15〜20%で、実は家族歴のない人の方が確率が高いんです。

HBOCは家族歴がなくても発症する人がいます。少子化が進んで家族に女性が少なかったり、HBOCの人が家族や親戚にいたとしても早く亡くなっていればわかりません。ただ、BRCA1/2遺伝子に変異があってもがんにならない人もいます。

−−私は30歳を過ぎてから初めて乳がん検診を受けたんですが、クリニックの先生に「母親が乳がんになっているのに、どうしてこれまで検診を受けなかったんだ」と叱られました。

森:BRCA1/2遺伝子に変異がない場合も、家族歴がある場合は家族歴がない人の2〜4倍乳がんになりやすいと言われているので、そのせいで注意を受けたのでしょう。

−−遺伝子検査の前に、遺伝カウンセリングを受けた方がよいとのことですが、どんなことをするのでしょう?

森:家族歴を詳しく聞いて、家族や親戚に乳がんや卵巣がんになった人がいないかを把握します。カウンセリングを受ける前に、家族や親戚に不明ながんで亡くなった人がいないかを詳しく聞いておきましょう。よくあるのが、親族が最終的に肺がんで死んだという場合も、詳しく尋ねていくと、乳がんからの転移で肺がんになったとわかったりします。病気のエピソードを聞くだけでも役に立つんです。

−−遺伝カウンセリングの費用はどのくらい?

森:医療機関によって異なりますが、1時間1万円前後です。遺伝カウンセリングなどの体制の整った病院で遺伝子検査と一緒に受けることができます。

−−遺伝子検査の費用はどのくらい?

森:25-30万円ほどです。血液検査をやって約4週間後に結果が出ます。例えば、お母様が遺伝子検査を受ける場合は約25-30万円かかりますが、娘さんも同時に受けたいとなった場合は、娘さんの分は6-7万円で済みます。というのも、血縁の方であれば遺伝子情報をすべて調べなくても、一部を見ればわかるからです。

家族歴があって「もしかしたら自分も……」と心配している人は筆者のまわりにも何人もいます。ただ漠然と不安な日々を過ごすくらいなら、遺伝カウンセリングを受けていったいどこまで心配すべきなのか、きちんと把握した方が気持ちがラク。心当たりがある人は一度受けてみてはいかがでしょう。

(編集部)

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