くまモン、熊本地震から3週間姿を消していた その足跡を追う

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くまモン、熊本地震から3週間姿を消していた その足跡を追う

4月14日の熊本地震以降、実は、くまモンはすべての活動を休止していました。イベントはおろか、各種SNSでも完全沈黙したくまモンは「自分に何ができるのかを考えているところ」だと県から発表があり、全国のファンの関心が集まっていました。

5月5日に復帰し、先週は東京でのイベントにも出演したくまモンは、最愛の県を襲った震災に何を思っていたのでしょうか。『くまモン力』著者の亀山早苗(かめやま・さなえ)さんがレポートします。

ついに東京にやってきたくまモン

5月17日午前11時。熊本県のアンテナショップ「銀座熊本館」のシャッターがじりじりと上がったとき、そこに黒い足が2本見えた。待ちきれないように足がばたばた動いている。大雨の中、つめかけた人たちから歓声が上がる。

「くまモン、お帰り-」

シャッターが上がるのを待てずに体を曲げて顔を見せたのは、熊本県のキャラクター、くまモン。ついに東京にもやってきたのだ。

九州新幹線とともに登場したくまモンのこれまで

くまモンがデビューしたのは2010年。1年後に九州新幹線が全線開通するのをにらんでの登場だった。新幹線が開通したら熊本は素通りされてしまう。県としての危機感があったのだという。

真っ黒な体、赤いほっぺ、愛らしい仕草。しゃべらないのに深いコミュニケーションがとれるくまモン。今でこそ全国の認知度も高いが、当初は県内の保育園や幼稚園に出没しようとしても断られることさえあったそうだ。

だが、熊本県は必死だった。とにかく新幹線で素通りされないために、そして熊本県に観光客を呼ぶためにくまモンを大阪に派遣した。名刺を1万枚配ることを知事から命じられたくまモン。途中で嫌気がさして失踪、熊本県の蒲島郁夫知事は記者会見を開いて、くまモンを見つけてほしいと訴えたこともある。当時はやり初めていたツイッターなどSNSを駆使したことも、おもしろいと評判になった。

東日本大震災での活躍

県内での人気は徐々に上がっていった。2011年3月12日、くまモンは華々しく九州新幹線全線開通を祝うセレモニーに登場するはずだった。しかし、前日に東日本大震災が起こり、予定はすべてキャンセル。

くまモンのその後の初仕事は、大阪での震災のための募金活動だった。

地道な活動が実り、その年の「ゆるキャラグランプリ」でグランプリを獲得。ついに日本のキャラクターのトップに立った。それからの人気はすさまじかった。関連グッズ売り上げも2011年の25億円から年々飛躍し、昨年はついに1007億円を超えた。東日本大震災の被災地へは、被災後すぐから定期的に訪問。子どもたちだけではなく大人をも元気づけている。

あれから5年。今度はそのくまモンと熊本が被災してしまった。しかも、今まで類を見なかったほどの余震の激しさとその回数に、日本中が恐怖におののく大きな災害となった。

くまモンの魅力が県民を癒す

活動を自粛していたくまモンが、被災後、初めて県民の前に姿を現したのは5月5日。地震から3週間後のことだった。市内の避難所に登場、子どもたちが一気に彼を囲む。しゃがんで子どもと目を合わせ、ひとりひとりとハグするくまモン。

さらにくまモンは、そんな状態を見守っていたお年寄りを見つけると、静かに近寄っていく。一礼し、手をとってゆっくりハグ、背中をやさしく撫でる。

「足が悪いから、くまモンがいるところまで行けず、ここで見ていようと思った。そうしたらくまモンのほうから来てくれた」

うれしそうに話す高齢女性がいた。中には「ありがとう、ありがとう」とくまモンと抱き合う女性、拝んでしまうおばあちゃんまで。

実はここに、くまモンの真髄がある。しゃべらなくても、くまモンには人の気持ちを動かす魅力があるのだ。くまモンの現在の肩書きは、熊本県の「営業部長兼しあわせ部長」である。県の物産やステキな場所をPRするのみならず、会う人たちを笑顔にするのが仕事。

しゃべれないくまモンの“対話力”

くまモンに会うと、とにかく癒やされる。何も言わなくても、こちらの心情を察してくれる。
ファンはみなそう言う。

「くまモンを見た」のではなく、「くまモンに会って話した」という感覚になるのだ。
あるとき、風邪気味でマスクをしていたあるファンを見つけたくまモン。マスクを指さし、咳をするマネをして、両手で何かを押さえつけるような仕草をし、そのファンの手を握りしめた。

「風邪ひいてるの? 咳がでるの? 大事にしてね」
そんな声が聞こえてくるようだった。

だからこそ、ファンは「くまモンと話した」と思うのだ。

くまモンと出会ったことによって、ファンは熊本に思いを馳せるようになる。私自身も年に数回は熊本に出かける。

銀座熊本館に訪れるファンたち

くまモンが多くの人たちを元気づけてきたからだろう、今度は自分たちの番とばかり、東京・銀座熊本館には、買って応援しようという人たちの長蛇の列があった。入場規制がかかって待たされても列を離れる人はいない。

あの地震から1ヵ月で、熊本館を訪れた人は、通常の3倍ほどの8万2000人、売り上げは4倍の8774万円、義捐金は5450万円集まったという。

そのことに感謝するため、17日にくまモンは銀座熊本館に登場したのである。
復興には時間がかかる。だが、くまモンが旗振り役となれば、いつかまたあの美しい熊本城が見られる日が来るに違いない。

頑張れ、くまモン! ずっと応援していくよ。これがファンたちの本心である。

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